1251.学習篇:スランプは最大のチャンス

 今回は「スランプ」についてです。

「スランプ」は「マンネリ」から生まれます。同じような文章を書いているから、つい「マンネリ」に陥り「スランプ」を引き起こすのです。

「スランプ」を打破したければ「マンネリ」を解消しましょう。





スランプは最大のチャンス


 小説を書いていると、どうしても避けられないのが「スランプ」です。

 どう書いても駄目なように感じる。思いどおりな比喩が見出だせない。斬新な物語の展開を思いつけない。

 人はなぜ「スランプ」に陥るのでしょうか。




スランプはマンネリを打破したい心の表れ

「スランプ」はとても簡単に言い表せます。

 標題でも書きましたが、スランプは「マンネリを打破したい心の表れ」です。

 毎日同じようなことを繰り返していると、脳が惰性に陥って空転するようになります。

 この「空転した」状態が「スランプ」なのです。

 だからなにをやっても「これじゃ駄目だ」「こんなのはありきたりだ」「もっと驚かせるようなものにしないと」と感じます。

 こう感じるようになったら、今自分は「スランプ」にハマっているんだと自覚しましょう。

 毎日続けてきたものに疑問が湧く。繰り返していることが継続できなくなる。

 いずれも「スランプ」に陥っているからです。

 脳は「マンネリ」に陥ると、これまでの惰性だけで物事が処理できるようになります。

 たとえばパソコンでタッチタイピング(昔はブラインドタッチと呼んでいましたが視覚障害者への差別用語だとして言葉が改められています)を思い出してください。

 最初はどの位置にどのキーがあるのかを、キーボードの表面を見ながら打ち込んでいたはずです。それが少しずつキーボードを見ずに打ち込めるようになっていきます。慣れてくると、頭に言葉が浮かんだ瞬間、指が勝手にキーを叩いているはずです。これがタッチタイピングの原理になります。意外と簡単な原理です。

 しかし慣れが進んでくると「マンネリ」となり、つい「ここになんのキーがあったっけ?」と疑問に思う時期が訪れます。でも実際に文字を入力しているときは、なにも考えずにスラスラと入力できてしまうのです。この「ここになんのキーがあったっけ?」と思った時期が「スランプ」になります。つまり迷いが生じてしまうのです。

 一度迷いが生じると、不安にとらわれてしまいます。

 ここで無理に思い出そうとしても、なかなか思い出せません。頭の中で記憶が「空転して」しまうからです。

「マンネリ」が「不安」や「迷い」を生じさせます。  

 こればかりは、どんなに人物が出来ていても発病してしまうものです。




マンネリを打破する

「不安」や「迷い」を取り除きたいなら、「マンネリ」を打破しなければなりません。

「マンネリ」は同じことを何回も繰り返しているうちに誰もが陥ります。

 ですが、日々新しい物事に挑戦していれば「マンネリ」はやってきません。

 古代中国・殷王朝の開祖湯王は、毎朝使う洗面器に「苟日新、日日新、又日新( まことひびに新たに、 日々ひびひびに新たにして、又たひびに新たなり)」と刻んでいたそうです。(儒教の「四書五経」のひとつ『大学』に収録されている逸話です)。

「毎日が新しい日なのだと、心機一転今日も一日頑張ろう」と解釈すればよいでしょうか。

 殷は紀元前千七百年頃に興ったとされていますので、実に三千七百年も前の話です。もしこれが作り話でも、『大学』は紀元前五百年には存在していましたので二千五百年前には確実に存在していました。

 はるか昔から「マンネリ」は戒められていたのです。

「マンネリ」を打破したければ「毎日が新しい日なのだ」と認識しましょう。

 そして日々見るもの触れるものを新鮮な気持ちで眺める心が必要です。

 毎日使っている茶碗に小さな傷がついているのを見つける、という「新しい発見」も「マンネリ」打破には有効です。

 あなたが毎日外出しているのなら、見るものすべてに好奇心を持ってください。

「あぁ、あれはカーブミラーだな」とか「トヨタのプリウスが走っているな」とか。

 記憶力だけで物事を見てはなりません。

「あのカーブミラーって、小さくて歪んでいるから見えづらいんじゃないかな」とか「今走っていったあの自動車はトヨタのプリウスだっけ。プラグインハイブリッドってどういうものかな」とか。

 知っているはずのものを見ると記憶力つまり惰性や「マンネリ」が働いてしまいます。

 そこからいかに「知らないもの」を見つけて新しく考え始めるのかが重要です。

「カーブミラー」なんて小さいし歪んでいるから障害物があっても判別しづらいな、と私は思っています。なぜあんな「湾曲したミラー」が必要なのかを考えるのです。

 すると「ただの平面のミラーでは、角度によって死角ができる。でもカーブしていると三百六十度カメラのように、どんな角度からでも見えるようになるな」と感じられます。

 では夜間の「カーブミラー」はどれほど頼りになるのでしょうか。

 歩行者が明かりを持っていないかぎり、「カーブミラー」にはほとんどなにも映りません。ただ自動車がライトを点けていれば、「カーブミラー」でライトは反射されて曲がり角の先も照らしてくれます。だから徐行して交差点へ進入するかぎり「カーブミラー」のおかげで事故を起こさずに済むのです。

 では「プラグインハイブリッド」とはなにか。

 これはご自身で考えてみて、それからネットで検索して「答え合わせ」すればよいでしょう。

 まずは「知らない」ものを「わかったような気になる」まで考えてみるのです。

 現象が先にあり、その原理を追究していく科学者のような気分を味わいましょう。

 それから「答え合わせ」をして「あぁなるほど。こういう原理で動いていたんだ」と知れば、好奇心が満たされます。

 新鮮味を感じ、思考力を鍛え、好奇心を満たす。

 この三つをひとつの流れとして行ないましょう。

 そうすれば「又た日新たなり」の境地に一歩近づけますよ。




スランプになったらいつもと違うことをする

 それでも「スランプ」を脱出できないのであれば、いつもと異なることをしましょう。

 たとえば「靴を右足から履いていた」のを「左足から履いてみる」とか、「右手で食べていたのを左手で食べてみよう」とか。

 あなたがパソコンのキーボードで入力しているのなら、「利き腕ではないほうの手でキーを叩いて」みてください。片手だけでキーを押すのです。そんな窮屈な打ち方をしていると、脳に新鮮な刺激を与えられます。

 ですが毎日そうする必要はありません。そのうち慣れてしまいますからね。

「スランプ」だと感じたら、そのときだけ片手打ちをすればよいのです。

 利き手だと意外と簡単にできてしまいますので、利き腕ではない手を使うようにしてください。

 他にも「トイレで用を足したら、いつもとは逆の手で処理する」とか「シャワーを浴びたら体を洗う順番を変える」とかいろいろ考えられます。

 毎日同じものを食べていると「マンネリ」を感じてしまうでしょう。

 食費を浮かせようとカップ麺ばかり食べたり、惣菜パンにコーヒーだけの昼食だったり。これではすぐに「マンネリ」して感覚が麻痺してしまいます。

 今の学校給食は毎日異なるものが食べられるのです。

 昭和の昔は、コッペパンに脱脂粉乳という毎日同じ給食を食べていました。そうなると給食に新鮮味を感じないはずです。私はそれより後の世代なので毎日違う給食でしたが、ときには同じパンが三日続いたなんてこともありました。毎日違うから楽しめるのであって、同じものが三日も続くとさすがに飽きます。

 私事ですが、今なんて日曜日以外の朝食と昼食はすべて同じメニューです。もう「マンネリ」以外のなにものでもありません。しかし食事を考える時間を減らし、カロリー・コントロールまで考える手間も減らしたい。ということで月曜から土曜までの朝食と昼食はすべて同じにしています。毎日違うのは夕食と日曜日と、今書いている「小説の書き方」コラムの内容だけです。

 他を「マンネリ」にしているため、夕食と日曜日とコラムはとてもよい刺激になります。この刺激のために朝食と昼食を固定しているのではないかと思えるくらいです。

 ちなみに朝はオニオンサラダとツナ缶と野菜ジュース、昼は盛りそばと納豆とヨーグルトだけ。これで夕食後に二時間弱5センチメートル・腕立て伏せと5センチメートル・スクワットを一万回やっていますので、体重が落ちるわ腹囲は七十センチメートルになるわで、見た目もよくなりましたし、体力もつきました。でも自律神経失調症と髄液減少症が治るわけではないので、気圧が下がり、湿度が上がるとすぐに体調を崩すのです。こればかりはどうしようもありません。駄目な日は無理をせず横になってかるく睡眠をとったり、頭痛薬を飲んだりしてやり過ごしています。このふたつの疾患があるせいで自宅療養中なんですよね。

 私は自律神経失調症のせいで「マンネリ」を感じにくいのかもしれません。だから三年以上も毎日「小説の書き方」コラムを書いて投稿できているのでしょう。

 こればかりは皆様には真似ができないと思います。

 そんな私だから言えるのは「マンネリ」を打破するために、いつもと異なることをやってみるとよいのでは、です。

 物の見方や考え方、感じ方を変えるだけで「マンネリ」から抜け出せますよ。

「マンネリ」な小説が面白くなりはしません。つねに新しい切り口に挑んでこそ、物語は面白くなります。

「あぁスランプだ」と思ったときが、「マンネリ」に気づく最大のチャンスなのです。これを活かさない手はありませんよ。





最後に

 今回は「スランプは最大のチャンス」について述べました。

 小説を連載していると、どうしても襲ってくるのが「スランプ」です。

 しかし「スランプ」は「マンネリ」を打破する「チャンス」でもあります。

 今「スランプ」だと感じていたら、いつもとは違うことに挑戦してみましょう。

 これまで考えつかなかった発想が手に入るかもしれませんよ。



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