1320.物語篇:物語64.死ぬか生き延びるか
今回は「死ぬか生き延びるか」の物語です。
「サバイバル」「デス・ゲーム」「デッド・オア・アライブ」な作品で用いられる物語になります。
死なずに生き延びられるか、が大きなテーマです。
物語64.死ぬか生き延びるか
「生き残り」を懸けた過酷なサバイバル物語も人気がありますね。
たとえば乗っていた旅客機が墜落して、無人島にたどり着く。捜索隊が見つけてくれるまで、島で生き延びなければなりません。
たとえば突然「デス・ゲーム」に巻き込まれ、最後のひとりになるまで殺し合いをさせられる。
主人公についてまわるのは「死」か「生存」かの二者択一。
この状況は緊迫感が高いため、読み手を強く惹きつけます。
なにもないところで生き延びる
例示した「旅客機墜落でたどり着いた島で救助が来るまで生き延びる」物語は、たびたびドラマやゲームになって取り上げられる定番の物語でもあります。
人の手が入っていない無人島では、どんな動物がいるかわかりません。血吸いヒルがいたり狼や虎がいたりサソリや毒グモがいたりするかもしれません。
また食べ物も毒性のあるものが多ければちょっとしたトラップです。
バナナやココナツやヤシの実などがあれば安心ですが、キノコや野草しかなければ当たり外れをどう見分ければよいのか。肉が欲しくなっても牛や豚もいないでしょうし、仮にいたとしても狩猟道具すらありません。
そんな無人島に取り残されたら、たどり着いた人々は協力して道具を一から作り出して文明を築く以外にないのです。
まず島の全容を知らなければなりません。どのような地形の島なのか。どんな動植物がいるのか。それを調べて、あばら屋を建てる場所を定め、材料となる材木と道具を作り出さなければならないのです。
当然生き残っている人々はすべて善良とはいかないでしょう。悪さを企んで気の弱そうな人を脅したり殺したりしても不思議はありません。なにせお金がまったく通用しない世界ですから、富となりそうなのは食べ物や飲み水くらいしかないのです。
圧倒的な自然との戦い、一部の不良者との戦い。それらを制して人々は生き延びなければなりません。
これに近い設定としてはマンガの諫山創氏『進撃の巨人』や同じくマンガの稲垣理一郎氏&Boichi氏『Dr.STONE』がこのパターンに当てはまるでしょうか。
どちらも世界でわからないことが多く、人々は少しずつ文明を作り上げて外敵と戦わなければならないのです。
デッド・オア・アライブ
剣闘士や格闘技などで、まさに命を懸けた戦いを行なわなければならない物語もあります。
代表的なところでは映画のリドリー・スコット監督&ラッセル・クロウ主演『Gladiator』が挙げられるでしょう。
他にも死ぬか生き残るかの勝負をするという意味で、マンガの板垣恵介氏『グラップラー刃牙』、マンガの宮下あきら氏『魁!!男塾』のような「負ければ死」という状況での武術大会などは「デッド・オア・アライブ」に入りますね。
まぁ『魁!!男塾』は王大人が「死亡確認」しても、次の大会でしれっと復活しているのですけど。まぁ「ムダに熱いギャグマンガ」なのでよしとしましょう。
剣闘士は基本的に奴隷階級や戦士階級が務め、貴族階級が金を賭けて娯楽として楽しんでいます。
そうなると剣闘士として戦いながらも友情が生まれるのです。そして貴族階級を打ち倒して自由の身になろうとする一味が現れてもおかしくはありません。
まぁたいていの剣闘士は、最後まで勝ち残るつまり生き残れば報酬として自由の身になれるものですが。その場を利用して闘技場の運営者を殺害して逃亡する者も現れるでしょう。
他にも「決闘」という形で「デッド・オア・アライブ」が繰り広げられる物語もあります。
よく貴族の若者で頭に血がのぼって「決闘」を申し込む展開もありますよね。たいていはボロ負けして助命を願い出るヘタレな坊ちゃまたちなのですけど。
「決闘」といえばやはりアニメになったさいとうちほ氏&ビーパパス『少女革命ウテナ』を思い出す方も多いでしょう。アニメでは毎回「決闘」が行なわれ、ワクワク・ハラハラ・ドキドキした視聴者が続出しました。
デス・ゲーム
何者かに誘い込まれた主人公たちが、生還を果たすために「デス・ゲーム」を制さなければならない物語があります。
川原礫氏『ソードアート・オンライン』の「浮遊城アインクラッド篇」はまさにこのパターンですね。
マンガの甲斐谷忍氏『LIAR GAME』も、突然借金を背負わされて、金の奪い合いをする物語。命ではなく金のやりとり。「心理戦」がとても際立ち、マンガ界でも異彩を放っています。
金のやりとりといえばマンガの福本伸行氏『賭博黙示録カイジ』『アカギ〜闇に降り立った天才〜』のほうが有名かもしれません。
いずれにせよ強制的に参加させられて、命やお金をやりとりせざるをえなくなるのが「死ぬか生き延びるか」物語のひとつの特徴です。
最近ではこの手の物語を「デス・ゲーム」と呼びますね。
本来「デス・ゲーム」は「バトル・ロイヤル」ものを指します。
今回の「死ぬか生き延びるか」物語も「物語39.バトル・ロイヤル」とかぶる部分がありますが、基本的には「多数と協力しながら生き延びる」のがこちらの主眼です。遭難ものを書きたいなら活用したい物語の型となります。
『ソードアート・オンライン』も本来なら「物語39.バトル・ロイヤル」ではなく今回の「死ぬか生き延びるか」の物語です。一万人のプレイヤー全員がVRMMORPG「ソードアート・オンライン」で遭難したようなもの。協力して生き延びるために各階層をクリアしていくのです。
誰が最後まで生き残るのか。これが「バトル・ロイヤル」の物語です。
皆で生き延びるために協力する。これが「死ぬか生き延びるか」の物語です。
そう考えれば『ソードアート・オンライン』は本来「死ぬか生き延びるか」の物語だとわかりますよね。
最後に
今回は「死ぬか生き延びるか」について述べました。
とかく「バトル・ロイヤル」と混同しがちで、私自身も混同していました。
よくよく考えれば、最終的にひとりが勝ち残る話と、皆が協力して生き延びる話とでは物語はまったくの別ものですよね。
「デッド・オア・アライブ」「デス・ゲーム」も「物語39.バトル・ロイヤル」の範疇ですが、そんな物語の中でプレイヤー同士が手を組んで生き延びようとすれば「死ぬか生き延びるか」に変わります。
書き手としては「バトル・ロイヤル」と「死ぬか生き延びるか」を明確に区別して書けるようになりましょう。最終的にひとりが勝ち残る物語なのか、皆が生き延びるために協力する物語なのか。
そこに差が生じます。
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