第554話 強敵襲来?
少しずつ寒さが和らぎ、徐々に春の気配を見せる要塞村。
大寒波によって遠のいていた人々も今ではすっかり元通りとなり、市場の責任者を務めるナタリーはホッと胸を撫で下ろした。
「とりあえず、ひと安心ですかね」
「えぇ――クチュン。ご、ごめんなさい」
突然くしゃみをしたナタリー。
それに反応したトアが顔を向けると、ナタリーは苦しそうな顔をしていた。
「だ、大丈夫ですか? 熱があるんじゃ……」
「そ、そういうわけじゃないの。ただ、ここのところ鼻炎がひどくて」
「ナタリーさんもですか?」
実は、ここのところ似たような症状を訴える者が続出しており、村医であるケイスは対応に追われている。その数は日に日に増していった。
しかし、ハッキリとした原因が分からないため、手の打ちようがなかった――が、
「マスター、少しよろしいでしょうか」
「フォル? 何かあったのか?」
「ここ数日の間に急速な広まりを見せている鼻炎や目のかゆみという症状について……原因が判明しました」
「っ! 本当か!」
これは朗報だ。
その原因とは――
「花粉です」
「か、花粉?」
「この辺りにはスギーノという植物型のモンスターが住み着いてしまったようで、そいつの放つ花粉がアレルギー症状を引き起こし、みんな苦しんでいるのです」
フォルはサーチ能力を駆使してそのモンスターの居所も掴んだということなので、トアは早速討伐に乗りだした。
とはいえ、現在、エステル、クラーラ、ジャネットの三人も同様の理由で体調がよろしくない。唯一なんともないマフレナに声をかけると、フォル、さらに助っ人としてシャウナに同行を依頼し、希望の森の奥へと向かった。
「しかし、最近はモンスターの数もめっきり減ったと思ったが……まさかスギーノなどという厄介なモンスターが住み着いているとはね。想像すらしていなかったよ」
「シャウナさんは知っているんですか?」
トアが尋ねると、シャウナは珍しく表情を曇らせた。
「あまり……いい思い出のないモンスターなのでね」
どうやら、過去にトラウマがあるようだ。
これ以上は触れない方がよさそうだと思った次の瞬間、マフレナが叫ぶ。
「トア様! あそこに変な木があります!」
慌てるマフレナが指さす先には――太い根を足のようにシャカシャカと動かしながら移動する樹木があった。
「なんか……前にも見たことがあるフォルムのような……」
「同感です。――が、あれが間違いなくスギーノですよ」
既視感を覚えつつも、現れたスギーノを倒すためにトアは聖剣エンディバルを抜く。
「こいつを使うのも久しぶりだな……」
感覚を確かめるように魔力を込めてから、敵を目がけて走りだす。
向こうもトアの存在に気づいたようで、振り返ると同時に体を揺すって花粉を飛ばす――だが、聖樹の魔力に守られているトアに、花粉の影響は微塵もない。
「はあっ!」
「ぐぎゃあああああああっ!?」
一撃でスギーノを撃破したトア。
「ふぅ……これでみんなが元通りになればいいんだけど」
「問題ないだろう。きっと回復するさ」
「わふっ! さすがトア様です!」
「では、村へと戻りましょうか」
事件解決となっているか、それを確認するために村へと戻るトアたち。
――結果として、スギーノによる花粉の被害はなくなっていたものの、戦闘中に花粉を全身で浴びてしまったトアは、二次被害を引き起こす可能性があるとして、念入りに風呂で体を洗わざるを得なくなってしまったのだった。
「……もう花粉はこりごりだな」
「来年からは花粉型モンスターの対策を講じていきましょう、マスター」
「賛成だ」
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