1445.端緒篇:連載の起承転結(No.328再考)

 「起承転結」は漢詩の「起句」「承句」「転句」「結句」からなる構成法です。

 しかし本場中国では見向きもされなくなりました。

 日本人は「四コママンガ」に「起承転結」を用い、一気に普及したのです。

 もはや「起承転結」は日本の物語創りの概念と見る向きもあります。

 ただ残念なのは、連載小説の執筆にはあまり向かない点です。

 そこで小池一夫氏の著書から御知恵を拝借した「連載用の四部構成」を復習致します。





連載の起承転結(No.328再考)


 長編小説では便利に機能していた「起承転結」ですが、連載小説だと「起承転結」ではなかなか説明しづらい。

 そこでコラムNo.328「連載の起承転結」を再構成し、「連載の起承転結」である「主謎解惹」「起問答変」を見ていきます。




導入部は主人公を立てる「主」「起」

 連載小説は毎回の導入部で必ず「主人公を立て」なければなりません。

 連載のどこから読んでもしっかりと「主人公が立っている」。

 そうでなければ続けるほどにフォロワーを増やしていく連載小説とはなりません。

 そこで連載小説の第一部は「主」や「起」とします。

 毎回導入部で「主人公を立てる」と、どこから読み始めても物語がおいしくなるのです。

 「主人公を立てる」には「主人公に出来事が起こる」か「主人公が出来事を起こす」かしましょう。

 つまり「主人公を動かす」のです。

 そうなると「主人公を走らせてみようか」「主人公に相手を斬り倒させようか」「主人公がいきなり殴られてみようか」「主人公が子どもを助けてトラックに轢かれてみようか」といろいろと考えられると思います。

 しかし多くの書き手が見過ごしてしまう動作がひとつあるのです。

 「主人公を動かさない」

 「動かさない」だけでも立派な「動作」なのです。

 今からあなたに「十分間黙って立っていてください」と命じたとします。

 ただ「立っている」だけで動かないでいる。それ自体が「動いている」のだと体感できますよね。

 「主人公を動かさない」で機会を窺う。

 それも立派な動作であり、「キャラを立てる」出来事・事態になります。

 主人公に動作をさせるなにかが起きるのか、主人公の動作が起こるか。

 つまり「主(主人公)」に出来事・事態が「起(起きるか起こるか)」ですよね。




展開部は謎を追う「謎」「問」

 導入部で「主人公を立てる」ために主人公を行動させました。

 すると「なぜ主人公はこんな行動をしているのだろうか」と「疑問」が湧いてきませんか。

 展開部はこの「なぜこんな行動をしているのだろうか」の「謎」の理由を追う部分です。

 そこで連載小説の第二部は「謎」や「問」とします。

 毎回導入部で示される「主人公の行動」にはどんな背景があったのか。

 その行動によって状況がどう変わっていくのか。

 それを探すのが展開部です。

 主人公はなぜ出来事・事態に巻き込まれたのか「謎」、主人公がなぜ行動したのか「問い」を書くパートが第二部「展開部」になります。




解決部は答えを示す「解」「答」

 展開部で主人公が導入部で行なっていた行動に対する謎や理由が明かされていきます。

 解決部では導入部の行動と展開部の「謎」や「問い」の理由を文字通り「解決」して「答え」を出していく部分です。

 「あれ? ここで物語を「解決」させてしまうと第四部はどうなるんだろう」と感じますよね。

 ご安心ください。連載小説での第四部は「結末」を意味しないのです。

 第四部でストーリーの根幹にかかわる「謎」や「問い」に対し、「答え」には近づけても「答え」そのものは出ません。

 なので安心して第三部で今回の投稿ぶんは「解い」て「答え」を出してください。

 そこで連載小説の第三部は「解」や「答」とします。

 なぜ出来事・事態に巻き込まれたのか「謎」を「解き」、主人公が行動した「問い」に「答え」を出すのです。

 しかし読み手が安易に予想できる解決法はとらないようにしましょう。

 解決法が見抜かれてしまったら、その時点で読み手が連載を追ってくれなくなります。

 「そんな解決法があったのか!」と読み手に思わせてこそ、解決部は読み手を強く惹きつけるパートになるのです。

 もちろん主人公の能力を最大限に活かしてください。

 主人公の思いつきだけで「謎」が「解き」、「問い」に「答え」が出てしまったら。それまで熱心に読み進めてくれていた読み手が一気に興醒めしてしまいます。

 できれば主人公をいったんどん底まで叩き落としてみましょう。

 そこから主人公が「対になる存在」にどうやって勝つのか。

 その解決法なら意外と簡単に読み手の想像を超えられます。




惹起部は次回以降へ読み手を煽る「惹」「変」

 解決部で導入部の主人公の行動の結果が出ました。

 それを受けて第四部ではメインストーリーへの影響を書いて読み手の期待感を高めるのです。

 「メインストーリーの謎」の「解決」に一歩近づけてもよいですし、さらに「メインストーリーの謎」を増やしてもよい。「メインストーリーの謎」に絡んでくるのではないかと思われる人物を登場させてもよいのです。

 とにかくメインストーリーに絡めて、次回以降の進展を読み手が心待ちしてくれるよう取り計らうのが惹起部となります。

 そこで連載小説の第四部は「惹」や「変」とします。

 読み手を「惹きつける」シーンを読ませて、メインストーリーに「変化」をもたらし、読み手に続きを予想してもらおうということです。


 惹起部があるから読み手は飽きずに連載についてこられます。

 田中芳樹氏『銀河英雄伝説』に至っては連載の締めくくりに入る頃からとても強力な「惹き」を用いたため、読み手に「この続きを書いてほしい」と思わずにはいられないような状況を生み出しました。本来は邪道です。

 「惹き」はそれほど強力な渇望感を読み手に植え付けます。

 あなたの連載小説でフォロワーさんを増やしたいと思っているのでしたら、ぜひ惹起部を活用して各投稿ぶんのラストに次回以降への「惹き」を作ってみましょう。




受け身と能動の四部構成

 ふたつ出来あがった連載小説の起承転結「主謎解惹」と「起問答変」ですが、使い方に差があります。

 まず「主謎解惹」。これは主人公に出来事・事態が起きて、巻き込まれた主人公が立ちまわって解決していく「受け身」で始まる形です。

 次に「起問答変」。これは主人公が出来事・事態を起こして、問題が立ち上がりその答えを明かして状況を変えていく「能動」で始まる形になります。

 つまり連載小説の起承転結の型は、毎回異なっていてもよいのです。

 というより単調にならないよう、読み手に「今回は静かな立ち上がりか激しい立ち上がりかを期待させる」ためにもふたつのパターンを自在に操ってください。





最後に

 今回は「連載の起承転結」について述べてみました。

 上記した四部構成をまとめると「主謎解惹」「起問答変」という形になります。

 もちろんショートストーリーの一話完結やシリーズ完結などで「惹き」を作らない連載も可能です。

 でも連載中は「惹き」を設けると読み手の食いつきがまったく違ってきます。

 できれば「惹き」をうまく用いて、読み手に「この先が読みたくてしょうがない」と思わせてください。

 そうすればブックマークやストーリー評価も必ず高まりますよ。

 連載の起承転結「主謎解惹」「起問答変」をどう使うかは「コラムNo.338」で『シンデレラ』を元に解説してあります。興味を持たれましたらご一読いただければと存じます。



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