1246.学習篇:過去の入賞作を分析する

 将来「プロ」の書き手になりたければ「小説賞・新人賞」を獲るよりほかに道はありません。

 小説投稿サイトは気軽に応募できるので参加者数自体は多いのですが、質も伴っている方はそんなに多くはない。

 まずは「過去の入賞作を分析」して、競争相手の実力を見極めましょう。





過去の入賞作を分析する


「小説賞・新人賞」を目指しているのなら、集められる範囲でよいので大賞作、優秀賞作、佳作を読んでみましょう。

 なぜこの作品が大賞を獲れたのか。優秀賞・佳作止まりだったのか。

 それを考えながら読み込むと、違いが明確にわかるはずです。




講評を読んで良かったところをあらかじめ知る

 各賞に入ったのには理由があるはずです。

 あなたの作品が落ちた理由も、入賞作を分析すると見えてきます。

 大賞作、優秀賞作にはたいてい講評が付きますので、まず講評を読んでから本編を読んでください。

「ここが良かった」とわかっていれば、そこへ意識を置いて重点的に読めるので「良さ」が際立ちます。

 そして大賞作なら「これが大賞を獲ったんだ」と憧憬を込めて読みましょう。

 どこが「大賞に値する」のかを見つけ出していくのです。

 自分の作品とはどこが違うのかも考えながら読めば、より違いが明確になります。

 大賞作にはあって、落選した自作には足りなかったもの。

 講評に書いてある「受賞理由」は、あなたへの叱咤激励でもあるのです。

 この点がこのレベルまであるから大賞を与えられた。

 その事実を見極められれば、次作につながります。

 もし自作の改善点がわからなければ、何度応募しても入賞はおぼつかない。

 自作に足りなかったところ、改善しなければならないところがわかれば、次作はもっとよい作品が書けます。

 だから講評を先に読むのです。

「どこが良かった」のかが明確ですから、良かった部分を何度も読み返して「ここがこうだから良いのか」と判断できます。

 あなたの作品になくて受賞作にはあるものを見つけ出すのです。

 つまらない作業だと思っても、この差異を見つけ出せないかぎり、あなたに大賞は獲れません。

 大賞に値する作品の特長をすべて吸い取るつもりで、該当部分をしっかりと読み込みましょう。




小説を書く技能

「良い小説を書く」のは一種の技能です。

 技能であれば、いくらでも学んで身につけられます。

 他人の作品から「良い点を見つけ出す眼力」を持つのです。

 大賞を授かれるほどの書き手は、総じて「良い点を見つけ出す眼力」を有しています。

 もし「良い小説を書く」のが才能だとすれば、私たちがいくら苦労して作品を応募しても結果は同じです。

 しかし同じ「小説賞・新人賞」へ何度も応募して苦節十年、という方もいらっしゃいます。

 その方は十年もの間「才能がなかった」のでしょうか。十年経ったら才能が芽生えたのでしょうか。

 とてもそうは思えませんよね。

 十年間「小説を書く」技能を磨いてきたからこそ、「小説賞・新人賞」を授かれたのです。

 才能は持って生まれたもの。技能は知識を仕入れて自分なりに使いこなすものです。であれば、適正に頑張れば必ず報われます。

「自分には『小説賞・新人賞』を獲る才能はないんだ」と嘆くより、「まだ獲れるだけの技能がなかったんだ」と奮起しましょう。

 改善する努力を続けているかぎり、あなたの技能は必ず向上するのです。

 たった一作「小説賞・新人賞」を獲れなかったとしても、改善し続ければいつか必ず手が届きます。

 もし「才能の問題」だと考えるのなら「改善する努力の才能」があるかどうかです。

「小説の書き方」はあくまでも技能であり、才能ではありません。

 才能が関係するなら、何度落選しても「改善する努力」を続けられるかだけです。

 大賞を獲った書き手は、これまでどれだけの作品を書いてきたのか考えてみてください。とても処女作で大賞が獲れたとは思えません。必ず何度も落選を繰り返し、その都度改善して立ち上がり続けてきたからこそ、大賞をもぎとれたのです。

 その努力をすべて「才能」の一言で片づけてしまうから、いつまで経ってもあなたは大賞を獲れません。

 大賞を授かれたのは、へこたれずに改善を繰り返して立ち上がり続けてきたから。

 才能ではなく技能を磨き込んだのです。

 それでもまだ、あなたは「小説を書くのは才能」だと思いますか。

 そう思っている間は、あなたは「小説を書くのは才能」だと信じてしまうのです。

 しかし「小説を書くのは技能」だと思っていれば、いくらでも磨きをかけられる。磨きあげていれば、いつかは大賞に手が届く。そう信じられます。

 重ねて書きます。

「小説を書くのは技能」です。あとからいくらでも伸ばせます。持って生まれた天賦の才ではないのです。




優秀賞は課題を見つけるチャンス

 過去の入賞作の中でも、優秀賞作ほど勉強になるものはありません。

 大賞はある程度完成度の高い原稿です。しかし優秀賞はなにがしかが劣っているから及ばなかった。だとすれば「優秀賞が大賞に及ばなかったのはどこのせい」を見つけ出せば、あなたは大賞へぐぐっと近づけます。

 大賞ほどの完成度はなく、どこかが及んでいない。でも他はかなりすぐれているから優秀賞なのです。もし他にいくつも及んでいなければ佳作止まりになります。けっして優秀賞の評価は得られません。

 だから優秀賞は「課題探し」にはうってつけなのです。

 優秀賞作の書き手にとっての「課題」ではあります。しかしそれを自らにも課してください。

「キャラクター造形が甘い」と言われていたら、自らの作品でもキャラクター造形に凝るのです。

「展開が唐突」と言われていたら、自らの作品でも丁寧な展開に仕上げるよう意識してください。

「他山の石以て玉を攻むべし」

 この精神を持てる方だけが「他者に学ぶ才能」を持っています。

「他者に学ぶ」は才能です。技能ではありません。しかし意識すれば誰でもそれなりに実践可能な才能です。

 クラスメートが怒られていたら、なぜ怒られたのかを知り、自らはそれをしないように意識する。それだけで先生から怒られなくなります。

 育ちがよい人はそもそも先生の怒りを買いません。そういう人は「こうしたら怒られるだろうな」と察しがつきます。だから「他者に学ぶ」は才能なのです。しかし意識すれば誰でもそれなりに実践可能な才能と言えます。

 なぜこの作品は優秀賞止まりなのか。

「小説賞・新人賞」の講評で指摘されている「課題」を自らにも課せる人だけに「他者に学ぶ」才能があります。

 なにも考えず「自らに課せる」方は才能があるのです。そうでなければ意識すればよい。「他者に出された課題」を「自らにも課す」と意識すれば、いくらでも改善しようと意欲が湧いてきます。





最後に

 今回は「過去の入賞作を分析する」について述べました。

 大賞作はなぜ獲れたのか。講評を読み、良かった点を盗みましょう。

 優秀賞作はなぜ大賞に及ばなかったのか。講評を読み、及ばなかった「課題」を自らにも課しましょう。

「他者に学ぶ」人だけが「小説賞・新人賞」を獲れるのです。



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