第108話・ハンターの情報
ダイアウルフ。盗賊団。第二相・第三相。
この辺りの強敵は、盗賊団とダイアウルフだろうか。討伐するにしても、出現場所などの情報が必要だった。
ライトは、女将に詳しく話を聞くと、村のハンターを連れてきてくれた。
禿げ上がった頭に毛糸の帽子を被り、煙草を吸っている老人男性だ。
「冒険者か。悪いが、討伐するにしても報酬は大して支払えんぞ」
「構いません。それより、情報をお願いします」
「……まぁいい」
どうやら、報酬狙いの冒険者ではないと値踏みされたようだ。
だが、そんなことはどうでもいい。今欲しいのは報酬よりも、祝福弾や戦闘の経験だ。相手が強ければ強いほど、困難なら困難はほどありがたい。
宿の一階の酒場に移動し、ライトは酒を注文した。
「寒いんで……それと、舌の滑りがよくなるように」
「ほ、わかってるじゃねぇか」
女将が運んできたのは、熱々の麦酒とホットワインだ。
麦酒を老ハンターに勧め、ライトはホットワインを一口啜る。
甘みが強く、なかなか強い酒だ。これなら、寝る前に飲めば翌朝までぐっすりだろう。雪国では寒いときに熱い酒を飲むと聞いたことはあるが、温かい酒をあまり飲んだことのないライトは、ホットワインの味に顔をほころばせた。
「うまそうに飲むねぇ」
「いえ、温かい酒なんてあまり飲んだことがないんで……」
「ここ出身じゃねぇならそうだろうな」
老ハンターは麦酒をグイっと飲む。
「っぷっはぁ~……あったまる。で、ダイアウルフの情報だな?」
「はい。出現場所を、それと、盗賊団の情報も」
「いいぜ。酒の礼だ」
ライトは、老ハンターからダイアウルフと盗賊団の情報を得た。
それと、第二相と第三相の情報を聞く。
「第二相は雪山の上に氷の城を作って根城にしている……らしい」
「らしい?」
「確認したヤツガいねーんだ。みんな山の途中で氷の塊になっちまう。第二相のいる山に登って、下山した奴はいないって話だ」
「厄介ですね……」
「ああ。フィヨルド王国の寒さは第二相のせいだって話もあるくらいだからな」
「…………」
ホットワインを飲み、ライトは考える。
戦うのはいいが、たどり着けるかどうかわからない。
マルコシアスやジェリー・ジェリーとは違う。どちらも、戦う条件が良かったから勝てた。
マルコシアスは影を使って戦う。もし夜に戦っていたら間違いなく敗北していた。
ジェリー・ジェリーは単純な相性だ。空を飛べて高火力の技を持っていたから戦えた。
第二相はどんな相手かわからない。雪や氷を使うというだけしかわからないのなら、うかつに踏み込むべきではないかもしれない。
「第三相は?」
「第三相はわからん。誰も見たことがない」
「……え?」
「よくわからんのだ。いる、っていう話だけ広まって、正体がさっぱりわからんのだ」
「…………?」
とりあえず、深く考えるのはやめて、保留した。
ライトはもう一杯酒を奢り、老ハンターに礼を言った。引き出せる情報は引き出したので、あとはリンとマリアに報告、共有すればいい。
残りのホットワインを飲み干し、女将に礼を言って部屋に戻る。
部屋に戻ると、同じタイミングでリンたちが帰ってきた。
手には大きな袋がいくつもある……。
「何買ってきたんだ?」
「あ、ライト。見てみて、雑貨屋のおばさん、セーターとかマフラーとか編むのが趣味でさ、あったかくていいデザインの服がいっぱいあったから、マリアと一緒に買い物してきたの!」
「…………」
「リンってば、何着もセーターを購入していましたわ。まぁわたしもマフラーを買いましたの。それと、特注でデザインしてくれるというので、背中の空いた特別なセーターをオーダーしましたわ」
「…………」
「いやー、小さな村の雑貨屋って、どこも掘り出し物いっぱいで楽しいよねー」
「…………おい」
「ふふ、リンってば毛糸の下着も買いましたものね」
「ま、マリアも買ったじゃん!」
「ふふふ、おそろいですわ」
「…………」
ライトは頭を抱えた……。
どう考えてもこの二人、雑貨屋で買い物を楽しんだだけではないか。
「はぁ~……まぁ、ずっと雪景色で退屈だったろうし、別にいい。俺もホットワインを飲んで温まってたからな」
「え、ホットワイン!? いいなぁ」
「リンリン、あとで一緒に飲みましょう♪ そのあとはベッドで……」
「飲むのはいいけどベッドは却下」
「おい、情報を集めた。じゃれ合うのは後にしろ」
ライトは、ダイアウルフと盗賊の話を始めた。
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