初2日目 (選択)


 また天使見習いのアンの講義である。


「今日は、皆さんのこれからのことをお話しま-す。

 皆さんはこれからどうなると思いますか?

 初めて死んだ方もいると思うので、よ――く聞いてくださいね。

 選択を誤ると大変なことになるかもしれませーん」



 見習い天使アンは腰に手をあて、人差し指1本を立てる。

 ミニスカに天使の羽をつけている。……なんか色っぽい。


「選択1でーす。 一番多い選択肢ですが、現世で生まれ変わりまーす。

 ――ただこれは、皆さんが死ぬ前に行ってきたことが反映されまーす。


 つまり、善い行いをたくさんした人、努力した人は生まれ変わるともっと良い人生を歩めるかもしれませーん。でも、皆さんはK組です。言わなくても分かりますね。

 ――でも言っちゃいます。フフ、あまり変わり映えのしない人生でしょう」



 中指を立て、指2本目を立てた。


「選択2でーす。 過去に遡りまーす。

 ……まぁやり直したい人にはいいかもしれませんが、同じ人間にはなれませんし、遡る時間もランダムでーす」



 薬指を伸ばし、指3本目を立てた。


「選択3でーす。 現世の人の守護霊をしながら修行をしまーす。

 だいたいはあなたの子孫を守ってもらいまーす。

 何から守るかって?」


 皆、何だろうという顔をしている。


「それはもちろん悪霊でーす」

「地縛霊が多いですが、中には恨み・辛みなどの人間の感情から守らないといけない場合もありまーす。

 でも、もちろん霊なので、物理的なことから守ることはできませーん」


 ――霊と霊は戦えるのかな?


「基本的には話しかけることもできませんし、孤独な戦いとなりま~す。

 だから修行なのでーす。

 その方が亡くなるまで守り続けることになりますが、途中で止めてここに戻ってくることもできまーす。

 でも、その場合は修行失敗となり、ペナルティがつきまーす。

 見事成功すれば、その年数と成果によって階級が上がりま~す」



 質問してみようかな。


「先生、ペナルティってどうなるんですか?」

「はい。例えば、今はK組ですが、1年くらいで戻ってくるとP組くらいまで下がる感じかな」


 ――1年で5段階も下がるとか、とんでもないな。



 見習い天使は、小指を伸ばし、4本指を立てた。

「最後の選択4でーす。神との契約により、異世界に行きまーす」

『異世界』……この言葉が出たとき、会場がざわめいた。



「皆さーん。静かにしてくださぁーい!

 異世界はたぶんあなた方には未知の世界でーす。

 あまりお勧めはできませんし、異世界の神が皆さんを拒否した場合には行くことはできませーん。

 何か特殊な能力、現世でオリンピック選手だったとか、とても有名な画家やミュージシャンなどごく限られた方が選ばれやすくなっていまーす。

 K組の皆さんは期待しないようにしてくださいね。

 なお、落選された場合は、選択3に自動的に回されまーす」


 まだ会場は騒めいている。


「この人神世界では、現世に戻ると人間の場合は前世の記憶はなくなりま~す。でもその記憶はなくなったわけではなくて、深層記憶に入っていま~す。ここでの講義も深層記憶に記録されているので、しっかり覚えてくださいね」


――ということは、人間以外の場合は記憶はあるんだ。


「それから皆さんは、初6日までにどれかを選んでくださいね。

 何も選べなかった方も、選択3になりまーす」


 今日を入れて5日のうちに決めないといけないようだ。

 まだ時間はあるし、よく考えて決めることにしよう。


 でも人間はともかく、猫やカエルなどの動物はこの講義の内容は理解できるのだろうか?


 ふと隣にいる、黒猫「クロ」に聞いてみた。


「ここの説明は、イメージで入ってくるからあまり理解に苦しまないにゃ。

 猫族はほとんど人間語のことは解釈してるんだにゃん。

 ただ、声帯が違うから話せないだけにゃ。

 その点、猫族の言葉は世界共通語だけど、イントネーションの違いがあって猫語を聞き分けるのは人間には困難だにゃん」


 声帯が違うから人間語は話せないんじゃなかったのか?

 霊界にきた時点で話せるようになったんだろうか。

 まぁ、そういうことにしておこう。


 あれ? なぜって名前が分かったんだろう?

 深層記憶だろうか? 天界はそういう場所なのかな。気にしないでおこう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます