第9話 水泳 後編

 前回書いた、プールの更衣室事情。今回はその補習編になります。

 前回の更衣室事情にびっくりした方、本番はこれからです。


 そもそもこの補習と言うのは、クロールと平泳ぎでそれぞれ規定のタイムをクリアできなかった人を対象に行われます。そして自分は、平泳ぎがクリアできませんでした。


 一応言い訳をさせてもらいますと、自分はそれまで平泳ぎをやった事が無かったのです。中学の頃の水泳の授業は、クロールと平泳ぎのどちらか一つを選ぶと言うものでした。クロールを選んだ自分は、平泳ぎを習ったり練習したりする機会がありませんでした。

 平泳ぎだって、ちゃんと事前にやっていればきっとクリアできたんですよ。その証拠に、補習が終わる頃にはちゃんと規定のタイムをクリアしていました。

 以上、言い訳を終わります。


 この補習、前回も書いた通り男女一緒に行われます。そして更衣室は男女共用です。

 もちろん、だからと言って同時に着替えると言う事はありません。男子が着替える時は女子に出ていってもらい、女子が着替える時はその逆をすればいいのです。ただそれでも、なぜか妙な緊張感は拭えませんでした。


 補習授業は放課後決められた時間に行われるのですが、それぞれ更衣室にやって来くる時間にはみんな多少のズレがありました。そのため男女が集まって、どっちが先に使うかと言うちゃんとした相談はできませんでした。それができていたら、まだいくらかやり易かったでしょうに。


 男子で補習の対象になったのは三人でした。一人は自分です。それに、自分の双子の弟もいました。それにあと一人、友達を加えた三人です。

 三人一緒に更衣室まで向かい、中に誰かいないか確認します。男子で補習を受けるのは自分達だけなので、もし中に人がいるならそれは間違いなく女子です。絶対に入るわけにはいきません。


 中から声が聞こえて来ないのを確認すると、いつものようにノックします…………ノックします…………ノックします。これでもかと言うほどノックします。

 何の反応もありません。幸い、中には誰もいないようです。


 いつもならこれで中に入るのですが、今回は慎重です。何しろ使う時間が完全に重なっているのですから、万が一と言う事もあります。

 どうしたものかと入るのを躊躇していると、そこにたまたまクラスの女子が通りかかりました。


「ちょっといい?」


 声を掛けて事情を説明し、中に誰もいないのを確認してもらいました。これでようやく、中に入る事ができました。

 しかし最大の問題はこれからです。何度も書いた通り補習は男女一緒に行われるため、女子がいつ入ってくるか分かりません。彼女達がノックをするとも限りません。

 もちろん女子からしたら、「ノックくらいする」と怒るかもしれません。ですが事が事だけに、いくら用心してもやり過ぎでは無いでしょう。


「よし、見張りを立てよう」


 始めにそれを言ったのは誰だったでしょう?しかしそれを考えていたのは、おそらく三人とも同じだったと思います。

 更衣室には、プール側と校庭側の二ヶ所にドアがあります。因みに鍵はついていません。


 三人のうち一人ずつがそのドアにピッタリと張り付き、誰かやって来ないかを警戒し、その間に残る一人が着替えを済ませる。これが自分達の考えた作戦でした。


 そうと決まれば早速実行です。いくら見張りを立てているとは言え、女子が来る前に全て終わらせられたらそれに越したことはありません。


「よし、まだ女子が来る気配はない。今のうちに早く」

「脱いだ服はちゃんと全部鞄の中に入れないと。この後女子がここで着替えるんだからな」


 こんな事を言い合いながら、急いで着替えをすませます。

 ちなみに補習が終わった後は男女全員が揃っていたので、どちらが先に使うかちゃんと話し合えた分まだマシでした。


 補習は全部で3日ありましたが、その間何度思った事でしょう。


 更衣室は男女で分けよう。

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