第15話 体育祭でやらかした話 前編

 今回は体育大会のお話です。要は運動会ですね。

 もちろん我が母校でも体育大会はあり、毎年9月末に行われていました。


 ところで、体育祭のチームと言うと、どのように分かれていましたか?普通は各学年の1組と2組と3組と言う風にようにクラスで分けるか、〇〇科と〇〇科みたいに学科別で分けるかではないかと思います。

 うちの学校では、1年対2年対3年と言う、学年別に分かれていました。どう考えても三年有利なのではと思うのですが


 あと、各チームは赤組や青組ではなく、赤団青団と言った〇〇団と呼ばれていました。調べたら宮崎ではこの○○団と呼ぶのが普通らしく、自分の地元は熊本ですが比較的宮崎に近い場所にあったので、そちらの文化が流れてきたんだと思います。


 各学年が様々な協議で競い合うのですが、中には全学年協力して行うものもありました。その中の一つが、全校男子による日本剣道形です。

 体育大会で剣道形って、他の学校でもやるのでしょうか?母校のある町のキャッチコピーが『剣豪の里』なので、その影響もあるかもしれません。


 全男子生徒が剣道着に着替え竹刀を持ち、決められた剣道の動きを披露します。ちなみに一年はまだ剣道の授業が無いためまだ剣道着も無く、下は体育服で上は裸と言った格好で披露します。上にも服を着せろと一年が言うのが、毎年おなじみの光景となっていました。


 二年になると晴れて剣道着を着ることができます。なぜか自分達の学年が二年の時は、業者のミスで剣道着が届くのが遅く、二年続けて上半身裸でやる羽目になりましたが。


 それでも三年目にはちゃんと剣道着を着て、動きだって皆もう慣れたものです。そしていよいよ体育大会当日が来たのですが、そこでこんな事がありました。

 皆で剣道着に着替えている時の事です。今まで剣道の指導をしてきた、野村先生(仮名)がやってきました。


「大竹(仮名)、それに皆も、ちょっと集まれ」


 名指しされた大竹君と言うのは、今回の剣道形で最も目立つ位置に立って演技を披露する子でした。最初グラウンドの脇から登場する時も、皆の先頭に立つことになります。

 野村先生の話は、その登場についての物でした。


「大竹。お前、グラウンドに登場する時に、気合入れるために何か掛け声を上げろ。それでその後、みんなが『オーッ!』って言ってそれに続け」

「掛け声って、なんて言えばいいんですか?」

「それはお前たちで考えろ。何でもいいから」


 野村先生はそれだけ言うと、その場を去っていきました。ですがそれを聞いたみんなは困惑しています。


「何でも良いって、丸投げじゃないか」

「去年まではそんなの無かっただろ。しかも何でこんな直前になってそんな事言うんだよ」


 突然の通達に、それぞれがブツブツ文句を言っています。ですがさっさと掛け声を決めてしまわないと、もうあまり時間はありません。


「『行くぞ!』とかで良いんじゃないか?」


 誰ともなしにそんな意見が出てきました。『行くぞ!』『オーッ!』。確かにそれが無難かもしれません。ですが、実際に最初の掛け声を上げる大竹君が、それに異を唱えました。


「待て。それじゃいくら何でも面白くない。どうせなら思い切った事を言おう」

「別にそれでも良いけど、じゃあなんていうんだ」


 そう聞かれて、彼が言ったのはこれでした。


「『調子乗んな野村!』にする」


 野村とはもちろん、野村先生の事です。

 みんなは耳を疑いました。体育の先生というのはどこもそうだと思いますが、基本怒ると恐いです。恐くなくったって、色々マズいです。見学に来ている保護者の方だってたくさんいます。


「それはヤバいだろ!」


 みんなの反応がこれでした。まあ当然でしょう。しかし大竹君は頑として譲りません。


「だっていきなりこんな事言われてムカつくじゃないか。心配するな、全責任は俺がとる!」


 まあ、言い出したのは彼ですし、実際に『調子乗んな野村!』と言うのも彼だけです。これでいったい他の誰が責任をとると言うのでしょう。


「全責任は俺がとる!」


 二度も言いました。どうやら彼の決意は固いようです。その意志の強さに、周りのみんなも心動かされました。と言うより、もう勝手にしてくれと思ったのかもしれません。


「まあ、お前が責任をとるって言うなら、もうそれでいいか」



 少々長くなってきましたね。これからどうなったかは、次回に持ち越すことにしましょう。少しだけ商業高校っぽく言うと、次期繰越です。

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