第10話 簿記部の大会について


 何だか最近、このエッセイにおける商業高校っぽさが薄くなってきているような気がします。近頃やったテーマが、床への座り方に、遠足に、プールです。

 しかし、こうなるのはある意味想定内。商業ネタだけで何話もやっていけるとは、最初から思っていませんでしたから。


 とは言え、たまにはこれぞ商業高校と言うネタをやってみたいです。

 と言うわけで、以前にも少し書いた、自分の所属している簿記部についてですが、今回はそこをもう少し掘り下げていきたいと思います。


 商業高校独自の科目、『簿記』。それをひたすら勉強していく『簿記部』。毎日の部活も、なんだか部活と言うより勉強会みたいな感じでした。おかげで、普段授業でやっている簿記は、大抵の場合成績上位をキープできましたが、逆に成績を落とすと「簿記部なのにこの程度」みたいに思われてしまいます。


 そんな、半ば勉強会みたいになっていた簿記部ですが、大きな目標と言えるものが二つありました。


 一つは、検定合格です。

 簿記にも『英語検定』や『漢字検定』みたいな検定が、それも複数ありました。ほとんどは簿記部員以外の生徒も強制的に受ける事になるのですが、簿記部員たるもの絶対合格みたいな空気がありました。


 そしてもう一つは、大会で結果を残す事です。

 簿記にも毎年夏には高校生の大会があって、県大会で二位以内に入った学校が、年ごとに東京と大阪で交互に行われる全国大会へと進む事ができます。


 ちなみに大会が終わった後は、東京見物もしくは大阪見物に行けると言うオマケつきです。少し足を伸ばして東京ディズニーランドに行ったり、甲子園で試合観戦をしたと言う先輩方もいたそうです。

 更にその頃、大阪にはUSJも出来たので、観光の幅が広がりました。


 その為、毎年行われる新入生に向けての部活PRでは、「ディズニーランドやUSJに行きませんか」を謳い文句にしていました。

 それに釣られ入ってきた後輩も何人かいたのですが、残念ながらほとんどは一月ほどで辞めるか幽霊部員になりました。


 それでこの『簿記の大会』ですが、やる事と言えばやはり問題を解くだけです。

 いくつもの学校の簿記部が一ヶ所に集まって、一斉に問題を解いていきます。


 この大会の順位のつけ方なのですが、各学校の成績上位三人の合計点で決まります。部員が三人ギリギリしかいないなら、その三人の合計点がそのまま。五人いるなら、そのうち上から三人の合計点で競い合います。

 この大会、各校何人まで参加できるかについては、特に規定はありませんでした。ですから部員さえいれば、十人だろうと二十人だろうと参加できます。単純に人数が多い方が良いと言う訳ではありませんが、五人の中での上位三人と、二十人の中での上位三人では、後者の方が有利かなと思ってしまいます。


 それとこの大会。一・二年生と三年生とでは、出る部門が違います。一・二年生が出るのは新人戦と言われるもので、これは県大会で終了です。先に挙げた全国大会に進めるのは、三年生が出場する本大会だけです。

 一応一・二年生だって本大会に出る事はできるのですが、少なくともうちの簿記部にはそんな実力者はいませんでした。

 だからでしょうか。大会中は三年生とそれ以外で、温度差があったように思えます。




 自分達が二年生の時でした。県大会に出場するため、前日は会場となる学校の近くのホテルに泊まりました。当時部員は全部で7人いたのですが、三年生の女子が3人、自分達二年生は男子が3人と女子が1人でした。一年生は、ゼロでした。


 部屋は男女で別れていたのですが、男部屋は全員二年生で友人同士。人数は少ないですが修学旅行のような雰囲気で、夜になるとトランプに熱中していました。

 そんな中、部屋のドアをノックする音が聞こえます。開けてみると、そこにいたのは女子部員唯一の二年生でした。

 彼女は言いました。


「女部屋の空気が凄くピリピリしてる。居辛いからこっちに避難させて」


 話を聞いてみると、三年生の先輩方は今も全員勉強中で、まるで受験前のような重い雰囲気が漂っているとの事でした。トランプに熱中していた自分達とはえらい違いです。


 しかし無理もありません。どんな成績だろうと明日の大会で一区切りつく自分達と違って、二位以内に入れば全国大会へと進めます。さらに三年ともなると、これが正真正銘最後の大会です。真剣になるのも納得です。


 ですが自分達二年生にとっては、それはどこか他人事のように思えました。


「先輩達も大変だな。ところで今トランプやってたんだけど、一緒にやる?」

「やる」


 先輩方がいかに一生懸命か聞こうとも、決してそれに触発されて自分達も頑張ろうとはなりませんでした。

 こうして三年と二年に別れたそれぞれの部屋で、片方はや真剣に勉強をし、片方はトランプで盛り上がっていました。

 修学旅行と違って消灯や先生の見回りも無かったのであ、トランプは夜遅くまで続きました。特に大富豪に夢中になりました。

 数多くの電子ゲームが作られている現在ですがトランプで何時間も楽しむ事ができるのです。素晴らしきかなトランプ。

 何だか話が脱線してきましたね。


 ちなみに大会の結果ですが、自分達二年生はまあまあの成績を残しました。先輩方は二位になって、見事全国大会に行ってきました。

 先輩方、おめでとうございます。

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