EP12 分岐点


「ここが君の分岐点となる、さぁ選びなさい」


タキシードで身を包んだ老人は目の前の少年にそう言った。


目の前には扉が二つ。

後方には出入口の扉が一つ。


計三つの扉があった。


「帰ることはできるの?」


少年は恐る恐るも問う。


「もちろん、でも君はきっと帰ってしまったことを後悔するだろう、まぁそれも選択の一つだから」


にっこりと優しい口調で老人は答えた。


「後悔?それじゃあこの二つの扉は良い場所へ続いてるの?」


それにまたも優しく答えてくれる。


「いいや?こっちの扉に入ったら、あぁ!帰ればよかった!もう一つの扉にしておけば良かった!って思うかも知れないね、その逆も然り」


頭が痛くなるような話に少年はさらに悩む。


「じゃあおじいさんならどうする?」


その質問におじいさんの顔は笑顔からみるみる真顔に変わる。


「そうだね…おじいさんは選ばなかったんだよ」


「え?」


「おじいさんは選ばなかったからここにいるんだよ」



疑問は更に疑問を生んだ。少年が黙り込むと老人は続けた。



「そう選ばないということを選んでみたんだ、私の友達はみんな考え無しに二つの扉どちらかに次々入っていったんだ。勿論もちろん、君が質問したみたいに帰る子も居たよ……だから可能性に興味を持っていた私はここに留まることを選んだんだ」


「だから私は…」



老人はタキシードの襟を指でなぞりながら言った。




「ここに居れるんだ、後悔してないよ」



ニッと笑う老人を見て少年は出入口のノブを回し駆け足で出ていった。






「......いい選択だ」

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