第11話 冷え症の恐怖

 少し前に、商業高校独自の科目で『計算事務』があると書きました。その内容と言うのは、要は電卓を使った計算です。そろばんを習っていた人は、それをそのまま電卓に置き換えればいいかなと思います。


 自分はこの計算事務と言うのが得意科目でした。普段簿記部で電卓を叩いているからか、他の人の平均よりも早く正確に計算する事ができました。テストも、よほどの事がなければそれなりの点を取る事ができます。

 ですが一度だけ、テストでピンチになった事がありました。


 うちの学校ではテストの時は、まず朝イチで掃除を行います。それぞれ決められた時間担当場所の掃除を済ませた後、各教室でテストを受けます。


 二学期の期末テスト当日の事でした。その日も普段のテスト当日と同じように、まず始めに掃除を行います。その日の自分は、校舎の外に出ての掃除になりました。

 季節は冬、吹いてくる風もすっかり冷たくなっていて、とても寒いです。外を掃除する事になったのは自分以外にもいましたが、みんな寒い寒いと言っています。

 その寒さが問題だったのです。


 自分は冷え症でした。それも、物凄く。

 具体的に言うと、掃除が終わった頃には手が痛くなります。冷たいではなく痛いです。力が入らなくなり、冗談抜きで鉛筆もまともに握れなくなるんです。


 そんな状態にも関わらず、最初に行われるテストが計算事務でした。電卓を、素早く正確に使えなければいけません。


 しかし鉛筆もまともに握れないのに、素早く電卓を打つなんてできるはずがありません。一つ一つ、キーを慎重に叩いていくのがやっとです。これではもちろん、テストは絶望的でしょう。


 そこで自分がとった行動は、ひたすら手を暖める事でした。教室に戻ってからテストがあるまで10分ほど時間がありましたが、その間とにかく手を暖めました。両手を擦り合わせる、膝の下に敷く。ありとあらゆる手段を使って、何とかまともに手を動かせるようになろうと必死でした。

 その頃回りでは、みんなテスト前の最後の見直しにと教科書を広げています。そんな中、一人が自分を見て言いました。


「教科書見ないなんて余裕だな」


 余裕なんてこれっぽっちもありません!むしろ大ピンチです!( ゚Д゚)


 しかし冷え固まった手は10分やそこらでは回復せず、テストが始まってもまだ手を暖めていました。


 手がまともに動くようになったのは、テスト開始から更に10分ほど経った頃でした。

 それから、大急ぎで問題を解く事になりました。

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