第2話

1-②

〜憎い恋心〜


俺は、長谷川拓人、中学3年生。そして、警察庁特殊派遣捜査管理局捜査課福岡係第二、巡査部長。

今日は、二階堂七海、中宮冬華、近藤亮太くんと俺の特派捜福岡係のメンバーで、博多駅近くのカラオケスポット店にきている。部屋は3階。俺は歌うつもりはないが。

「盛り上がっていくぞー!」

「おぉー!」

と七海と冬華の女子中学生二人組は疲れ知らずというか、元気一杯である。最近のアイドル曲などたくさん歌っても疲れる様子は全く無い。本当に元気一杯だ。

今日は早く寝よう。疲れた。聞いているだけで。


「俺ちょっとトイレ」

「はーい」と冬華。

トイレは一個下の階。

さて、さっさと降りて・・・・


「きゃー!!誰かぁ!誰かぁ!!」


俺の行動は早かった。

まず位置は大体わかる。

俺らの一個下の階、このビルの二階部分だった。


現場に着いたら、男性が倒れていた。大学生くらいだろう。血痕はなかった。

「あ、俺、119番しました!」

と他の男性客。

騒ぎを聞きつけた店のスタッフが駆けつけてた。

普通の警察官なら、「警察です!現場保存のため、ここから入らないでください!」とか声をかけるんだろうけど、俺らの場合は、極秘になっているから、出来ない。


数分後、近くの交番から地域課員が現着。スタッフが現場に誘導した。

博多駅前交番から臨場した警察官で、俺らの事も把握している警察官だったので、会釈だけしておいた。刑事部機動捜査隊、博多署刑事課の刑事や刑事部鑑識課など大勢の警察官がこのカラオケ店に集結するまで、事件発生から30分程度だった。さて、警察官が現着したから、トイレ行ってこよー。


鑑識の結果、死因は服毒。よって、他殺又は自殺になる。毒殺の可能性が高いと思う。


トイレから戻ると、スタッフの休憩所で事情聴取が始まっていた。

博多署刑事課の樋渡巡査部長、永島警部補のコンビだった。

「とりあえず、これで同室だったのは終わりかな。あとは〜発見当時の状況だな。」と永島刑事。

「ですね。発見当時現場にいたのは・・・・同室だった4人と君たちだね。一応話聞かせてもらえるかな?」

と樋渡刑事が俺らのところへ寄ってくる。

「えぇ、いいですよ」と冬華。

何か企んでるな、あの顔。


休憩所に入るよう指示され、4人で入る。

「えーと、名前聞かせてくれるかな。資料に書かなきゃいけないんだよね」

「二階堂七海です、中2です」

「中宮冬華、同じく中2です」

「近藤亮太、高2」

「長谷川拓人、中3」

と、普通に答える。

「んで、君達は友達?かな。先輩後輩とか?」

「まぁ、そんなもんです」と七海。

「さて、本題に入るけど、なんで一個上の階なのに、気付いたの?カラオケっていろんなところから音が聞こえるのに」と永島刑事。

「あ、僕がトイレに行こうとした時だったんで」と答えておく。

「すごいタイミングだね。で、駆け寄ったらあの大学生が倒れていたと」と樋渡刑事。

「そうですね」と答える。

「あ、毒殺ですよね?今回」と冬華。

「多分、そうだけど、なんで?気になるの?」と樋渡刑事が答える。

「まぁ、職業柄」と亮太主任。

「え、職業柄って?学生じゃないの?」と2人とも混乱している様子。

「私達、お二人と同業者です」

「警察庁特殊派遣捜査管理局捜査課福岡係です!」と4人揃って警察手帳を見せた。

「え?なにそれ?」と樋渡刑事。

「あ、聞いたことある。警察庁直属の警察組織・・・・。本当にあったんだな。で、今回は捜査協力してくれるのかい?」と永島刑事

「まぁ、いいですけど〜」

冬華はこれを狙っていたのか。


そして、数分後俺らを含む関係者に対し事情聴取が行われた。

「あぁ、これで全員かな。」と永島刑事。

「んじゃ、整理しますかね」と亮太くん。

彼は福岡係の第二班の主任である。金髪が似合う警察官だ。不良集団に潜入し、万引きや集団暴行事件の検挙を得意としている。


「まず被害者は佐々木裕太さん20歳、教育大学に通う大学生。死因は毒薬混入のオレンジジュースを飲んでの毒殺」と冬華が被害者についてまとめる。

「ホシにつながる手がかりは、特になし。」と永島刑事。

「手がかりなら、あるよ?オレンジジュースが。誰が注いだんだろう」と俺が言うと、

「えーと、アルバイトの・・・松野翔太さん、被害者と同じ20歳」と樋渡刑事。

「ね、その人と大学が同じとかだったら、動機とかありそうなんだけどなぁ」と七海が言った。

「とりあえず、松野さんに事情聴取しよう。うーん、何かありそうだな。カンだけど」


すぐに事情聴取が始まった。

樋渡刑事と俺が担当することに。俺が一番大人に見えて特派捜のことを説明する手間が省けるらしい。

「松野さん、オレンジジュース注いだのはあなたですね」と樋渡刑事が問う。

「はい、確かに僕が注ぎました。注文を受けたのも僕です」

「あ、ぶっちゃけ、毒薬、入れました?」と俺が言う。

「いえ!別にそんなことしませんよ!」

あ、瞳孔が開いた。樋渡刑事は気付いてない。が、決まりだな。後は動機だけど・・・。

「あの〜、ちなみに、被害者の佐々木さんと面識は?

「いえ特には」

まただ。嘘をついている。

今度は樋渡刑事も気付いたようだ。

「松野さん、本当に面識ないんですね!」

「ありませんよ!あんなやつ!知りませんよ!」

「ん、あんなやつとは?やっぱり面識あるんですね?」と樋渡刑事。

「あ、あぁー、そのー」

「ごまかすと後々めんどうですよ。今言っちゃってください」と俺がいうと。

「ぼ、僕が殺りました。あの子を守るために!」

あっさり自供した。

「あの子とは?」と樋渡刑事が聞くと、

「僕が入学してからすぐ一目惚れした子です。なのに、あいつは!彼女になにしたと思います?キス、キスですよ!しかも強引に!あんなやつ、いなくなればよかったんですよ!」



事情聴取を終え、松野にワッパ(手錠)をかけて博多署へ連行した数分後。

「あ、これ、毒薬の瓶?」と七海。

「あ、ほんとだ。永島警部補に預けよう」

「この瓶から松島さんの指紋が出たらオッケーだね」

だな。

すると、正面に女の人が。

江口香澄巡査部長。育成課の新人刑事だ。

「あ、香澄さん!もう遅い〜、解決しちゃったよ〜〜」

「え、マジか!すごいね!んじゃ、帰ろっか!」

「香澄さん、テンション高い!なんかあった?」

「何にもないですー!」

「やっぱり高い!何かあったなぁ!」

と会話しながら俺らが住むアパートへ帰って行った。

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