第180話・先手必勝
「ねぇ、これからどうするの?」
リンは、マリアの別荘で読書をするストライガーに聴いた。
ストライガーは本を閉じ、大きく伸びをする。
「ん~……あと何日か休んだらダンジョンに戻ろう。みんなと一緒なら、第五相『大迷宮』ラピュリントスも攻略出来るだろうしね」
「そうですわね。500階層まで進めましたし……というか、あのダンジョンは何階層までありますの?」
「さぁね。でも、きみたちと一緒なら攻略出来る。みんなで頑張ろう」
「ん! がんばる」
ストライガーは、リンたちに向かって微笑む。
リンとマリアとシンクは頷くと、シンクのお腹が鳴った。
「ストライガー、おなか減った」
「ははは。じゃあ、外に食べに行こう」
「ん! お肉たべたい」
「お肉……シンク、お肉よりお魚にしましょう。あまり食べると太ってしまいますわ」
「やだ」
「二人とも、喧嘩しないの……はぁ」
「リン、どうしたんだい?」
ため息を吐くリンを心配するストライガー。
リンは、苦しげに笑った。
「……メリー、もう帰ってこないのかなって」
「ああ、あの子……ま、仕方ないよ。それより、みんなでご飯に行こう」
「そうね。ま、仕方ないか……マリア、シンク、行くよ」
「ええ」
「はーい」
リンは、不自然なくらいあっさりとメリーを見限った。
四人は、仲良く別荘を後にする。
『…………』
『キャッキャキャキャ!! どうしたんだよシャルティナぁぁ~?』
『話しかけんなクソったれ。お前の声を聴くと殺したくなる』
『同意します。正直、あなたのようなクソまみれのドブネズミカスゴミと同列に見られているのは不快でしょうがない』
『おうおうおうおう、そんな口聞いていいのかぁ? べっっっつにオメェら始末して魔界に帰したっていいんだぜぇぇ~? オイラは女神なんざどうだっていい。楽しく狂えればいいんだからよぉぉぉ~?』
『…………死ね』
『臭い豚以下のゴミ。死ね』
『キャッキャキャキャ!! 楽しいねぇ~!!』
シャルティナとイルククゥは、あえてカドゥケウスの話題を出さない。
最初こそライトの存在をほのめかしたが、ギルルダージュだけでなくストライガーもライトは敵ではないと思っている。
それもそうだ。ライトはストライガーの術中にハマった。攻撃どころか戦意すら持てない。借りに前に出たとしても、戦う事はできない。
だからこそ、ギルルダージュとストライガーは警戒していない。
『イルククゥ』
『ええ、わかっています』
『あぁ~ん?』
シャルティナとイルククゥはわかっていた。
きっと、ストライガーとギルルダージュの弱点はそこにある。
あのライトが、リンたちを放っておくわけがないのだ。
リンたちを陥れたストライガーを許さない。どんな手を使おうと、必ず断罪しにくるだろう。
そこに、ライトたちの勝機はある。
だが、シャルティナたちは当然気付いていない。
このヤシャ王国に、大罪神器【憤怒】のダミュロン、そしてバルバトス神父が来ていること。
イレギュラーな存在が、この王国にいる。
だが、この時点ですでに、シャルティナたちも読み違えていた。
◇◇◇◇◇◇
「どうするの?」
「もう、不意打ちしかない」
ライトとメリーは、岩場の隠れテントの中で作戦会議をしていた。
「恐らく、ストライガーの楔には距離も関係している。今はあいつを殺して喰いたい気持ちでいっぱいだ。近付けば戦えない……つまり、視認せず遠距離から狙撃する。カドゥケウスの射程ギリギリで撃てば……」
『やめとけ。当てるにはストライガーを視認しなくちゃなんねえだろ。見た瞬間に戦意を奪われてしまいだ』
「だけど、方法がない。バルバトス神父が戦ってくれればあるいは……なんて、甘い考えだった」
もはや、戦うしかない。
狙撃が駄目なら、廃屋にでも誘い込んで建物を崩して生き埋めにする。
「メリー、お前はマリアたちを抑えてくれ。力を使っていいし、お前相手ならあいつらも強く出ることはできないはずだ」
「…………」
メリーは不安そうにライトを見る。
ライトは、まさかメリーに頼ることになるとは思っていなかった。
ストライガーとの戦いでは、巻き込まないようにしたい。そう思う。
「明日。ケリを付ける……待ってろよ、クソ野郎」
「がんばる!」
決戦は明日。
ライトは横になり、メリーもライトの懐に潜るように横になる。
ライトはため息を吐き、すでに寝息を立てているメリーの頭を優しく撫でた。
ライトは、すでに読み違えていることに気付いていない。
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