31話 討伐依頼①

 翌日、活動再開の日。

 いつも通り、予定の時間より早めに酒場で待機。


 何かするでもない時間になって、ふと思い始めてくる。

 …ラディって、結構かわいい。


 というのも、昨日聞き流してたハルドレーンさんの一言が、今になって頭の中で掘り起こされている。

 「嬢さん」、なんとなしの呼び方だが、考えの外の一言だった。

 自分は出会いのインパクトから外見より実情に目が行き、暫定的に「少年的」と思い、それ以上深く考える事はなかった。

 けど確かに、女の子と言われても違和感の無い容姿。だからといって何をするわけでもないが、周りからどう見えてたのかは気になってしまう。

 しかもさらに体躯の小さい猫人とパーティを組んだときた。考えすぎとは思いつつも、変な想像が回り続ける。




 予定の時間、エンとの合流。

 昨日の試案をとりあえず共有。

「…なるほど、短剣、ね。取り回し自体は利かせやすいし、試すにはいいじゃない。

 ただ威力を出しにくい武器ではあるけど…その辺は大丈夫?」

「はい。考えはあります。」

「分かった。自信があるなら試してみましょ。」


 閑話休題、今日のこれから。

「討伐依頼に?」

「えぇ。おおよその実力は分かったし、そろそろ難度を上げる頃合いだと思うの。

 …むしろ戦い方が特殊なせいで、時間かけすぎたくらいよ。」

 より危険度の高い依頼。それはつまり、さらに踏み込んだ地域への冒険だ。

「それって今までと、どうちがうのです?」

「そうね、メリットは分かり易く報酬金の増額。物にもよるけど、これまでの依頼の追加納品報酬を含めても、それより多いかもね。

 そして依頼目的も素材の仕入れから、討伐そのものが目的になってくる。要は放置すると危険な存在を、早めに対処してっていう話。」

 確か討伐の観測と記録は『板』を通して行われるって聞いたな。かさばる素材を持ち帰らなくていいのは、荷物持ちとしては助かるところ。

「デメリットは、危険視されるほどの対象だし、当然強い。とはいえある程度強くても問題なく行けるとは思うけど。

 そして、より深いエリアでの活動。懸念点はここね。」

 やや重い語調。新天地への期待の裏で、張り詰める感情。

「あとは対象をひとつに絞らないというか…この辺は後で説明するね。

 それでよければ、向かうわよ。『濃度110』エリアに。」

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