EP4 釦

ワクワクしていた。

待ちに待った新刊の発売日。


それを目的に私はよく来るデパートへ。


普段通りの足取りでエレベーターへ乗り3階のボタンを押す。


3階の本屋へ。


エレベーターと呼応するかの様に私の気持ちが上がっていく。


到着。エレベーターの扉が開く。


出る瞬間だった。

乗ってる間は気づかなかった。


けど気づいてしまった。


おかしいな?

ここ"7階"までしかないはずなんだけど…


見慣れない8と書かれたボタンがあった。


ワクワクという気持ちは、好奇心へと変わり、そのボタンを押す。


再びエレベーターは動き出すし未知への扉が開く。


薄暗い…


よく見るとでっかいフロアだった、けれどその殆どの店がシャッターで閉ざされていた。


しかしその中に一つだけポツンと明かりの灯る店があった。


恐る恐る歩を進める…


駄菓子屋だった。

不気味だとは思ったが今の私は好奇心でいっぱいだ、中へと入る。


"いらっしゃい"


その声に身体が一瞬強張るが、視線の先には穏やかそうな老婆が1人立っていた。


話を聞くところによると、久しぶりにお客が来たとのことで嬉しかった様だ。


可哀想に思った私は本を買うためのお金で駄菓子を買った。


また来てね、その言葉を背に受け店を後にする。


改めて本を買いに来た時、エレベーターのボタンは7階までしか無かった。

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