第14話 初めてのダンジョン

 朝食後、俺は畑の世話をして、妹は家畜の世話をする。


 薪割りを終えて、樵に行こうとしてたオゥちゃんが言い出した。

「とりあえずダンジョンまで行って見るだぁ」

「そうですね、どの位離れてますか」

「歩いて1時間ちょっとだぁ」

「往復で二時間歩く事になりますね。それでダンジョンで魔物と戦うと、妹にはきついかもな~」

「んだなぁ、エリナちゃんには、きついかもなぁ」


「ぶっひひーんっ」(まっかせなさーい)

「グラーニが、乗せて連れてってくれるの?」

 妹がグラーニの首に縋りつく。


「それじゃあ、今日は馬車を作るだぁ」

 オゥちゃんは、さっそく馬車作りに取り掛かる、樵はお休みにした。


「俺も手伝います。何でも指示して下さい」

「じゃあ私はお洗濯をして、昼食を作りますね」

 元々、材木も製材もあるので必要な大きさにのこぎりで切って、かんなを掛ける。車輪と車軸は戦場跡で拾った物を流用した。

「作れるが時間が掛かるからぁ」との事。


 ギーコッ、ギーコッ。

 シャーッ、シャーッ。

 カーンッ、カーンッ。

「オゥちゃんは大工のスキルも持ってるの?」

「大工Lv4と木工Lv3を持ってるだぁ」

「お茶の子さいさい、ですね」

「おちゃめこさんさん、かぁ?」

「たいしたたまげた、です」

「あいしてだっふんだ、かぁ?」

「すごい、って事です~」

「そんな事無いだぁ~、はーはっは~」

 騒音の多い作業現場の、あるあるですね。


 オゥちゃんが組み立てて、俺がニスを塗っていく。


 馬車は夕方に出来上がった。


 完成した馬車は、プロの作った物には見劣りするが、素朴で実用性重視と言った感じだ。座席は二列で四人乗り、屋根は無く、ドアも無く、横壁は腰上ぐらいの高さだ。一列目は御者ぎょしゃの席で二列目が客席になってるが、グラーニが轢いてくれるなら、御者も手綱も必要ない。藁をたっぷり入れて、なめし皮のクッションも作った。


「さっそく明日ダンジョンに行きますか?」

「ん~っ、ユウちゃんとエリナちゃんの装備が必要だなぁ」

「武器と防具ですか?」

「ユウちゃんの武器はミルニルで十分だぁ。他の物は小人さんに作って貰うだぁ、明日森に頼みに行くだぁ」

「じゃあ、私は小人さんの為に、クッキーを沢山焼きますね」


 夕食後リバーシを楽しみ、帰宅した。いよいよ魔物退治かな~。



 朝起きると二人分の皮製防具が棚に置いて有った。

「ジャケットとズボンと手袋とブーツだ」

「私のは深紅のレザーで、タイツとキュロットスカートに成ってる」

「エリナこれを見て!」

「わーっ!ミンキーマミのマジカルステッキだ~」


「実用性は無さそうに見えるけど、魔道具なのかな~?魔法の杖を『鑑定』、

『魔法の杖 MP100/100 魔法効果倍増』って表示されてるよ」

「すごーい、本物の魔法の杖なんだね~」


「「小人さん、どうもありがとう」」

 お礼を言ってミルクとクッキーを置いといた、昨日置いた分は無くなっていた。


「もっと美味しい物を沢山あげなきゃね」

「私もケーキを作ってあげるね」

「「「きゃ~、やった~、やっほ~」」」

 小人たちの歓声が聞こえた様な気がした。



 朝食後、馬車でダンジョンに向かう。

 オゥちゃんが前の席に座り、俺とエリナは後に座った。


「冒険者らしい人に森で会ったことが無いけど、ダンジョンに行けば会いますかね?」

「んだなぁ、妖精の森で冒険者を見ないのは、『妖精の森には、魔王に匹敵する怖い魔女と巨人がいる』と冒険者ギルドで噂に成ってるからだぁ。俺ぁ、怖い魔女も巨人も見たこと無えがなぁ」

 たぶんそれフレイヤ様とオゥちゃんの事ですから。


 街道に出るとスピードアップし北上する。山脈がだんだん近づいてくる。


 20分ぐらい走ると看板が立っていた。

『左 初めてのダンジョン』

 街道から脇道に入る。


 10分ほどでダンジョンが見えてきた。

 入口の門の前は開けていて、テントが二つ張ってある。

 ギルドに雇われた警備員が、一人で門の前に立っていた。

「「「おはようございます」」だぁ」

「おはようございます」


 馬繋ぎの柱の前に馬車を止める。

「グラーニお留守番しててね」

「ぶるるん」(は~い)

「ナオちゃんは俺のリュックサックに入れようね」

「みゃ~ん」(は~い)

 リュックサックからナオちゃんの首だけ出しておく。


 俺はミョルニルを手に握り、エリナは杖を両手で持った。

「レッツゴ~」とオゥちゃんが言った。

「「オ~ゥ」」

 

 幅3メートル高さ2.5メートル程の石作りの門から中に入る。

「俺が先頭でエリナが二番目、オゥちゃんが最後で良いですか?」

「そだな~、俺ぁ案内と補助をするから、それでええかなぁ」

「はい、お願いします。……中は明るいですね、通路も結構広いです」

「一階はスライムしか出ないから、落ち着いていくだぁ」

「「は~い」」


 10メートルほど進むと青いスライムがいた。

「ユウちゃんスライムに向けてミルニルを振ってみるだぁ。」

 俺は5メートルぐらいまで近づきミョルニルを縦に振った。

 ドーンッ

 稲妻がスライムを倒した。

「はーっ、やりました」

 1センチぐらいの魔石がドロップしてる。

「魔石を『鑑定』、……『魔石(石) MP1/1』だって、スライムだからかな?」


「ミョルニルを『鑑定』」

ミョルニル MP1000/1000

アーティファクト

雷神トールの|鶴嘴(つるはし)

雷攻撃 自動追尾

自動回帰 自動迎撃

魔力回復 魔力充填

採掘+5 精錬+5 鍛冶+5


「ミョルニル凄い、これなら魔道術式を作るだけで、すぐに日本に帰れるかも!」

「わー本当に!」

「うん、とりあえず、魔石を集めて魔石インクを作らなければね」

「そだね~。……今度は私が魔法を使ってみるね」


 しばらくして、また青スライムがいた。

「じゃ~、いくよ~。プルルン プルルン プルリンパ キラリン キラリン ピカリンパ」

「空マミですかっ!」

 ボワッ、ドーンッ

 火弾がスライムを倒した。


「わーいやったー、できた~」

「えーっと、アニメの呪文でファイヤーボールが打てるの?」

「えへへ~、コミケの為の練習が無駄にならなくて良かった~。詠唱省略で、アニメの呪文ポーズを合わせてみたの~」

「はいはいっ、でも詠唱に時間かかりすぎじゃない?ダンスもしなきゃダメなの?」

「そだね~、急いでるときは半分にしようかな~」

「エリナちゃん、かっけーだぁ、うっとりだぁ。……でも、Lv1の初心者は、普通はこんなに簡単にいかねえだぁ」

「きっとマミのステッキがすごいのね!」

「「……はいはいっ」」


「先に行こう」

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