『不帰の森』にて

● 第37話 『不帰の森』の正体が判明して、仲間が出来たヨ!

 「もちろん、……コレ以上ないぐらいの『合格』ナノさ……。



 ――そして、お久しぶりです……

 小柄なマント姿の人物――声からすると、明らかに女の子だ――が、何の事かサッパリ不明だが『合格』の判定を嬉しそうに下した。

そして被っていたフードを上げ、マントを脱ぎ捨てたんだが……このコって……。

 

 ソコには、正にあの『サシャ・ガラード』をそのまま幼くしたマンマのあどけない少女が居た。

 それに今、サシャの事『』って言った様な……。


 「やぁ、久しぶりなのサ……。

 元気にしてたカイ? 他の皆も、変わりナイみたいだネ」

いつの間にか変装術を解いて、本来の姿になったサシャがコチラも嬉しそうに答えた。何とまぁ……、サシャには妹が居たのか。


 それに、最初にオレ達の事を『合格判定』した白髪のオッサン……『』なんて言ってなかったか? とてもソンナ年齢には見えないんだが、さっきの言葉が事実だとすれば、あのオッサン(ジーサン?)は『ギフト』を持ってるって事になる訳か。

 この『不帰の森』って、一体……何ナンダ? 

 考えたい事や、質問したい事が目白押しだった。


 「皆様、我らが棲み家『不帰かえらずもり』へようこそおいで下さいました。

 ボクは、『リサ・アストラード』ナノさ。失礼とは思いましたが、森に入ってから先程までの一部始終の出来事はボクが命じて行わせた物デス。この点については、我ら一同を代表し深くお詫びするノさ。

 改めて、コノ森は皆様を心から歓迎致しマス」

 そう言って彼女が深く頭を下げ、謝意を示すと周りのオレ達以外の全ての者が一斉に深くこうべを垂れた。



 ――こうしてオレ達は、開けた土地を更に奥へと進み再び赤い森を抜け、結構大きな集落の中央に位置する建物の大広間に通された。『不帰の森』の奥に人と獣が棲む集落があったなんて想像もしてなかったよ!

 「皆、

 詳しくは後で説明するけど、コレだけは憶えておいテ。この森に居る者は、全て信じられる味方だから安心して欲しいのサ」


 「コレは、……また予想外の事じゃて。アノ『不帰かえらずもり』に、棲んでおる者が居ったとは! しかし、先程のアノ意志を持つかの様な霧……アレは誠に難儀じゃったのぉ。

 時に、アノ霧は『ギフト』の能力ではないかの?」

 久々にゼット爺さんの声聞いたよ! いつも通りでヨカッタ!

 え? あの霧って『ギフト』の能力だったの? 


 「は! アノ霧はこのワタクシの『ギフト』の能力を少し応用した物であります。ご苦労をお掛けし、誠に申し訳ございませんでした。

 ワタクシは『ローマー・ハンハルト』と申します。リサ様のもとで参謀の様な事をさせて頂いております。以後、お見知り置き下さい。


 ご挨拶が遅れましたが……カイザール陛下、並びにご同行の皆様とこうしてお目に掛かれました事、誠に光栄に存じます。

 コノ時を、本当にどれだけ待ち焦がれた事か……。


 これより先は、この森全ての者の忠誠はカイザール陛下の物にございます!

 あの様な無礼な振る舞いの後での発言を、何卒お許し下さい」

 異様なまでに目力の強い黒い瞳が、本心からそう言っている事を物語っていた。『』ってヤツだ。


 「ソレについては、コチラとしては願ってもナイ話じゃが……その前に少々確認しておきたい事があるのじゃが、よいかの?」

 あ、オレも色々聞きたい事あるのに先越されたー!

 まぁ、後でもいいか。オレの疑問点も、カイザールさんが聞いてくれるかもしれないし……。


 「では、まず最初の問いじゃ……。

 先程、サシャは『』じゃと言うたが、……この『不帰の森』というのは実の所『ギフト』能力者達のではないのかの?」

 おぉ! なるほど、ソレなら『不帰の』って名前にも納得がいくよ! 


 ナゼ、『不帰の森』なんて言う風に呼ばれているのか? そして、

 ソレは、この森に入った人間達が皆『ギフト』能力者とその家族で、その人達にとっては『不帰の森』その物がんだ。

 やっとの事で目的地である、安住の地に辿り着いたのに森を出てわざわざ危険な場所に戻る奴なんて居るわけないもんな……。


 「まさにその通りなのサ、カイザール様……」

 答えたのは、サシャだった。

 「例の『ドゥアーム教』の教義が広がって、しばらくの間はまだ良かったんだけど、ボクの占術の的中率の高さとソノ内容の正確さが余りにも突出していた事から、ある時ボクが『ギフト』能力者なんじゃないかっていうウワサが街に流れたのサ……。


 アノ頃は、リサもまだ本当に子供だったし危ないと感じたから、そのウワサを聴いた日の内に二人で変装して姿を消したのサ。

 で、昔からの知り合いで『ギフト』能力者だったローマーに、ボクはこんな具合にハナシを持ち掛けたのサ。


 『』ってネ……」

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