第416話 精霊女王アネスの危機② 正体は?
要塞村に突如現れた謎の人物。
市場を除いた場所には結界魔法が張られているのだが、それに反応しなかったところを見ると、あの人物は魔法に精通している――それも、八極のひとりである枯れ泉の魔女ことローザの目を盗んで侵入することができる実力を持っているということになる。
何より、リディスの不穏な言葉がトアの脳内に響き渡っていた。
『アネス様に~、一大事が迫っているのだ~』
それを聞いて農場を飛び出し、アネスを捜していたら謎の人物と一緒にいる場面に遭遇したのだ。
「待て!」
アネスたちとローブの人物の前に割って入るトア。
「パパ♪」
ピンチに颯爽と現れたトアへ、アネスが喜びの声をあげる。
すると、
「…………」
ローブの人物が一瞬たじろいだように見えた。
「……何者だ?」
トアは聖剣に手をかけつつ、顔を隠している人物に迫った。
すると、その人物は身にまとうローブを掴むと、それを勢いよく脱ぎ去った。それによって正体があらわとなる。
「「「!?」」」
トア、エステル、フォルの三人は衝撃を受けた。
原因は――目の前に立つ中年男性のビジュアルだ。
不敵な笑みを浮かべつつ仁王立ちする男。
白髪交じりの髪に威厳あるたっぷりの口髭。
年齢的には領主チェイスと同じくらいだが――明らかに彼が人間ではないと断言できる要素があった。
それは背中に生えた透明な羽。
最初はエイデンたち冥鳥族のような、鳥系獣人族の類かと思ったが、その羽はアネスたち大地の精霊が持っているものに似ていた。
つまり――
「あなたは……精霊族?」
「いかにも」
これまた威厳ある低音ボイスで認めた。
精霊族と聞いて、トアの頭に浮かんだのは――ついこの前、永遠に終わらない一日を過ごす危機を持ち込んだ時の精霊ルドフィクスだった。
彼はトアの存在の大きさを危険視し、精霊族だけが使える特殊な魔力を駆使して要塞村を封じ込めようとした。結果として、それはトアとローザによって阻止されたが、同じような考えを持った精霊族が他にもいるかもしれない。
リディスの感じていた危機感は――きっとそれについてだ。
タレ目を細めた険しい表情でトアを見る謎の精霊。
そもそも、この男はなんの精霊なのか。
そんな疑問を抱いていると、
「!」
男はカッと目を見開き、両手を天に掲げた。
「「「!?」」」
その行動に、トアだけでなく、エステルとフォルも警戒を示した。
三人はアネスと子どもたちを守るため、臨戦態勢に入るのだが――次の瞬間、男は意外すぎる行動に出た。
なんと――男はトアたちに対して土下座をかました。
「「「!?」」」
今度はさっきとは違った意味で衝撃を受けるトアたち。
そして、
「初めましてぇ! 私は水の精霊ビセンテと申しますぅ!」
空気を斬り裂くような大声で、男はいきなり自己紹介を始めた。
「本日はどうしてもあなたにご挨拶がしたく、ここに参った次第ですぅ!」
「えっ? えっ?」
そこで、トアは水の精霊ビセンテが自分に対して土下座をしているのだと理解する。
そして、ビセンテはその声のボリュームのまま、自身がなぜ土下座をしているのか説明を始めるのだった。
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