1294.物語篇:ピクシブ文芸に捧ぐ
あまり盛況とは言えなかった小説投稿サイト『ピクシブ文芸』。
小説賞も一回しか開催されず、ほとんど誰にも知られることなく幕を下ろします。
そもそもお絵かきSNSの『oixiv』が小説を募集しても、集まるのは二次創作ばかりなんですよね。
一次創作専門の『ピクシブ文芸』にも二次創作がランクインするくらいなので、無法状態もよいところでした。
これからは『oixiv小説』に一本化されるとのことですので、本コラムもそちらで継続する予定でいます。
ピクシブ文芸に捧ぐ
本「小説の書き方」コラムは2017年4月17日に『ピクシブ文芸』にて毎日連載を開始致しました。
2020年7月31日にピクシブ文芸運営よりアナウンスがありました。
2021年4月30日をもって『ピクシブ文芸』サービスが終了するそうです。
幸いなことに、ピクシブ文芸に掲載した作品は『pixiv小説』に統合される形で残るそうです。
そんな『ピクシブ文芸』に対して思うところを書きたいと思います。
なぜやらなかったのか
『ピクシブ文芸』はお絵かきSNS『pixiv』の姉妹サイトとして開設され、一次創作小説の投稿先となっていました。
私も『pixiv』利用者に「小説の書き方」を知ってもらい、すぐれた一次創作であふれることを期待していたのです。
しかし『ピクシブ文芸』には致命的な欠点がありました。
「検索機能がなかった」「サイトがいっこうに更新されなかった」「小説賞・新人賞が一回しか開催されなかった」「二次創作も多数掲載されていた」のです。
検索機能がなかった
まず「検索機能がなかった」について。
そもそも一次創作を読みたいとして、他の小説投稿サイトなら「検索機能」を利用してキーワードやタグなどで検索してリストアップされた作品の中から選びますよね。
しかし『ピクシブ文芸』には「検索機能」がついていなかったのです。
これでは読みたい小説を探す手段がありません。こんなに不親切で使い勝手が悪い『小説投稿サイト』は類を見ないでしょう。最低限ジャンルとキーワード・タグを指定して検索できる機能は不可欠でした。
検索機能が充実している『小説家になろう』『エブリスタ』『カクヨム』などと、システム面で大きく見劣りしていたのです。
なぜ『ピクシブ文芸』運営は「検索機能」を作らなかったのでしょうか。
元となる『pixiv』には検索機能があるにもかかわらず。
いちおう二次創作も投稿可能な『pixiv小説』には『pixiv』の検索機能がそのまま利用できるため、そちらで検索すれば目的の作品にはたどり着けます。しかしそれでは『ピクシブ文芸』の存在意義がありませんよね。
ランキングとジャンル別新作順だけでは読みたい作品なんて探せっこない。この利便性の悪さは致命的でした。
一次創作専門の『ピクシブ文芸』は単独で機能してこそ存在意義があるわけで、『pixiv小説』のように二次創作まで検索で引っかかってはならないのです。
この『小説の書き方』コラムにおいても「検索機能」のなさを解決しようと「目次リンク」を作ってあがいてみましたが、それでもなかなか過去回を読んでいただける状態にはありませんでした。それで『小説家になろう』『カクヨム』へと進出していったわけですが。
すべての機能が『pixiv小説』に移管されるとのことですので、本コラムも削除されず、継続してお読みいただけると存じます。というより、継続しなかったら再投稿でもしますよ、と考えております。
サイトがいっさい更新されなかった
次の問題点は『ピクシブ文芸』サイトが、サービス開始以来目立った更新をしてこなかった点にあります。これは「検索機能」がつかなかった原因でもあります。
あれだけ大々的に立ち上げを発表していながら、これといったサイトの更新も行なわれず、2016年の情報が今でも流されているのです。
これでは傍から見て「やる気がないんじゃないか」と疑われてしまいます。
サイトのレイアウトも変わらず、構成も変わらず、古い情報をただ垂れ流すだけ。これでご新規さんが参入してくれるはずもありません。
なぜサイトの更新を怠ったのでしょうか。「やる気がない」ように見られるのが本意なのでしょうか。
お絵かきSNSで味を占めた『pixiv』が運営するのだから、多くのユーザーがやってきてくれるとたかをくくっていたのではありませんか。
小説投稿サイトは片手間で運営できるほど単純なものではないのです。
SNSとは異なったプラットフォームが必要であり、読まれやすさも念頭に置いた構成にするべきでした。
だからこそサイトはどんどんリニューアルして機能を大幅に増強していく必要がありました。
それなのにまったくサイトがリニューアルされなかったのです。
しかも使いやすいサイトとして定評があるならともかく、「検索機能がない」など使いづらいサイトをよくもここまで放置できたものだと思います。
これから『pixiv小説』に一本化されることで、『pixiv』クラスの使いやすいサイトに生まれ変わることを期待します。
小説賞・新人賞が一回しか開催されなかった
さらなる問題点は「小説賞・新人賞」についてです。
幻冬舎主催、テレビ朝日協賛の『ピクシブ文芸大賞』が2016年10月27日から2017年3月31日まで応募され、大賞が決まったのは2017年10月31日です。締め切りから決定までに7か月を要しています。大賞作である小林大輝氏『Q&A』は2018年3月8日に幻冬舎より単行本が発売され、同年3月24日にテレビドラマとしてテレビ朝日で放送されました。
そして「ピクシブ文芸大賞」はこの一回限りの開催であとが続きませんでした。
初回だからというハンデがあったとしても、このスピード感のなさは致命的です。
早い方なら応募してから大賞に選ばれるまで丸一年、単行本になるまでさらに五か月もかかっています。
この遅さが災いして採算のとれなさは疑う余地もありません。
もし幻冬舎が大ヒット作を大賞にしていれば、第二回もスムーズに開催されていたはずです。しかし幻冬舎はそれほど人気の出ない作品を大賞に選んでしまいました。もちろんテレビドラマ化が目的のひとつでしたから、投稿数の多かった「異世界ファンタジー」は論外だったのでしょう。しかしそれで自らの首を絞めてしまったところがあります。
第二回は幻冬舎のみででも早期に開催するべきであり、アナウンスがいっさいなかった。それで多くの書き手は『ピクシブ文芸』に見切りをつけてしまったのです。
他の小説投稿サイトをご覧なさい。ひとつの小説賞は毎年開催されており、毎年腕を競えるのです。四年も音沙汰がない小説投稿サイトなど存在しないのです。
これは負けるべくして負けた、としか考えられません。
二次創作も多数掲載されていた
『ピクシブ文芸』は一次創作の場として運営されている「はず」でした。
しかし実際には二次創作がランキング上位の多数を占め、一次創作はなかなか目立てません。しかも検索機能がないので、新しい作品を投稿しても誰にも読まれないのです。
だから二次創作がランキング上位を占めてしまいました。
『ピクシブ文芸』に二次創作を排除する動きが見られなかったことも、一次創作者が逃げてしまった原因のひとつです。
これからは『pixiv小説』に一本化されるので、ますます二次創作に押されて一次創作は廃れていくでしょう。今のままでは一次創作者を取り戻せません。
逃した魚は大きかったのです。
最後に
今回は『ピクシブ文芸に捧ぐ』について述べました。
『ピクシブ文芸』を利用し始めてから四年近く経ちますが、いっこうに変化しなかった小説投稿サイトでした。
そして誰にも知られず、ひっそりと消えていくであろう小説投稿サイトでもあります。
『pixiv』はこれを機に「ユーザーが求めているものはなにか」再考していただきたい。毎日新しい情報や企画、連載や新作が読める。それこそ小説投稿サイトの存在意義のはずです。
この四年間でまったく進化しなかったガラパゴス。それが『ピクシブ文芸』でした。
そして来年のサービス終了まで変わらずに終えるのでしょう。
小説投稿サイトとして最初に『ピクシブ文芸』を選んだことを正直後悔しています。
本コラムの第一回ページビューは2100にのぼります。もし検索機能がついていたら、もっと伸ばせたはずです。
『pixiv小説』に統合される頃まで連載は続かないでしょうが、『ピクシブ文芸』の徒花としての連載にしたいと考えています。
結局『ピクシブ文芸』では一本も小説を連載できませんでしたね。
今から『就業の霧、地を治む』の連載を始めてももう遅い。まぁタイミングが悪かったのでしょう。
『ピクシブ文芸』様、今までありがとうございました。
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