第三章・大罪神器【嫉妬】イルククゥ・フォウ・エンヴィー

第66話・ほんの少しの休息

 ドラゴンノベルス新世代ファンタジー投稿作品です!


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 ライトたちは馬車に乗り、ワイファ王国に向かっていた。

 これからの予定は今のところ白紙。セエレを殺したがレイジは負傷。さすがの勇者レイジも、すぐにライトを追うほど間抜けではないと思いたい。


「これからどうする?」

「……少し、休みたいな」


 手綱を握るリンが、後部の座席で休むライトに聞くと、意外な答えが返ってきた。

 張りつめていた気が抜けたのか、セエレを殺してショックを受けているのか。でも、休憩するのは賛成だった。


「よし! じゃあ、せっかくだし海で泳ごうか。マリアの別荘の真下は貸し切りのビーチだし、三人でバーベキューでもしよっ!」

『きゃんきゃんっ!』

「あ、ごめんごめん。マルシアも一緒だね」


 リンの太ももの上で丸まっていた子狼が鳴いた。

 マリアは、リンの腕に抱き着き、自らの豊満な胸を押し付けている。


「ふふ、水着ならたくさんありますわ。…………男性用はありませんが」

「別にいらん。それに泳いだことないしな」

「まぁまぁ、せっかくだしライトも泳ごうよ!」

「……リンは泳げるのかよ?」

「まぁね。水泳の授業では準備運動で毎回百メートル近く泳ぐし」

「ふーん……よくわからんけど、泳げるのか」


 ライトはちらりとマリアを見た。


「……なんですか? 海とは眺めるものですわ、泳げないからと言って「あーあーわかった、もういい」

「……不快ですわね」

「はいはい」


 ライトは泳げないマリアから子狼のマルシアに目を向ける。


『きゃうん?』

「……お前は泳げそうだな、狼だし」

「じゃあ、ライトとマリア、私と一緒に水泳教室だね!」

「「は?」」

「大丈夫。二人ともしっかり泳げるように指導するから」

「「…………」」


 どうやら、思わぬことになりそうだ。


 ◇◇◇◇◇◇


 ライトたちは、半日かけてワイファ王国に戻った。

 常夏の王国だけあって暑く、日の光が容赦なくライトたちを苦しめる。

 途中、食材とライトの水着を買い、別荘に戻ってきた。

 時間は昼を少し過ぎた頃だろうか。いい感じにお腹が減っていた。


「じゃあさっそくバーベキューの準備しよっか。道具も買ったし、下の浜辺まで運ぼう」

「……俺が運ぶ。真下まで往復するの大変だしな」


 マリアの別荘からすぐ下はプライベートビーチになっており、階段を使って下ることができる。

 全ての荷物を窓際の一か所にまとめ、ライトはカドゥケウスに祝福弾を装填した。


「カドゥケウス」

『ほいほーい。相棒ってば祝福弾の使い方に慣れてきたねぇ』


 ライトは自分に『浮遊』の祝福弾を撃ちこみ、持てるだけの荷物を持って窓から飛び降りた。


『ほっほ、これなら重い荷物抱えて往復する必要ないってか』

「ああ。少しくらい重くても、ビーチは真下だから耐えられる」


 荷物を降ろし、再び浮遊して窓から入り、再び荷物を降ろす。

 何度か繰り返し、バーベキューに必要な荷物を全て降ろした。

 

「あいつらは?」

『着替えてるんじゃね?』

「そうか。じゃあ、俺が準備するか」


 プライベートビーチの浜辺にテーブルとパラソルを設置し、コンロを並べ炭に火を付ける。そして、『調理師』の祝福弾を自らに撃ちこみ、下ごしらえを素早く済ませる。

 リンでなくとも、調理師を使えばプロ級の料理の腕前を披露できるのはありがたかった。

 

「よし、完成」

「お待たせー……って、すっご! ひとりでやったの!?」

「ああ。このくらいなら……」


 リンの声が聞こえたので振り返ると、そこには……水着の少女が二人いた。

 水色を基調としたフレアビキニのリンと、真紅の際どいビキニを着たマリアだ。リンはスレンダーでマリアはグラマラス。なんとも対照的だ。


「ど、どうかな」

「ああ、似合ってる」

「ふん。お世辞もまともに言えないのですか?」

「あぁ? 言っただろうが、似合ってるって」

「そんなセリフは子供でも吐けますわ。わたしが言いたいのは殿方が女性の水着を褒める言葉です。似合ってるのは当たり前、なら他に言葉はあるでしょう?」

「……知るか。とにかく、腹減ったから焼くぞ」


 リンはともかく、マリアの水着にライトは絶望的なまでに興味を示さなかった。

 十六歳にしては破格のスタイルに、肌を惜しげもなく晒している。一時は共闘関係で感謝もしたが、喉元過ぎれば熱さを忘れるのか素っ気ない態度に戻っていた。


「もう二人ってば、素直じゃない」

「「はぁ!?」」

「ほら、またハモった。やっぱり似た者同士というか、ホントは仲がいいんじゃない?」

「「…………」」


 ライトとマリアは互いを嫌そうな顔で見て、すぐにそっぽ向く。

 バーベキューの肉が、ジュウジュウと音を立て、食欲を誘う香りを漂わせ始めていた。

 

 ◇◇◇◇◇◇


 肉と野菜が焼け、いい感じにバーベキューが始まる。


「ん、おいしい! ほらマルシア、お肉お肉」

『がうぅぅっ!』

「おい、肉ばっかり食べるなよお嬢様、野菜も食べないと腹で詰まるぜ?」

「ご心配どうも。ですがお肉は全て胸に回りますのでご安心を」

「……マリア、私に喧嘩を売ってるのかなー?」

「ちち、違いますわ! この方がわたしにセクハラを!」

「肉ばっかり食べてないで野菜喰えって言っただけだ」


 ライトは、久しぶりに安らげた。

 不思議と悪い気はしない。張りつめていた糸を緩めたような、セエレを殺したことで満足したような、そんな気持ちになった。


「はぁ……リン、水くれ」

「はいはーい。それと、食べ終わって少し休憩したら、泳ぎのレッスンを始めるからね!」

「「……え」」


 どうやらリンは本気のようだ。


 ◇◇◇◇◇◇


「じゃ、まずは水に顔を付けるところから始めよっか」

「「…………」」


 ライトとマリアは、リンと一緒に腰辺りまで海に浸かっていた。

 マルシアはお腹いっぱいになって眠くなったのか、岩陰で丸くなり昼寝をしている。


「じゃ、息を吸って顔を付けて」

「あのな、子供じゃないんだぞ。それくらいできるっての」

「そう? じゃあ、水中に潜ってどのくらい息を止めていられるかやる?」

「……まぁ、いいけどよ」

「じゃ、息を吸ってー……はい、どうぞ!」


 ライトとマリアは、同時に海の中に潜った。

 泳ぎの訓練こそしていないが、鎧を付けたまま川渡りをすることも多かったし、甲冑を付けたままランニングもするので、体力と肺活量ならそこそこ自信のあるライト。

 潜って約ニ分、苦しくなったライトは顔を上げた。


「っぷぁぁっ! っくは……え?」


 なんと、マリアはまだ潜っていた。

 そして浮上すると、ライトと目が合う。


「……ふっ」

「……っ!!」


 あからさまに、ライトを小馬鹿にしたように笑った。

 まさか、息止めでマリアに負けるとは思わなかったライトは、歯をギリギリと噛んで悔しがる。


「うん、じゃああ次は身体を浮かせてみよっか。こうやってぷかーっと浮くの、ぷかーっと」


 リンは、うつ伏せのまま水に浮く。

 さっそくライトとマリアは真似をして、二人ともあっさりクリアした。


「うん、上手上手。じゃあ次はバタ足をやろっか。私が両手を掴むから、身体を浮かせた状態で足をバタバタ~ってさせて。顔は上げたままでいいから」


 リンの指導は続き、二人ともバタ足をクリアした。

 そして、補助なしでもバタ足と息継ぎだけで泳ぐことができるようになり、クロールまでマスターした。


「す、すごい……二人とも筋が良すぎ、たった二時間で泳げるようになるなんて」

「コツを摑めば簡単だ」

「ええ、楽勝ですわ。それに……どうやらわたしのほうが、長く泳げそうですしね」

「……あぁ?」

「うふふ、ならもう一度、素潜りの対決でもします?」

「ぐっ……」


 ライトは初めて、マリアに負けた気がした。



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