1444.端緒篇:伝えたいこと十種(No.800抄本)
今回も続いてフィルムアート社のブレイク・スナイダー氏『SAVE THE CAT!』からのコラムです。
小説に変換する手間はありますが、物語創りとしてはかなり使えるので、書店やAmazonなどで取り寄せると役に立ちますよ。
それか難しい方はそのエッセンスだけですが、本コラムをお読みいただければと存じます。
伝えたいこと十種(No.800抄本)
物語には「
読んでなにも感じなかったら、数時間かけて小説を読むなんてしません。アニメやドラマを観て、マンガを読んでいれば済みます。
わざわざ数時間を費やすのなら、それに見合った「
ブレイク・スナイダー氏『SAVE THE CAT!』で掲げられている十種を改めて掲載致します。
1.赦す
「他人を
「他人を赦す」
物語開始当初、主人公は「他人を赦せない」という
「
そこで主人公側が折れて「他人を赦す」のです。
「自分を赦す」
物語開始当初、主人公になにがしかの「自分を赦せない」
旅を経て「
そして「過去の自分」もそれほど悪くはなかったのではないか。そう考えるようになります。
2.受け入れる
「自分を受け入れる」「現実を受け入れる」「状況を受け入れる」があります。
「自分を受け入れる」
最初は自分の存在自体を否定的にとらえているのです。
旅で自分の存在を問われ続けます。
「
「現実を受け入れる」
最初は現実を否定的に捉えているのです。
旅で現実をまざまざと見せつけられます。
「
「状況を受け入れる」
最初は主人公が置かれている環境(状況)を否定的にとらえているのです。
旅を経て周辺の状況が変わります。
「
3.愛
「愛」には一般的な男女の「恋愛」が多いですが、家族への「家族愛」、自分かわいさの「自己愛」もあります。
「恋愛」
異性に恋愛感情が持てなかったりおくてだったりして「対になる存在」とうまく関係が築けません。
旅を経て「対になる存在」への距離が近づいたり離れたりしていきます。
「
「家族愛」
主人公は今の家族を煩わしく思っています。
旅を経て家族の意外な一面を垣間見ることになるのです。
「
「自己愛」
自分のことを好きになれない、どこかが嫌で嫌で仕方がない。
旅を経て自分にもこんな一面があったんだ、自分にも他人に負けないものがあるんだと自信を持つようになります。
「
4.信念
「信念」には「自分の信念」「他人の信念」「世界の秩序」「神への信仰」があります。
「自分の信念」
最初は自分が抱いている信念が周りに認められていないので証明したいと思っています。
旅を経て主人公の信念が試されるのです。
「
「他人の信念」
当初主人公は「他人の信念」を否定的に捉えています。
旅を経て「他人の信念」が多角的に示されるのです。
「
「世界の秩序」
当初主人公は「こんな世界やってられるか」と強い反発心があります。跳ねっ返りや意固地になっているのです。
旅を経て「世界の秩序」が形を変えて示されます。
「
「神への信仰」
当初は神を信じていなかったり信じてはいてもそれほど深くはなかったり。
旅を経て主人公は神の思し召しを幾度か体感するのです。
「
こちらは信教を持たない現代日本人ではあまり使われない形です。だから「剣と魔法のファンタジー」であっても「神への信仰」はほとんど見られません。読み手に「神を信仰する」風土がないからです。宗教小説になら書かれています。
5.信頼
「信頼」には「自分を信頼する」「他人を信頼する」「未知のなにかを信頼する」があります。
「自分を信頼する」
物語冒頭で「自分に自信がない」主人公が、旅を経て徐々に自信をつけていく。
途中で挫折を味わい、それでもなお主人公が動きます。
「
「他人を信頼する」
物語冒頭で「自分以外は信じられない」「あの人のことは信じられない」主人公がいるのです。
旅を経て主人公は徐々に「他人を信じてもよいのではないか」と思い始めます。
「
「未知のなにかを信頼する」
物語冒頭ではまったくその姿がわかりません。しかし物語が進むにつれ、今まで知らなかったものと出会います。当然当初は信頼感がないのです。
旅を経て「信じてもいいかな」と思い始めます。
「
6.責任
「責任」には「任務遂行」「大事なことのために起こす行動」「運命の受容」があります。
「任務遂行」
物語冒頭で主人公に「ある
旅を経て「任務を全うすることもたいせつではないか」と気づきます。
「
「大事なことのために起こす行動」
物語冒頭で私事を優先させる主人公が、
旅を経て「私事よりも大事なことがあるのでは」と思うようになります。
「
「運命の受容」
物語冒頭では「行く路は自分で決める」と行動的だった主人公が、
旅を経て「運命」を実感し始めます。
「
7,罪滅ぼし
「罪滅ぼし」には「贖罪」「罪を受け入れる」「罪悪感」「魂の救済」があります。
「
物語冒頭、主人公が罪を犯します。それを悪びれることもなかったのですが、人々から追われるのです。
旅を経て自分も逃げてばかりいてはダメだと気づきます。
「
「罪を受け入れる」
物語冒頭に主人公は「それを罪とは思わずに」禁を破ってしまいます。旅を経て自分の犯した「罪」に気づくのです。「
「罪悪感」
物語冒頭、なんの気なしに人を傷つけるような行動や発言をしてしまいます。
旅を経てあのときの自分について考えるようになるのです。
「
「魂の救済」
物語冒頭卑しいまたは意地汚い主人公が、
旅を経て世の中(現実社会)で卑しいまたは意地汚いままでよいのか悩みます。
「
8.恐れ
「恐れ」には「恐れを乗り越える」「恐れを克服する」「勇気をつかむ」があります。
「恐れを乗り越える」「恐れを克服する」はほぼ同義です。
異なる点は冒頭で主人公が抱いていた「恐れ」を「気にしなくなる」のが「乗り越える」で、「なくす」のが「克服する」になります。
「勇気をつかむ」
冒頭では「恐れ」を抱いて臆病な主人公がいます。
旅を経て主人公は「勇気」を試されるのです。あるときは「恐れ」に屈し、あるときは「恐れ」ながらも出来事を解決していきます。
「
9.生き残る
「生き残る」には「生き残りたい」という心も含みます。
「生き残る」
物語冒頭では死に瀕する状態に追い込まれ、もうここまでかという状況です。
旅を経て「生きる」とはなにか「死ぬ」とはなにかを知ります。
「
「生き残りたい」
物語冒頭は「死にたい」と追い込まれていた主人公が、
旅を経て精神的に強くなります。
「
10.無私
「無私」には「自己犠牲」「他愛」「英雄的行動」があります。
「自己犠牲」
物語冒頭で主人公はひじょうにわがままな人物です。
旅を経て「我が身可愛さ」が本当に正しいのか疑うようになります。
「
「他愛」
物語冒頭で主人公はひじょうに利己的な人物です。
旅を経て「他人の幸福」に目が行くようになります。
「
「英雄的行動」
物語冒頭で主人公はわんぱくな人物です。
旅を経て「世の中の平和と安寧を願う」ようになります。
「
最後に
今回は「伝えたいこと十種(No.800抄本)」について述べました。
ハリウッド脚本術『SAVE THE CAT!』に書かれています。
小説用に調整が必要ですが、物語であればどんなものにも応用できます。
Appleの「ブック」アプリやAmazonの『Kindle』でも購入できます。また紙の書籍がフィルムアート社様から発売されているので、持っておくとあとあと役立つでしょう。
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