第22話 オークとオーガの討伐

「ユウちゃんの弓術を試すだぁ」


「はい」



 俺達は城壁の外に出て、街道が真っ直ぐ見える所に待ち構える。

 オゥちゃんが俺の背中を右手で優しく押し出した。


「敵を50メートルぐらいまで引き付けてから、隊列の真ん中に弓術スキルの【貫通矢】を撃って下さい。オークの眉間を意識して狙って、同時に【百発百中】【自動追尾】【自動回収】を発動するのです」


 ユキが俺にプレッシャーを掛けてくる。



「それを全部?……出来るかな~」


「大丈夫!」

 ユキの笑顔が眩しかった。



「ユウちゃんが矢を撃って敵を乱したらぁ、スクちゃんとエリナちゃんが魔法で攻撃してぇ、その後ユキちゃんとオラが切り込むだぁ」


「「「「オーゥ」」」」



「来たっ! 街道を3列に並んで行進して来る」


 オークキングは後方にいて、他のオークよりかなりデカイ!



「十分引き付けてから弓矢を撃つだぁ」

「ラジャッ!」



 俺は真ん中先頭のオーク目掛けて、力一杯弓矢を撃った。


 ビッシュゥウウウウウゥゥゥゥゥ!

 ドドドドドドドッ……!


 20匹ほどのオークの眉間を打ち抜いて矢が止まった。止まった後、矢が消えて背中の矢筒に戻って来た。



「続けて撃ちますっ」


 俺は右先頭のオーク目掛けて再び弓矢を撃った。


 ビッシュゥウウウウウゥゥゥゥゥ!

 ドドドドドドドッ……!


 今度は30匹ほどのオークの眉間を打ち抜いて矢が止まった。止まった後、矢が消えて背中の矢筒に戻って来た。



「上手く出来てます。もう1回撃って下さい」


 ユキに言われて、今度は左の先頭のオーク目掛けて弓矢を撃った。


 ビッシュゥウウウウウゥゥゥゥゥ!

 ドドドドドドドッ……!


 今度も30匹ほどのオークの眉間を打ち抜いて矢が止まった。止まった後、矢が消えて背中の矢筒に戻って来た。



「私達の出番ね!」

 スクルドが叫ぶ。

 すでに詠唱とダンス!は終わってる。


 ピカピカッ、バリバリバリッ、ドドドドドォォォンッ!


 2発のサンダーストームが20匹ほどのオークを蹂躙した。



 半分ほどになったオークの群れに、オゥちゃんとユキが突っ込んで行く。

 俺は、背が高く顔がここからも良く見えるオークキングの眉間目掛けて、力一杯弓矢を撃った。


 ビッシュゥウウウウウゥゥゥゥゥ!

 ドッカァァァッ!


 鉄の矢がオークキングの眉間を打ち抜き、そのまま後ろに大きな音を立てて倒れた。

 ズッシィイイイイインッ!


 リーダーを失ったオーク達が慌て乱れる。

 城壁内に居た冒険者や武器を持った男達が、門から出て追撃戦を始めた。

 オーク達が逃げ始めたので、俺達はドロップしたものを回収する。

 オークキングのドロップアイテムは、金の魔石とスキルスクロールだった。


 俺は弓術スキルをもう1度良く確認することにした。



【弓術Lv10】

【毒矢】【麻痺矢】【百発百中】【貫通矢】【自動回収】【自動追尾】【属性矢】【流星矢】【透明矢】【夢幻弓】


 だいたい創造出来るけど、【夢幻弓】ってどうなるのかな~?

 俺は試しにやってみることにした。


「【夢幻弓】!」

 ピッキィイイイイインッ!


 目の前の空間に、光り輝くオリハルコンの長弓と矢が現われて、弦が勝手に引き絞られる。俺の両手は何も持っていない侭だ。



「目標前方のオーク、撃てーっってーっ!」


 ビッシュゥウウウウウゥゥゥゥゥ!

 ガッ、ドッカァァァンッ!


 矢は目視出来ないほどの速さで飛び、オークの眉間深く刺さり上半身が粉々に破裂する。


 撃ち終えた弓は空間に消えていった。


「「「「「……」」」」」



「はぁ……ユウリ、もはや人間の枠を超えてますね」

 とユキ。


「あまり人前で使わない方がええなぁ」

 オゥちゃんも、目が遠くの空を眺めてる。


「飛び散った物が……うわぁぁ!」

 倒れたオークを見て、スクルドが両手で顔を覆う。




「んだばぁ、オーガに襲われてるイエビクの街にも行くかぁ?」


「「「「はいっ」」」」



「スクちゃん転移門をお願いするだぁ」


「モチのロンよ、イエビクの丘に【転移門】オープン!」


 ブゥウウウウウンッ!



【転移門】をくぐり、町を見下ろせる200メートルほど離れた小高い丘に出た。

 領軍が、オーガの群れから町を防戦してるが、侵入され乱戦になってしまってる。

 領軍300に対しオーガは100ぐらいだろうか? ここからはオーガが有利に見える。



「良い場所に出ただぁ」


 町の中心に陣取った、一際大きなオーガロードがここから見える。



「お兄ちゃん、あそこにオーガロードがいるよ!」


 エリナが指差すと、オーガロードがそれに気づいたかのようにこちらを睨んだ。



 ウォオオオオオオオオオオッ!!

 ビリビリビリビリッ!


 オーガロードが咆哮して、俺達を【威圧】する。


 ユウリは耐えた。

 オゥログは耐えた。

 ブリュンヒルデは耐えた。

 スクルドは耐えた。

 エリナはポカンとしてる。

 ナホコはスヤスヤと寝てる……。



「【夢幻弓】!」


 目の前の空間に、光り輝くオリハルコンの長弓と矢が現われて、弦が引き絞られた。


「目標オーガロード、撃てーっってーっ!」


 ビッシュゥウウウウウゥゥゥゥゥ!

 ガッ、ドッカァァァンッ!


 矢は弾丸の様な速さでオーガロードの眉間深く刺さり、上半身が粉々に破裂した。



 オーガとハーマル領軍の兵士達の動きが一瞬止まる。

 オーガロードを見て何が起きたのか、スグに状況が把握はあく出来なかったようだ。


 やがて兵士達から歓声が上がり、オーガ達に動揺が広がる。


 ウワァアアアアアッ!



 俺達は町に向かって駆け出した。


 俺は普通の長弓に持ち替え、【百発百中】【自動回収】【自動追尾】でオーガを撃ちながら走る。

 オゥちゃんとユキは、先行してオーガに突進し切り掛かり、エリナとスクルドは後方から魔法を撃った。

 俺は陣形を崩さないように、前衛をフォローして、後衛を守りながら弓を撃ち続ける。


 オーガは残り20匹ほどになると逃げだして、兵士達が追撃戦を始めた。



「オラ達は追わなくても良いだぁ」


「「「「はい」」」」



「エリナ、ほら今だよ」


「そうだっ!……圧倒的ではないか、オラが軍勢は!」


「「「はぁはっは~」」」


 エリナと俺は、オゥちゃんに合わせて一緒に笑った。



「怪我人を治療しましょうね」


 ユキがそう言って、俺達は町中を手分けして回る事にする。



 オゥちゃんは回復魔法が得意じゃ無いので、町を巡り広場に怪我人を連れてきた。

 残りの4人は怪我人を見つけ次第、回復魔法で治療していく。

 ユキとスクルドの【完全回復】で、重症の者や部位欠損の者ですら、元どおりに直ってしまった。



「有難う御座います。お礼をしたいのですが、お名前をお伺いしてもいいですか?」


 3人はフェアリークレストの衣装姿で、マスクで顔も隠してるので、誰だか判らない。



「身分を明かす事は出来ませんが、元気になって良かったですね」


 ユキがニッコリと笑って言った。



「さぁ、家へ帰るだぁ」


「「「「はぁい」」」」



「妖精の森へ【転移門】オープン!」


 ブゥウウウウウンッ!



「「「ありがとうございましたぁぁぁ!!」」」


 町の人々のお礼の声を聞きながら、俺達はゲートをくぐった。

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