第420話 オーレムの森・新たな命① 誕生
水の精霊王ビセンテが帰ってから数日後。
「トア村長おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
その日の昼過ぎ。
要塞村に大絶叫が轟いた。
いきなり名前を呼ばれたトアと、一緒に食後のお茶を楽しんでいたローザにマフレナのふたりは驚き、思わず手にしていたカップからお茶をこぼしてしまう。
「な、なんだぁ!?」
「騒々しいのぅ……一体誰じゃ?」
「わふっ! さっきの声は――セドリックくんですよ!」
困惑するトアたちのもとへ、声の主が現れる。
その正体は、マフレナの言う通りだった。
「セドリック? そんなに血相を変えてどうし――」
「産まれたんですよ!」
食い気味に、セドリックはトアへ言い放った。
「産まれたって……っ! ほ、本当なのか!?」
「はい!」
笑顔で答えるセドリック。
セドリックの口にした「産まれた」という言葉に、トアたちだけでなく、周囲にいた村民たちは大きく色めきだった。
――そう。
かつてこの要塞村で一緒に暮らしていた、セドリックの恋人で双子エルフの姉・メリッサ。今は妊娠中のため、故郷オーレムの森へ里帰りしている彼女だが――どうやら、出産は無事に終わったらしい。
「性別はどっちだった?」
「女の子です! 母子ともに健康だそうで……」
涙ぐむセドリックの声は徐々に嗚咽交じりになって聞こえづらくなった。
すると、
「いやいや、これはめでたい!」
「早速今日は宴会ですな!」
「セドリックとメリッサの第一子誕生となれば、これまで以上に派手な宴会しないといけませんな!」
「ジンさん! ゼルエルさん! エイデンさん!」
要塞村に住む三大獣人族の長から祝福されて恐縮しっぱなしのセドリック。
さらにドワーフ族やモンスター組、精霊たちに人魚族、村医のケイスに市場を代表して商人ナタリー、魔人族のメディーナや天使族のリラエルも祝いに集まって来た。
さらに、この場へ駆けつけることはできないが、幽霊少女のアイリーンも地下迷宮からお祝いの言葉を叫ぶ。さらにさらに、守護竜シロ、さらにユニコーンのユニも、村の明るく賑やかな雰囲気に当てられて嬉しそうにしている。
「やれやれ、何やら騒がしいと思ったらメリッサの出産が終わった報告があったのか」
「母子ともに健康だそうで、何よりです」
騒ぎを聞きつけて、シャウナとフォルもやってきた。
さらにその後からはエステルとジャネットも合流する。
「ついにメリッサの赤ちゃんが生まれたのね」
「クラーラさんもいいタイミングで里帰りをしましたね」
そう。
実は同じエルフ族であるクラーラは、出産間近ということでセドリックとメリッサの双子の妹であるルイスと共にオーレムの森へ里帰り中だった。
「これは村長として、オーレムの森へ行かないとね」
「それがいいじゃろう」
「アルディも喜ぶと思うよ」
かつて、他種族との交流を禁じていたエルフ族だが、今ではすっかりそれも前時代的な考えとなった。
クラーラの父であり、新しいオーレムの森の長であるアルディは、積極的に他種族との交流をはかり、エルフ族のさらなる繁栄のため尽力している。
そのアルディへ、久しぶりの挨拶も含めて、トアはオーレムの森を訪れることを決めた。
ちなみに、その同行者を決めるため、緊急の村民会議が円卓の間で行われたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます