第145話 恋文1

拝啓、岸田京介様


 エスポワールつくばのトイレでこれを書いています。突然ラブレターを書けなんて言われて、なんだかよくわからないんだけど、のちのち役に立つことを願って書きます。

 こういう出だしはラブレターっぽくないよね。

 ラブレターは書いたことがなく、異性を好きになったのもあなたがはじめてです。ただ、この好きという感情が、はじめてゆえに、正しい「好き」であるのか、確信が持てずにいます。もしこの感情が、種の繁栄のためあらかじめプログラミングされたものなのであれば、わたしはわたしがわたしだと信じるところのわたし自身の理性であなたを好きだと判断したことにはならず、動物的ないわゆる本能で判断したことになります。かといって、子を授かれるのであればだれでもいい、というわけでもないようです。なぜでしょうか。われわれはどのように異性を「選択」し、「好き」だと感じるのでしょうか。以前、男女はウランのような半球どうし、と言及したことがありましたね。特定の対象へ向けた好きという感情は、動物的なプログラミングの帰結ではなく、逆に人間らしく理性的に振る舞った結果の曖昧な人間行動であるのかもしれません。だから、あなたを好きになってもいい。むしろあなたを好きになることが人間らしさへつながる行動なのだ、わたしは自分にそう言い聞かせながら、あなたへの想いを少しずつ育んできたのです。

 説明くさいのは18世紀イギリスの価値観をたたき込まれているからです。ごめんね。

 とにかく、わたしはあなたに好意を抱き、できる限りそばにいて、あなたのために尽くしたいと考えています。意外と古風でしょう? ラノベじゃなければ、と思ったことは何度もあります。ただ、わたしたちを出会わせ、結びつけたのも、またラノベなのです。そして感謝したくても心からの感謝の念が起こらない、それもまたラノベなのです。

 ほかにはなにを書けばいいんだろう? そうそう、ほかの〈ヒロイン〉との関係ですね。大変だとは思いますが、当事者のひとりとしてはがんばってくださいとしか言いようがありません。〈ラブコメ〉のように奪い合うつもりもありませんし、現在行われているラノベは、世界を変えるための活動であり、同時にみんなを喜ばせる「仕事」なのだと捉えています(喜んでくれているかどうかはわかりませんが)。もしあなたがラノベにおいて、最終的に春ちゃんや上原さん、五月ちゃん(あと陽一くん)を選ぶのであれば、尊重したいと思っています。ラノベなので。でもその際は、まさにラノベの〈ヒロイン〉のような行動に出るかもしれませんよ。その際はきっちり宙を舞ってくださいね。

 こんな感じでいいですか。ちゃんと読んでいますか? 行間は空けません。そこまでして読んでもらいたいとは思わないので。

 最後に。本件については、ほかにも確認したいことがあります。つくば編を終えたあと、あらためて打ち合わせさせてください。

 つまり、「仕事」を終えたあとの、お互いの本当の気持ちを、です。


 あと、見た目の特徴でしたね。次ページのイラストを参照してください。


かしこ

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