1317.物語篇:物語61.チーム結成

 今回は「チーム」についてです。

「主人公最強」でもパーティーやチームを組むのはなぜでしょうか。

 引き立て役が必要だからです。





物語61.チーム結成


 小説とくにライトノベルでは、基本的に主人公はチームやパーティーを組みます。

 なんでもできる「主人公最強」「俺TUEEE」「チート」であっても、他人とチームを組むのが当たり前です。

 なぜでしょうか。




主人公がチームを組む

 どんな主人公でもチームで行動します。

 なぜなら「比較対象」がないと主人公の実力がわからないからです。

 どんなに「主人公最強」「俺TUEEE」「チート」の設定であっても、比較対象がなければ「強さ」を読み手に印象づけられません。

 たとえばゴブリン10人を相手に「無双」したとしても、主人公の「強さ」はさっぱり伝わらないのです。

 もし他のパーティー・メンバーがその間に3人しか殺していなければ、「主人公強い!!」となりますよね。このように比較対象があると「強さ」を伝えやすいのです。

 これを実際に映像にした有名なアニメがあります。富野由悠季氏『機動戦士ガンダム』です。

 第33話『コンスコン強襲』にて、ホワイトベースは12機のリックドムの強襲を受けます。それを主人公アムロ・レイが3分で9機倒すなかでGファイター2機とガンキャノンはそれぞれ1機ずつ倒しています。つまりアムロは他のメンバーより9倍強いわけです。

 これ、もしガンダムだけが出撃して12機すべて撃破しても「はい、そうですか」で終わってしまいます。他のメンバーが3分で1機ずつ倒すのがやっとだからこそ、「9機も倒したアムロってスゴいや!!」となるわけです。

 見事に富野由悠季氏の術中にハマっています。

 これが「主人公最強」だからこそ、チームを組む理由です。

 主人公の「強さ」を端的に表したいのなら、同じことを他人と競わせましょう。

 さらに磨きがかかったのが富野由悠季氏『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』のアムロです。ジェガンがギラ・ドーガと倒し倒されしているときに、クェス・パラヤの乗る「α・アジール」が戦場でロンド・ベル隊のMSを次々と撃破していきます。そこに登場するのがアムロです。クェスの攻撃をさらりとかわしてシャアの元へ行こうとします。そこにギュネイ・ガスがヤクト・ドーガで立ちはだかりますが瞬殺です。それまでギュネイはロンド・ベル隊のエース・パイロットであるケーラ・スゥをひとひねりしてケーラを捕縛。ヤクト・ドーガの手で握って、アムロの乗るνガンダムに武装解除を迫ります。つまりオールドタイプのエース・パイロットであるケーラを瞬時に行動不能にさせる強化人間のギュネイは、ニュータイプのアムロの敵ではなかったのです。これでアムロとνガンダムがどれほど強いのかを観客に伝えました。富野由悠季氏の見せ方の巧みさが際立つ作品です。

 ですが、たいていの主人公はそこまで強くありません。弱点を持っていて、そこを補強する人材を集めてチームを組むのです。

 主人公が槍騎士なら、近接に強い剣士と戦士は欲しいし、魔法が使えなければ魔法使いと精霊使いと神官も欲しい。宝箱や隠し扉を開けたければ盗賊も必要。

 こうやって「主人公にはできないものを、多人数に割り振ってバランスをとる」のが「主人公最強」ではない人物がチームつまりパーティーを作るもとです。




どんな役割が必要か

「主人公最強」は基本的に「最強の魔法戦士」であることが多いですよね。

 剣も魔法も一級品。呪文を詠唱しながら剣を振るって数を減らしていきます。

 これならひとりでも物語が進められそう。と考えがちですが、意外と盲点もあるんですよね。

 まず情報に疎い点。主人公があまりにも強さを求めるゆえ、情報収集しようにも誰も話してくれない。さまざまな知識を集めている魔法使いや賢者が必要になります。また盗賊ギルドがあって情報を一手に担っているのなら盗賊がいないと情報は手に入りません。

 宝箱や隠し扉の発見には手先の器用さや目端の利く盗賊が必要です。私の小説では賢者にやらせていますけどね。だって犯罪者である盗賊を勇者パーティー・メンバーにするは少し変かなと思いまして。

 定番の勇者のように片手剣と盾、プレートアーマーにフルフェイスヘルメットを装備していたら、軽快に動けません。となれば軽装備で足の早いキャラにも需要があります。たいていエルフの精霊使いが担うのですが、盗賊がいるのなら盗賊が割り当てられる場合もあるのです。しかし盗賊は基本的に相手の背後をとって戦うのが主体ですから、やはり前衛を任せられる戦士は必要不可欠です。だからエルフの精霊使いがいると、前衛を任せられる重戦士のドワーフは重宝がられます。

 つまり「主人公最強」でもチームやパーティーは組むわけです。

 私が構想している「伝説」シリーズでは、戦士のトルーズ、剣士のレフォア、重戦士のグラーフ、魔術師のカセリア、神官のエイシャ、賢者のナジャフの六名がチームを組んでいます。全員ヒューマンです。いちおう「謎の軍師」の指示で戦士のトルーズをリーダーにしてあります。決定権があるだけで情報や戦術はカセリアとナジャフが提案しているのです。盗賊がいないパーティーで、どうやって事情通を作るかに苦労しました。




役割が決まっているから追放される

「追放」からの「ざまぁ」ものが生まれる理由は、パーティー・メンバーそれぞれの役割が明確に決まっているからです。

 もし柔軟なチーム編成ができるのであれば「追放」などせず「控え」でよい。なにも「追放」までする必要はありません。

 こう書いてきて気づいたのですが、「勇者パーティー」が出てくる物語で「控え」扱いするような作品ってありますかね? たとえばレベルの高い魔術師が加わったら、それまでの魔術師は「控え」や「二軍」にまわる。剣術にすぐれた戦士が加わったらそれまでの戦士は「控え」や「二軍」でとっておく。それだけでなく中心にいるべき「勇者」そのものにも「控え」や「二軍」がいるなんてことになったら。

 けっこう面白い物語になるかもしれませんね。

 とくに「勇者」の「控え」や「二軍」なんて、それだけても物語が作れてしまいます。

 たとえば「勇者」の「控え」や「二軍」が、他に「控え」や「二軍」にまわった者たちを集めて、「勇者パーティー」より先に魔王を倒してしまうのです。

「ざまぁ」とは少し変わった「見返し」物語になるかもしれません。

「ざまぁ」に飽きたら試してみたい物語の形だと思います。

「勇者パーティー」という代物が「控え」や「二軍」があるような体系化した組織であってもよいはずです。

 というより国や世界を脅かす魔王と戦うのに、そのすべてを勇者パーティー六人に押しつけるのが間違っています。

 必ずバックアップを用意して、もしものときに差し替えがきく仕組みであれば、「勇者パーティー」になにかあっても万全です。

 たとえ世界一の神官が「犠牲」の呪文で強大な相手を自らの命と引き換えに倒したとすれば。世界で二番目だった神官が世界一に繰り上がるのですから、そういう人物を「バックアップ」で用意しておくべきですよね。世界一の神官を失ってから代わりを探し始めるよりも早く次が決まります。

 これが「勇者」システムの正しいあり方ではないでしょうか。

 まぁ本来なら「勇者」を中心とした少数のパーティーだけに世界の命運を賭けず、複数の「勇者」パーティーを同時に展開して魔物退治しながら魔王に迫る仕組みにするべきなのです。そのほうが効率がよいと思いませんか。





最後に

 今回は「物語61.チーム結成」について述べました。

 役割が異なるからチームを組みます。また「主人公最強」だからこそパーティーを編成するのです。そうしなければ主人公が目立ちませんからね。

 パーティー・メンバーはつねに世界一の腕前かもしれませんが、その人物が倒れてしまったら、後任はどうやって探せばよいのでしょうか。

 世界観にもよりますが、後任のめぼしい人材を探す旅をするよりも、すでに出会っている人物を引き入れたほうが自然ではないでしょうか。

「控え」や「二軍」として予備を用意しておけば、その点では万全と言えるでしょう。

 一度「追放」した人物に「ざまぁ」されないためには、そのような仕組みづくりが必要です。



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