1409.構文篇:キャラクターの誕生1(性別・年齢・職業・名前)

 今回からキャラクターの創り方を見ていきます。

 キャラクターでまず決めたいのが「性別」「年齢」「職業」そして「名前」です。

 学園ものなら同じ年齢のキャラクターばかりが集まってしまいます。また「ハーレム」にして男女比が大きく偏っている作品もあるのです。

 小説としては「性別」「年齢」のバランスはとれていたほうが多彩な物語世界を描けて有利になります。





キャラクターの誕生1(性別・年齢・職業・名前)


 小説はもちろん、マンガやアニメ、ドラマや映画、ゲームに至るまで。物語はつねに「主人公のキャラクター」で成り立っています。

「主人公のキャラクター」が立っていないと、受け手が感情移入しづらいのです。

 どんな主人公なのかを前もって設定しておけば、長所と欠点がはっきりとして「設定ミス」も事前に防げます。その他にも「主人公のキャラクター」を立てるために、外見や内面に特徴がどのくらいあればよいのかもわかるのです。

 一般的に、受け手が憧れる要素をたくさん盛り込みましょう。しかし憧れる要素だけで構成すると「主人公」が完全無欠のスーパーマンになってしまい、受け手は途端に醒めてしまうおそれもあるのです。




性別と年齢と職業

 主人公も含みますが、キャラクターを創るとき、最初に考えたいのは「性別」と「年齢」と「職業」です。

 基本的に主人公は読み手層と同性にしたほうがウケやすい。

 たとえば想定する読み手層が男性なら、主人公は「男性」にしましょう。

 また書き手であるあなたと同性にするほうが書きやすいはずです。

 つまり女性の書き手なら主人公は女性で、想定する読み手層も女性のほうが格段にウケやすい。

 まぁ男性向け官能小説を書いて大ヒットさせる女性の書き手もいらっしゃるので、絶対の法則ではありません。あくまでも「ウケやすい」というだけです。官能小説は基本的に女性を描くものらしいので、その意味では女性の書き手のほうが丁寧に書けるのでしょうか。

 また、主人公は想定する読み手層に近いほうがすんなり入り込めます。

 中高生向けのライトノベルでは、中高生の主人公がウケるのです。そこで「年齢」と「職業」を読み手層に合わせます。

 とはいえこれも絶対ではありません。大学生や社会人が主人公のライトノベルにも一定の需要があります。年上主人公のライトノベルは、読み手層の中高生が「こんな人物になりたいな」と憧れを抱けるのです。

 もし書き手であるあなた自身が中高生なら、主人公も中高生がよいでしょう。無理して大学生や社会人を主人公にすると、世間知らずが露呈してしまいます。大学生や社会人は理想だけでは生きていけないからです。いかに理想と現実の折り合いをつけて生活していくか。

 大学生なら学業に打ち込みたいところですが、生活費を稼ぐためには勉強時間を削ってアルバイトをしなければなりません。その切実さは体験した人にしかわからないのです。アルバイトを認めている高校もありますから、経験者ならアルバイトと学業の両立に腐心した主人公を書けます。このあたりも経験がものを言うのです。

 それでも中高生を主人公にした作品にはさまざまな大人が登場します。学校教師や両親兄弟などですね。書き手は現役の中高生か、過去に中高生だったはず。であればさまざまな教師に接してきたでしょう。また書き手にも両親や兄弟がいれば、その延長で家族は書けます。


 いちばん困るのは、身近にいない「職業」を書くときです。

 家族や親戚に「刑事」がいなければ、誰かの作品に出ている「刑事」を参考にせざるをえなくなります。

 現在は新型コロナウイルス感染症が流行していますので、現代劇を書きたいなら「医師」は不可欠です。しかし身近に「医師」がいないと書きようがありません。自ら患者となって「医師」と接触しないかぎり、「医師」の施術を書くのは難しい。ですが「医師」を書きたいがために新型コロナウイルス感染症に罹るわけにもいきません。命がけの取材になってしまいますからね。

 マンガ家の手塚治虫氏は医師免許を持っていました。だから代表作となった『ブラック・ジャック』はある程度のリアリティーを伴っていたのです。

 夏目漱石氏は教師の経験があったから『坊っちゃん』を書けました。

 他にも元刑事が書いた警察小説であったり、元官僚が書いた行政ものであったり。経験者が書く物語ほど真実味のある作品はありません。


 このように「性別」「年齢」「職業」は、どんなキャラクターでも真っ先に決めておきましょう。

 今の世の中では「男女平等」が叫ばれており、小説の登場人物も男女比を気にする方もいらっしゃいます。そればかりか「性的マイノリティー」に配慮してLGBTを出さなければウケないと主張する方もいらっしゃるのです。私としては別に「性的マイノリティー」は出さなくてもよいと思っています。とくに「異世界ファンタジー」なのに「性的マイノリティー」が登場するのもどうなのかと考えてしまうので。

「異世界ファンタジー」は少なくとも科学的な文明は現実世界より後れているため、「性的マイノリティー」に寛容な世界とは言い難いはずです。まぁスクウェア(現スクウェア・エニックス)『FINAL FANTASY』のような科学文明が発展した「異世界ファンタジー」であれば、いてもいいかなとは思いますが。

「性的マイノリティー」は、科学文明がある程度進んで「男女平等」の權利を主張している世界でないと主張できない面がありますからね。




キャラ立ては名前から

 なにもない状態から人物のキャラクターを立てるのは容易ではありません。

 具体的にどんな人物を創ればよいのか、さっぱりわからないからです。

 あなたはどんな人物を書きたいですか。

 おそらく「主人公最強」なキャラクターにしたいと思っていますよね。しかしそれだけだと、どう創ればよいのかわかりません。

 そこで「名前からキャラクターの特性を導く」か「キャラクターの特性から名前を導く」かしましょう。

「名前」は読み手が感情移入する際のキーワードにもなるのです。


 たとえば「古畑任三郎」という脚本家・三谷幸喜氏が生み出した警部補の「名前」。実は俳優の「時任三郎」氏の「名前」から拝借しています。時任三郎氏は当然「ときとう/さぶろう」と読みますが、かつて「とき/にんざぶろう」と相次いで誤読された経験があるのです。その逸話を伝え聞いた三谷幸喜氏が「にんざぶろう」という「名前」の主人公で物語を創ろうと考えました。そうして創り上げたのが倒叙型ミステリーもののテレビドラマ『警部補古畑任三郎』です。その結果「にんざぶろう」といえば「時任三郎」ではなく「古畑任三郎」の連想を新たに生み出しました。結果として「時任三郎」氏は「ときとう/さぶろう」と正しく読まれるようになったのです。主人公の「名前」ひとつで、ひとりの俳優の誤読をなくしてしまいました。まさに「名前」が「にんざぶろう」イコール「古畑任三郎」の感情移入を引き起こすキーワードとなったのです。


「名前とキャラクターの特性」がリンクしている作品の例として、マンガの堀越耕平氏『僕のヒーローアカデミア』があります。

 主人公は「緑谷みどりや出久いずく」で、無個性であったため幼馴染の爆豪勝己から「デク」と呼ばれていたのです。個性がなく、なんの役にも立たない「木偶でく」に引っかけています。しかしクラスメイトの麗日お茶子から「なんでもできる感じがする出来でく」と言われたのを受け入れ、ヒーロー名を「デク」にしたのです。「なんでもできる」は英語で「オールマイティー」、つまりNo.1ヒーロー「オールマイト」にちなんでいます。苗字の「緑谷」はヒーロースーツが「緑色」主体だからでしょう。最初からマンガだけでなくアニメも見据えたキャラクター創りだったわけですね。

 このように「名前」ひとつで特徴や個性といったものをキャラクターに反映できます。


 先に述べましたが「名前からキャラクターの特性を導く」か「キャラクターの特性から名前を導く」かです。

 また将来のアニメ化を見越しているなら「名前」は漢字だけでなく「読み」でも差別化できるようにしてください。漢字は明らかに違うのだけど、「読み」が近くて混同しやすいのではアニメに集中できませんからね。





最後に

 今回は「キャラクターの誕生1(性別・年齢・職業 ・名前)」について述べました。

 キャラクターを生み出すとき、真っ先に考えたいのが「性別」「年齢」「職業」です。

 可能であれば、X軸が「性別」、Y軸が「年齢」のマトリクスを作ってください。手薄だったり偏りがあったりする「性別」「年齢」座標を補完するきっかけとなります。

「名は体を表す」と言います。名前にはふさわしい能力や個性があるのです。名前が先でも能力・個性が先でもかまいません。「卵が先か鶏が先か」問題ですからね。



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