第31話「漆黒の剣」

 角を生やした全長三メートルの獣に対して魔王が向かいあうのをアリスは心配そうに見つめる。


「目を瞑れ! 『フラッシュ・マキシマム』、『プロテクト』」


 魔王はそう言うと最大限の明るさの『照明の魔法』によりモンスターの目をくらませた隙に灯りを元に戻すと以前の様にアリスとの間に透明な壁を出現させた。


 目を抑えながら暴れるモンスターを見て魔王は右手で長剣の柄を持ちながら左手を剣身へとかざすと口を開く。


「『デミス』」


 呪文を唱えた瞬間禍々しい漆黒のオーラが出現した。魔王はそれを左手で制御するようにしながらも剣にまとわせるようにスライドさせた。やがて剣はオスカーやアリスの光の剣とは対照的に禍々しい漆黒の闇を纏った。


 魔王は出来上がった漆黒の剣を見つめる。

 

 突然の思い付きの割には上手く言ったな。『デミス』は十分に抑えた。だが、このモンスターを消し去るには十分だ。そう考えた魔王は満足そうに笑う。


 その時だった。


 ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアア


 視覚を取り戻したのであろう、雄叫びを上げながら魔王を潰そうと右腕を振り下ろす。アリスが心配そうな声を上げるも魔王はそれをひらりとかわした。


 それを見たモンスターは慌てて左腕を出す。


 魔王はそれもひらりと躱して一気に戻そうとしている右腕に飛び乗る。そのまま腕を駆け上がり関節まで登った途端、一気に跳び上がりそして……


「『デミス・スラッシュ』」


 一瞬の間にモンスターを上下に一刀両断した。


 ズーーーーン! と大きな音と共にモンスターの頭部だったものが落ちるとともに魔王は着地した。


「『デミス』に耐えられんとは……この程度か。いや、軍隊の一兵士の剣と考えればよくもった方かもな」


 魔王は斬り捨てたモンスター等目もくれず今の一撃で折れた剣を一瞥いちべつするとそのまま放り投げた。カラン、と剣が空しく音を立てて地に落ちる。彼はそのまま今の闘いを見て腰が抜けているアリスの元へと向かい盾の魔法を解除し壁がなくなりアリスまであと数歩というところまで迫った時だった。


「『フラッシュ・マキシマム』」


 突如眩い閃光が魔王とアリスを襲った。

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