第16話
「なんやかんやで楽しかったね!」
学園の食堂でランチを囲みながら集まる。コーデリア、一番楽しんでたな。
「そうですね、お土産沢山買い過ぎちゃいました」
アルン様。そう言えばすごい買い物して帰りの馬車はお土産が溢れてた。
「さすがに俺は地元だから土産はなあ」
ダドくん。今回の旅で一番お世話になった。どっかでコーデリアと上手くいくよう手を貸します…。
さて。修道院がどういうとこかはわかった。あとは。どうすれば回避できるかだ。
「そう言えば貰った金貨、どうするんだ?」
あ。ダドくんに聞かれて思い出した。例の帝国人に貰った金貨。
「よくわからないけど両替商に聞きに行こうと思ってる。高価な物なら実家に送ろうかなと」
「それにしても帝国人かあ。ティタニア併合したばかりでもう観光客とか来るんだね。もしかして密偵だったりして」
冗談ぽくコーデリアは言うが…その線は濃いだろなあ。旅慣れしてないみたいだから密偵じゃなく密使とか密命を帯びた役目だと思うけど。実際、しばらく王国で暮らすとか言ってたしね。そう言えば陛下や宰相様が今頃帝都に着いてるはず。その関係の可能性もあるな。
午後の授業は侍女科だ、そう言えばエマ様、殿下と接点あるようだったけどリーリ嬢についてはどうなんだろ、後で聞いてみよう。
「リーリさんですか?私自身はよく知らないのですが…」
授業が終わり、中庭の端っこの人目につかないとこでエマ様に聞いてみたところ、婚約破棄後、リーリ嬢と殿下は少し距離を置いているらしい。確かに最近一緒にいる所は見ないな?
「あの…言いにくいんですが…」
伏目がちに震えながら、意を決して言うエマ様。
「ん?」
「先日、リーリさんの教科書を隠したの、私なんです…そのせいでアルンシーダ様がお怪我をされたと聞いて…」
殿下が教室に怒鳴り込んで来たアレか!
エマ様の話ではレイラ様もどうやらリーリ嬢が気に食わないらしい。最初は殿下の思い人であろうリーリ嬢に殿下の為ならばと協力的だったが、アルン様が婚約破棄された辺りからリーリ嬢の殿下に対する態度が変わり、徐々に殿下と距離を置くようになって来たとか。殿下の好意を段々無下にするようになったリーリ嬢に腹を立てたらしい。
「大丈夫、アルン様の怪我は大した事ないから。もう治りかけてるよ、心配ない」
エマ様もレイラ様に言われてやった事だろうし、まさか殿下があんな事するとは思わなかっただろう。エマ様の罪悪感を少しでも軽くしてあげよう。レイラ様は許さないけど。
自室に帰り色々考える。殿下のアルン様との婚約破棄はてっきりリーリ嬢と一緒になりたいから破棄したのかと思ってたがエマ様の話を聞くと違う気がしてきた。だとしたらリーリ嬢だけじゃなく殿下の思惑も考え直した方がいいだろうか?いやそんな言うほど殿下の考えもわからないけど。情報が少ない。やはりリーリ嬢から攻めていくか。ん?
呼び鈴がなる。出してた洗濯物が届いたのかな?
「やあやあ、マリア!遊びにきたよ!!」
「んん?何しに来たのコーデリア…?」
え、いやホントどうしたの?珍しい。
「も、申し訳ありませんマリアさん…コーデリアさんがどうしてもと言うので…」
後ろからアルン様も顔を出す。
「だから、遊びに来たんだってば!廊下でばったりアルン様に出会ったからついでにマリアんとこ遊びに行こうって!」
遊びに行こうはいいけどついでってなによ。
「ほら、今週末に騎士科の大会があるじゃん?」
ん?確か、騎士科の生徒が全学年交えて剣術を競う大会か。
「お祭りだよ〜!」
大会は一般の人も観に来る、現役の軍部の方々も来られて優秀な成績を残したら騎士団に一階級特進で採用される、出店や屋台も出てちょっとしたお祭りだ。
「だから、三人でランダード様応援に行こうよ?」
なるほど、その予定を組みに来たのね?ていうかダドくん出るんだ、応援するの?コーデリアが?これは…!!
「その話、詳しく聞くわ」
「お、マリア珍しく乗ってきたね!」
そう言えばコーデリアはダドくんをどう思ってるんだろ?探りを入れてみるか。
「どんな風に応援する予定なの?」
「それを相談するんだよー!どうやるのがいいのかな?」
なるほど。いやでも私もわからないな。応援席で声かけるとか?
「うちの政治外交科の女の子達は応援旗を作ったりするそうですよ」
旗?応援旗か、なるほど…それくらいなら作れるけど。
「実際ランダード様、強いのかな?いつもすごい筋肉してるな〜って見てるけど。腕とか太ももとか」
コーデリア、そんなとこ見てるの?
「この前の庶民服もすごかったですね、胸元が開いている服でしたので筋肉がシュッと…」
アルン様、顔赤いよ?意外とみんなよく見てるな?まあ確かに筋肉ダドだけど。
「そう言えばダドくん、イケメンだから女子にすごい人気あるみたいよ?」
コーデリアを見ながらちょっと牽制を入れてみる。
「騎士科だと大人気だよね、学園のイケ騎士トップ3に入ってるらしいよ」
イケ騎士って何それコーデリア?私聞いたことないんですけど。あとの2人が気になるぞ?
「カッコいいですよね、ランダード様。お優しいし。コーデリアさんはどうなんですか?ランダード様みたいな方」
お!いいぞアルン様!よくぞ聞いてくれた!そこ聞いてみたい!
「あー、無理無理無理!筋肉は素敵だけど私なんかマリアより田舎の子爵だもん、相手にされないよー、友達だとは思ってるけど」
あ、そういう…うん、ダドくん頑張れ…実際ダドくんは辺境伯だけど次男だから比較的身軽だ、よほどの事がないと政略結婚に縁はないから全然コーデリアとアリなんだけどなあ。これはダドくんがコーデリアを好きだとしても…まだ良いお友達レベルだなぁ。でも完全にダメって訳じゃない、これからだぞ、ランダード!
まだ平日で明日も授業だ、夕食前にはダドくんを応援する会?は解散。とりあえずコーデリアの気持ちは計れた、後はダドくんだなあ。
…平行してリーリ嬢も探りを入れないとね。
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