1499.質疑篇:相棒とラスボスどちらが対になる存在か

 直近のご質問などを精査しながらお答えしております。


 本日はご質問が一件ございました。

 明日3月23日火曜日の連載終了となります。

 火曜13時までにご質問・お問い合わせをいただければ採用されますので、ぜひご質問・お問い合わせくださいませ。


 今回は複数の「対になる存在」がいる場合、どちらが本来の「対になる存在」になるのか、についてです。





相棒とラスボスどちらが対になる存在か


 今回もご質問にお答え致します。

 「バディものの勇者譚では、相棒とラスボスのどちらが対になる存在ですか」についてです。

 物語創りの経験が豊富ならすぐに答えが出せるのですが、これから執筆に挑んだり今まで挑戦しなかったりした場合は即答できませんよね。




どちらもそれぞれの対になる存在

 「対になる存在」は、ある要素・属性において「主人公と対になって存在する」キャラを指します。

 だから勇者物語の「対になる存在」は倒すべき魔王や竜王、恋愛物語の「対になる存在」は意中の異性となるのです。

 ご質問の「勇者のバディものでラスボスを倒す」物語の場合、相棒とラスボスのどちらが「対になる存在」なのか、について。

 答えは「どちらもそれぞれの対になる存在」です。




相棒は対になる存在

 勇者とバディを組む相棒は、物語のうえで勇者とは対照的な存在である場合が多いですよね。

 「男勇者」に「女魔術師」だったり、「若い勇者」に「老齢の名探偵」だったり、「貧乏な勇者」に「大富豪の娘」だったり。

 相棒は、主人公とはかけ離れていればいるほど物語が華やぎます。

 そういう意味で、相棒は「主人公の対になる存在」なのです。

 とくにかけあいが小気味よい物語は、「バディ」ものの中でも「ことごとく対照的」な存在のほうが映えますし面白くなります。

 神坂一氏『スレイヤーズ』では「若き天才女魔術師」リナ=インバースが主人公で、「若き天才男性剣士」ガウリイ=ガブリエフが相棒の「バディ」ものです。

 どちらも「若き天才」ですが、リナは「女」「魔術師」で、ガウリイは「男」「剣士」。

 つまり性別と職業が「対になる存在」なのです。

 だから『スレイヤーズ』はコメディーとしてとても魅力的な作品となりました。




ラスボスは対になる存在

 では主人公たちの挑むラスボスが「対になる存在」である理由。

 ラスボスは世界を破滅させようとしたり、世界征服しようとしたり、人類を抹殺しようとしたりします。

 主人公たちはラスボスの狙いを阻止するべく、を倒すために旅を続けるのです。

 つまり「ラスボス」は「主人公たちがその野望を挫くための対になる存在」となります。

 そうなるとラスボスの設定が難しくなりますよね。

 相棒が対照的な存在であるのに、ラスボスが対照的な存在でないとすれば、主人公たちはなにと戦えばよいのでしょうか。

 人道主義の勇者と、暴虐な魔王の対比があるからこそ、物語が面白くなりますし説得力を持ちます。

 そう考えると困った問題が起こります。




どちらも対照的な存在だから混乱

 相棒もラスボスも、「主人公の対になる存在」なのです。

 そうなると、相棒とラスボスがほとんど同じキャラクターになってしまいかねませんよね。

 「男勇者」に「女魔術師」の相棒で、「対になる存在」も「女魔術師」になる可能性があります。

 この場合、相棒とラスボスで「主人公と対になる」要素を分散させてください。

 たとえば「若い男の主人公」に「同い年の女の魔術師」の相棒で、「年老いた男の魔術師」がラスボスとします。

 相棒は主人公と「年齢」が等しく「性別と職業」が違います。「対になる存在」は「性別」が等しく「年齢と職業」が違うのです。


 このように「対になる存在」はすべてのの要素を対照的に創る必要はありません。

 相棒とラスボス。ふたりの「対になる存在」がいるのなら、ふたりに対照的な要素を分配するのが、面白い物語にするポイントです。




バランスをとれれば傑作に

 物語は、相棒との旅路をメインに据えれば「バディ」ものの印象が強くなり、ラスボスを倒す目的が明確なら「勇者譚」ものの印象が強くなります。

 相棒とラスボスで主人公と対照的な要素を分け合った場合。どちらもメインとして機能するのです。

 単なる「勇者譚」で終わらず、ラスボスへ至る旅路そのものも楽しめる。

 「一粒で二度美味しい」物語になりますので、当然「小説賞・新人賞」でも有利に働きます。

 とくに「勇者譚」は主人公の勇者が「対になる存在」の魔王を倒して終わりとなりやすい。これだけではあまりにも鉄板過ぎて面白みに欠けます。


 単純に相棒とラスボスのどちらかを「対になる存在」とは考えないでください。

 双方を別の要素で「対になる存在」と設定すれば、物語はより面白くなります。

 「対になる要素」を相棒とラスボスへ絶妙に分配できれば、「小説賞・新人賞」が獲れるだけの面白い物語に仕上がるのです。

 そのためには「バランス」をいかにとるか。徹底的に設定をこだわりましょう。


 相棒は主人公とはどう違うのか。ラスボスは主人公とはどう違うのか。

 それだけでなく、相棒とラスボスとはどう違うのか、の視点でキャラクターを創ってください。

 なにも考えていないと、相棒とラスボスが似通った存在になってしまいかねません。

 いかに相棒が引き立って魅力を感じるか。ラスボスが引き立って魅力を感じるか。

 主人公は相棒とラスボスとは反発するから引き立ちます。


 主人公の属性をきっちり創り込んでいるから、相棒の属性とラスボスの属性を主人公とは対照的に設定できるのです。

 相棒に偏らず、ラスボスに偏らず。等しく主人公と差があるからこそ主人公・相棒・ラスボスの三者が等しく魅力を放ちます。

 面白い「バディ勇者」物語は、相棒とラスボスが主人公と並ぶほど魅力的だから面白くなるのです。





最後に

 今回は「相棒とラスボスどちらが対になる存在か」にお答え致しました。

 どちらも「対になる存在」でありながら、ふたりとも異なる要素・属性があるべきです。

 どれだけ主人公と対照的な存在にしつつ、相棒とラスボスにも対になる属性を設定しましょう。

 なにも考えないと、相棒とラスボスがまったく同じ属性になってしまいかねません。

 うまくバランスをとって、主人公・相棒・ラスボスの三者が鼎立ていりつするよう配慮しましょう。



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