1301.物語篇:物語45.攻略と生存
今回はゲーム系の「異世界ファンタジー」についてです。
最近レベルやスキルや経験値などを用いた作品が多い。
ですがその本質はゲームの攻略と生存にあります。
物語45.攻略と生存
ゲーム系の「異世界ファンタジー」は、クエストを「攻略」して「生存」を目指す物語です。
クエストの「攻略」はたいていパーティーを組んで行ないます。しかし多くの場合最初のうちはソロプレイヤーとして立ちまわるのです。
しかしゲーム系「異世界ファンタジー」においてソロプレイヤーで生き残るだけでも人の目を惹きますから、パーティーに誘われる機会が多くなります。
生存を目指して
主人公はとにかく必死です。ですが「本当に死ぬつもりはありません」。
「生き残るのに必死」だと多少の語弊があるかもしれない。ですが死にたがる主人公に魅力を感じる読み手はそう多くはないはずです。
たとえどんな物語であっても、自殺志願者が主人公で、結果的に自殺してしまうような作品はあってはならない。それはただの「自殺指南書」でしかないからです。
私たちは「生き残るのに必死」であるべきで、物語にも生存の術を求めています。
こうしたからこそ「生き残れた」というケーススタディーこそが求められる物語なのです。
自殺志願者が自殺する物語なんて、「プロ」になっただけでも書けません。よほどの大御所にならないかぎり、まず担当編集さんが許可しない。わざわざ売れない作品を発行するほど出版社に資金も人力もありません。
読み手の中には「バッドエンド」を好む方もいらっしゃいます。しかし「ハッピーエンド」を求める方のほうがはるかに多いのです。そこで妥協して「メリーバッドエンド」略して「メリバ」がひとつのブームとなった時期もあります。「オープン・エンデッド」つまり「開かれた結末」であり、受け手の解釈によって幸福と不幸が入れ替わる結末です。解釈を読み手任せにできるため、「バッドエンド」に見えてもわずかな希望を感じて「幸福な終わり方」だと思う方もいますし、ほぼ全滅して主人公だけが残ってしまったら「不幸な終わり方」だと思う方もいます。
いずれにせよ、主人公が自殺志願者だと、どうしても暗い話題しか出てきません。
なぜ死のうと思ったのか。それを避けて通れないからです。
「死にたがり」の物語はまずありえない。あってもごく少数の例外がある程度でしょう。よほどの大御所でなければ「荒唐無稽」と断ぜられるでしょう。
すべての登場人物が「生き残りたい」と願っているのも変な話です。義憤を晴らすためなら刺し違えてもかまわない。打ち首獄門になってもかまわない。そんな人物がいたっておかしくはないのです。
ですが、主人公がそれでは困ります。刺し違えてでも殺してやる、なんて思っている時点で物語は重くなるのです。
最近、重い物語がウケなくなりました。軽いノリのライトノベルをたくさん読んでいる方が多いから、小説投稿サイトでは「軽いノリ」の作品が集まるのです。
重い物語は文学界隈では「深みがある」とみなされて選考で有利になります。芥川龍之介賞の又吉直樹氏『火花』も、直木三十五賞の恩田陸氏『蜜蜂と遠雷』も「重い物語」でしたから。軽いノリの村上春樹氏の作品が芥川龍之介賞を獲れなかったのも、そのせいかもしれませんね。
だからライトノベルであれば、特段の理由がないかぎり「生存」を目指してください。
たとえどんなに追い込まれても、つねに「生き残るのに必死」であるべきです。
命知らずで無鉄砲だったとしても、それはつねに「生き残るのに必死」だから受け入れられるのです。本当に「命なんて惜しくもない」と思っている人物が主人公でいられるほど「ライトノベル」は重くありません。
攻略は計画的に
ゲーム系「異世界ファンタジー」ではなにがしかのクエストが主人公たちに与えられます。これをなんの準備もなく遂行しようとするのでは失敗して当たり前です。
主人公やパーティーは準備万端で怠りなく、必ず勝てる戦術を持たせましょう。
まずクエストの概要を知り、必要となりそうなアイテムや魔法や知識をかき集める。そうしてクエストに出発して任務を果たそうとするのです。
主人公パーティーと対をなすライバルパーティーと競ってもかまいませんが、準備だけはけっして疎かにしてはなりません。いくらライバルパーティーが先行しようと、実力頼みではまずクエストを解決できないからです。
回復薬のほか、炎のブレスを吐くドラゴンなら火傷薬だって必要ですし、酸のブレスを吐くドラゴンならアルカリ性の中和薬があると安心ではないでしょうか。まぁ異世界に「酸性」「アルカリ性」の概念があるかはわかりませんが。
また炎のドラゴンなら吹雪の魔法には弱いでしょう。
クエストを達成するには相手を倒すだけにとらわれず、味方の生存率を高める方策も必要です。攻略メンバーは使い捨てではいけません。あくまでもパーティーとして全員の無事に配慮して損害なしで勝ちたいところです。仲間がいるなら、その活躍にこだわりましょう。
川原礫氏『ソードアート・オンライン』なら一万人のプレイヤーがそれぞれソロで戦っていたら各個撃破されるのがオチです。そこでゲーム内一の血盟騎士団が発足して、数の力で各階層を攻略していきます。まぁ団長のヒースクリフにはある秘密がありましたけどね。
ゲーム系「異世界ファンタジー」では、いかに効率よくクエストを「攻略」していくのかが問われます。
主人公には犠牲者を最小限にする工夫が欲しい。
ソロプレイヤーとして孤高の戦士を気どるのも、それはそれでありかもしれませんが、どちらかといえば「主人公最強」で読ませたい物語です。
こちらの「攻略と生存」の物語では頭脳プレーでクエストを「攻略」させましょう。
「主人公最強」も読み手の願望ですが、「攻略と生存」の物語は知恵や工夫が鍵を握ります。どんな手段を思いつくのか。たとえ主人公が非力でも、頭脳はずば抜けているくらいがちょうどよいのです。
もし運だけで達成してしまったら興醒めもよいところ。「攻略と生存」の物語は実力で達成するべきで、運に頼るのではなにも「攻略」にする必要がありません。
「主人公最強」でも「運頼み」でも駄目です。あくまでも「頭脳」で解決するから「攻略と生存」の物語は面白くなります。
最後に
今回は「物語45.攻略と生存」について述べました。
「攻略」に必要なのは「主人公最強」でも「運頼み」でもいけません。「頭脳」で勝負してください。どんな攻略手段を思いつくかで物語の面白さは決まります。
けっして腕力や運に頼らないでください。理論の裏付けがある「攻略手段」を思いつくかどうか。
書き手の「知識」や「知恵」が要求されます。
それだけ「攻略と生存」の物語は難しいのです。
ですので多くの書き手は「主人公最強」と混ぜて「攻略と生存」の物語を演出しようとします。でもそれは邪道です。王道はあくまでも「頭脳」勝負。腕力がなかろうと運がなかろうとなんとかしてしまうだけの「頭脳」が必要です。
どんな「解決方法」をとりうるかは、書き手の「頭脳」を出ません。書き手の「知識」や「知恵」以上の「解決方法」なんて思いつくはずがないのです。
「攻略と生存」の物語を書きたければ、とにかく勉強してください。なにをすればどんな影響が発生するのか。どんな「解決方法」なら確実に解決できるのか。
すべて書き手の「頭脳」にかかっています。
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