1268.物語篇:物語13.道具と活用

 今回は「道具と活用」の物語です。

 さまざまな道具が現れては、それを使って物語を進めていく。

 そんな物語は「剣と魔法のファンタジー」の原点にも見られます。





物語13.道具と活用


 稀に世界を激変させられる道具アイテムが主人公のもとへやってきます。

 主人公はそれをどのように使うのか。また使わないのか。はたまた破壊するのか。

 世界の命運は主人公の意志ひとつで決まります。




指輪物語

 言わずと知れた「剣と魔法のファンタジー」の始祖J.R.R,トールキン氏『指輪物語』は、魔王の力の源泉である「一つの指輪」を主人公フロドが手にするところから始まります。そこで主人公に課せられたミッションが「指輪の破壊」です。

 魔王サウロンの力の源泉を壊せば、世界は平和を取り戻せます。

 そのために、フロドは仲間とともに「指輪の破壊」の旅に出るのです。

「剣と魔法のファンタジー」の古典であり原点である『指輪物語』は、「道具アイテム」を巡る冒険の旅を描いています。

 その旅がたまたま「剣と魔法のファンタジー」世界であるだけです。本質はあくまでも「指輪を破壊する」という「道具アイテム」を焦点にした物語になります。

 世界を左右する「道具アイテム」は、その存在自体がとても重い。多くの命と人生が犠牲になり、「道具アイテム」の重みは物語を進めるほど強まります。

 だからこそタイトルが『指輪物語ロード・オブ・ザ・リング』なのです。




魔法戦士リウイ ファーラムの剣

 次は水野良氏『魔法戦士リウイ ファーラムの剣』シリーズについてです。

 これは題名が物語のほとんどを説明しています。

 まずは前日譚である『魔法戦士リウイ』から説明しましょう。

 大国オーファンの国王リジャールの庶子で主人公の「リウイ」。彼は養父の宮廷魔術師“偉大なる”カーウェスから魔術師としての修練を積まされます。しかしリウイ本人は肉体を鍛えあげるほうが性に合っているのです。だから魔術の勉強もそこそこに、筋肉トレーニングを欠かしません。

 そんなリウイがいつものように酒場を訪れると、女性三人組が男性たちに絡まれているのを見つけます。ケンカ好きでもあるリウイは割って入り、男性たちを相手に大暴れするのです。これを機にリウイは「冒険者」の存在を知り、冒険の旅に心を馳せます。

 翌日女性三人組が現れ、司祭のメリッサは「リウイが勇者だ」と信託を受けたので一緒に冒険の旅をしてほしいと頼まれるのです。

 初めての冒険で魔術師の命でもあるスタッフと呼ばれる「杖」でゴブリンの大群を殴りつけて折ってしまいます。折れた「杖」の代わりを作るためにエルフの住む森へ行くことになったリウイたちは、エルフに捕まえられるのです。リウイの同僚であるアイラから「妖魔の呼笛」をもらっていたことを思い出したリウイは、それを鳴らしてエルフの天敵である妖魔を呼び出して村を混乱させます。そしてリウイたちは妖魔を撃退してみせてエルフたちに感謝され、首尾よく「杖」の材料を手にして帰還します。

『魔法戦士リウイ』には鍵を握る「道具アイテム」が数多く現われるのです。

 そして『魔法戦士リウイ ファーラムの剣』に話は移ります。

 そもそもリウイたちはなぜ「ファーラムの剣」を探し求めるのでしょうか。

 それは魔精霊アトンの復活が予言され、それを倒すには「ファーラムの剣」を用いなければならないとされていたからです。つまり最初から重要な鍵を握る「道具アイテム」の存在を認識していました。だからこそ「ファーラムの剣」を探し出す密命を帯びての冒険の旅へと出かけるのです。

 その中では「ロードス島」にも上陸し、パーンとディードリットに出会うというコラボレーションもしています。ですがパーンの武具は「ファーラムの剣」ではありませんでした。大陸へ戻り、再び諸国を巡りますがなかなか見つかりません。しかし意外なところから「ファーラムの剣」がもたらされます。

 魔術師ギルドへ留学生としてやってきたときリウイたちが護衛を務めたエリスことエリスティアが、ラムリアース王国の秘宝「ファーラムの剣」をリウイへ託しに来たのです。

「ファーラムの剣」はなぜ隠匿されていたのか。それは「ファーラムの剣」が「魔法戦士」に魔精霊アトンへ対抗できるだけの実力を身につけさせる「試しの剣」だったからです。並みの魔術師や戦士では試練に耐えられません。魔術師と剣士として一定以上鍛えられていたリウイが「魔法戦士」としての素養を持っていました。「ファーラムの剣」の試練を乗り越えられると判断したエリスティアが、世界の命運をリウイに託したのです。

道具アイテム」を巡る冒険と、それを活かすための試練、そして「道具アイテム」を最大限に発揮して「対になる存在」魔精霊アトンを倒す。

 これほど「道具アイテム」を活かしたライトノベルは少ないと思います。

『魔法戦士リウイ』はコメディー要素が強く、『魔法戦士リウイ ファーラムの剣』はシリアス路線を走っている。当初連載は『ファーラムの剣』が二巻先行して発売されましたが、その後『魔法戦士リウイ』が連載を開始します。その完結を待って『ファーラムの剣』の連載が再開されたのです。

『魔法戦士リウイ』で主人公パーティーへの愛着を植えつけて、『ファーラムの剣』を楽しく読めるように配慮した。水野良氏の軌道修正能力にも賛辞を贈りたいですね。




ドラえもん

道具アイテム」を「活用」する物語はなにも「剣と魔法のファンタジー」だけのものではありません。

 その代表例がマンガの藤子・F・不二雄氏『ドラえもん』です。

 ぐうたらで勉強に手を抜く少年・野比のび太は、ある日机の引き出しから飛び出してきた青いタヌキ……もとい猫型ロボットのドラえもんと出会います。

 二十二世紀からやってきたドラえもんはさまざまな「ひみつ道具」をのび太に与えて、勉強してくれるように仕向けますが、のび太は遊びを楽しむために使うのです。

『ドラえもん』は毎回斬新な「道具アイテム」が登場し、物語を楽しくさせます。同じく藤子・F・不二雄氏『キテレツ大百科』もそうなのですが、「よくこんな道具アイテムを思いつくな」と、その発想力は師匠である手塚治虫氏に負けず劣らずのレベルです。とくに「ひみつ道具」や「キテレツ斎様の発明品」のバリエーションは連載中ほぼ無限に生まれています。中には何度も「活用」する「ひみつ道具」もあります。「どこでもドア」「タケコプター」「タイムマシン」は使用頻度の高い「ひみつ道具」です。「地球破壊爆弾」や「もしもボックス」「どくさいスイッチ」など、あまりにも危険な「ひみつ道具」もさらっと出します。しかしこれらの危険な「ひみつ道具」にもオチがついており、読み物としてとても楽しめるのです。

道具アイテム」を「活用」する物語を作りたいなら、『ドラえもん』はバイブルとなります。

 これほど「道具アイテム」が使い倒された作品は類を見ません。

 どんな「道具アイテム」があると便利かな。という視点が欠かせないのです。それを「すこしふしぎ」な作品として読ませたのが『ドラえもん』。

 藤子・F・不二雄氏ほどの発想力は望めないかもしれませんが、その「ひみつ道具」の発想を借りてくるのは「あり」でしょう。もちろん名称もそのままではただのパクリです。機能だけを借りてきて、名称や形態は変えてみる。その程度でもオリジナリティーはじゅうぶんに生み出せますよ。





最後に

 今回は「物語13.道具と活用」について述べました。

 日常を一変させる「道具アイテム」と、それをどのように「活用」した物語にするかを考えることで、誰もが楽しめるエンターテインメント性を備えられます。

 古典から学べるものはとても多いのです。

『指輪物語』も『ドラえもん』も『魔法戦士リウイ』も。すでに古典の域に入っている作品たちですが、「道具アイテム」をどう活かせば物語が面白くなるのかを追求しています。

 現在入手が簡単なのは「第0巻」を発売した『ドラえもん』ですね。『魔法戦士リウイ』『魔法戦士リウイ ファーラムの剣』は電子書籍なら簡単に手に入りますので、興味を持たれた方は一読すると勉強になりますよ。



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