● 第70話 『Gの書』回収で、ギフトの権威が三人になりました!

 『Gの書』の情報をただ回収するだけじゃなくって、三人で共有するだって?

 現世のパソコンなら簡単な事だと思うけど、コノ世界でソンナ事が可能なの?


 まぁ、サシャが言う事なんだし、彼女が『』って言うんなら間違いなく出来ちゃうんだろう……。でも、あの伝説の存在とまで言われた『Gの書』の情報って、とんでもなく難解でかつ膨大な量なんじゃないんだろーか?


 オレって、自分の『ギフト』能力の情報が直接アタマん中に流れ込んできた時に、かなりヘロヘロになった記憶があるんだけど……、情報量だけで言っても今回の場合はソノ比じゃないんじゃないのは明らかだ。

 しかも今回は、一度に三人の頭の中に『Gの書』をブチ込もうって計画してる。


 オレには、現世で見たアニメみたいに外部記憶装置なんて付いてないし電脳化もしてない訳で、いくらサシャの言う事だといっても、一抹の不安が正直あった。


 「ねぇサシャ、今のハナシで『Gの書』の情報を共有……って言ってたけど、ハンパなく膨大な量の情報だよね? 

 ソイツを、直接脳ミソに入れるって事? 

 パンクしたりしない?」


 「ソウだね……、普通の人間ならまずアレだけの情報を頭の中に直接流し込んで、ソレを理解するなんてコトは、絶対に不可能だろうネ。

 デモ今回は、大丈夫なのサ。


 

 と、言っても大量の情報が頭の中に入るコトには違いないから、少し戸惑うかもしれナイ。

 でも、コノ世界の命運を握る様な『ギフト』を持つ二人なら、安心してイイのサ」


 「情報の最適化……、じゃと言うたか。

 それは、一体どういう事なのじゃ?

 説明をしてくれんかの……」

 珍しく、カイザールさんまでもが戸惑っていた。


 「多分……だけど、サシャは『Gの書』の全てを自分は吸収するけど、……、……って、考えてる?

 あ、カイザールさん、口挟んじゃってゴメン」


 「流石は、ユウなのサ!

 ヤッパリ、キミは理解が早いネ。


 カイザール様のご質問のお答えは、今ユウが言ってくれた事がホボ正解なのサ。

 お二人にまで、アノ書の全情報は必要ないと思うしソレを知っておく必要がアルのはこのボクと、リサぐらいだからネ。


 だから、

 


 「なるほど……、のぉ。

 そんな事まで可能とは、恐れ入ったわい。

 流石に占術を幼くして究め、ギフトの権威として名高いサシャじゃ。

 今のハナシ、よう解かった。お主の答えも流石であったぞ、ユウよ。


 話は、全て理解出来た!

 早速ではあるが、今夜『Gの書』の回収及び共有を行う事とする。

 共有を行う者以外は、万が一に備え邪魔が入らぬように現場の安全を確保せよ!

 我が『平和的統治』の効力が及んでいるとはいえ、油断するでないぞ。


 ……時に、G?」


 「ソレは……、のサ。

 ナント言っても……アレを隠してから、もう随分と時間が経っている事だしネ。

 ひょっとしたらコノ街の人間が、知らずに全く違う物に形を変えているかもしれないし、場所が移されてる可能性だって否定出来ないのサ」


 何か、ハナシが宝探しみたいになってきたな。

 まぁ、実際にソノ場所に行って確かめるのが一番早いって事か。

 こういう展開、ちょっとワクワクするのってオレだけかな?

 おっと、コイツだって重要な作戦なんだった。楽しんでる場合じゃないね。



 時刻は流れ、夕食も済みアッと言う間に夜である。

 現世なら、BSあたりで深夜アニメが始まる頃かな。

 って事は、そろそろ作戦開始の時間か。

 いやぁ、ヤッパリなんかワクワクしてきた!


 「頃合いや良し……、じゃな。

 皆、そろそろ行くとしようかの」

 重々しく、カイザールさんが作戦開始の口火を切った。


 今回の選抜メンバーは、カイザールさんにサシャとオレは言うまでもないけれど、万が一の事態に備えてユーリ、ローマーさん、ギトリッシュさんも同行することになった。

 エテルナ達は例によって、ピエール氏邸の護衛を担当。

 イリアさんは、妹のシエナとアントワーヌさんの面倒を見る事になった。


 深夜の、マーベルシュタット。

 静けさが漂い、昼間の活気が嘘の様な町並み……を想像していたのだが、ソレは大きな間違いだった。ココは、渋谷のセンター街か! 

 ……ってぐらいの大勢の人々が、それぞれに夜を楽しんでいた。

 コレこそが、この街の本来の姿であり住人の皆が平和を謳歌している証だった。



 賑わう街の喧騒を離れ、大通りから少し離れた横道に入った所でサシャが言った。

 「この坂の上に、昔ボクとリサが住んでいた部屋があってネ……。

 目指す場所は、その先にあるのサ」

 皆が付き従って、肩を並べて歩いて行く。


 「さぁ、ココが皆のお待ちかねの場所なのサ。

 やっぱり、ボクがアレを隠した時とは形が変わってしまっているネ。

 でも、間違いないのサ。

 


 サシャが指差した先には……、広場とその中央に配されたがあった。

 周りには、ベンチもあり気持ちのいいそよ風が吹き抜けていた。

 噴水の奥に目をやると、坂を上って来た高台と言う立地から美しく整備された町並みを見晴らすことが出来た。


 「昔は、ココは広場なんてモノじゃなくてネ。

 ただの空き地の真ん中に、湧き水が出る池があったのサ。

 だから、ボクはGんダけど……、どうやら街の人たちは池を噴水にしちゃったみたいダネ」


 噴水の近くに進み、つぶさに眺める。

 

 コイツが、そうなのか……。


 「うん、間違いないのサ……。

 この街の人が物を大事にしてくれる人達でヨカッタ!


 じゃあ、

 カイザール様とユウは、噴水を囲む様に立って。

 他の皆は、少しの間コノ場所に人が来ない様にしておいて欲しいのサ。

 そんなに時間は掛からないから、ヨロシクなのサ」


 オレ達は、噴水を中央にして手を繋ぎ輪になった。

 他のメンバーは、それぞれに見張りについている。

 準備OKだ!


 「じゃあ、始めるのサ。

 最初はビックリするかもしれないけど、すぐに慣れるから心配いらないのサ。

 

 


 サシャが目を閉じる。

 オレとカイザールさんも、慌てて目を閉じた。

 



 ――次の瞬間、オレ達三人はまるで早回しの映画のシーンの中に居る様な感覚に襲われ、同時にG


 オレが前に、自分の『ギフト』能力の正体を知った時の感覚とは全く違っていた。

 あの時は、まるで自分が情報の激流に飲まれ何も出来ずただ入ってくる情報を受け止めるのに精一杯だったが、。これなら、カイザールさんも大丈夫だろう。


 しばらく、ソノ状態が続いた後で突然それまでの感覚が途切れた。

 恐る恐る目を開けると、ソコにサシャの満面の笑顔があった。


 「思ったより、時間が掛かってしまったのサ。

 でも、

 情報は全て引き出し、ソノ全てをボクの頭の中とコノ何の変哲もない鍵の中に。

 そして、無事に最適化した情報を二人に共有する事が出来タ……。


 ――G!」

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