第103話、雪国へ

 ライトは、宿の離れに戻ってきた。

 鍋を共にした神父のことを忘れ、明日の出発に備えて早く休もうと思い、温泉に入ろうと脱衣所へ向かう。

 着替えを準備して脱衣所のドアを開けると、ちょうど服を脱いでいるマリアと遭遇した。


「あら」

「お前か。リンは?」

「寝ていますわ。ふふ、少し激しかったので……」

「…………」


 下着姿を見られてもマリアは動じていない。リンとの初夜で機嫌がいいのか、ライトもマリアの下着姿に興味を示さず、息を吐いた。


「あら、どこへ行きますの?」

「お前が上がったら入る。それまで部屋で休んでるよ」

「つれないですわね……ご一緒にどう?」

「いい。お前も、俺に襲われたくないだろ? 全身激痛で発狂死したいなら別だからな」

「あら残念。わたし、あなたのことを好きになれそうなのに」

「そりゃどうも。まぁ、俺もお前のことそんなに嫌いじゃないぜ」


 そう言って、ライトは脱衣所を後にした。

 マリアがどこまで本気か知らないが、少なくともライトはマリアを『女』として見ている。裸に興奮するし、襲うというのもたぶん事実だ。

 当然、そんなことをマリアに知られたくないので、態度に出さず冗談っぽく言う。

 部屋に戻り、荷物から酒瓶を取り出す。


『珍しいな。飲むのかい?』

「ああ。たまにはな。お前も付き合えよ」

『ケケケケケケケケッ、相棒と語り合いながら飲むとはね』


 夜は静かに更けていく。 

 マリアが温泉から上がり、ライトも温泉を堪能。風呂から上がると、猛烈な眠気がして、布団に倒れ込むとそのまま寝てしまった。


 出発は明日。目指すはフィヨルド王国だ。


 ◇◇◇◇◇◇


 翌日。

 気温は低いが快晴で、出発日よりだった。

 馬を荷車に繋ぎ、荷物の確認をする。朝食は宿に準備してもらい、三人の出発準備は整った。ライトは、マリアとリンに確認する。


「よし、フィヨルド王国に行くぞ。大罪神器の捜索と勇者パーティを見つけ次第殲滅。いいな?」

「わかった」

「わかりましたわ」

「よし……行くぞ」


 リンとマリアは荷車に乗り、ライトは御者席に座る。

 新しい荷車は御者席もなかなかの広さだ。背部には小さいがドアもあり、室内に出入り可能になっている。

 背部の小窓を見ると、マリアがリンに抱き着いていた。


『リン、昨夜はよかったですわねぇ』

『……それ以上言ったら斬る』

『あぁん♪』


 あの二人も、だいぶ仲良くなったようだ。

 二頭の馬も足並みを揃え走り出したようだし、なかなか好調なスタートとなる。


 国境を超え、フィヨルド王国へ。

 これから向かうのは冬の国。

 新しい大罪神器と、新しい出会い。そして、再会……。


 三人の旅は、まだまだ続く。


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