1241.学習篇:武器は最初から持っている

 今回は「戦いに挑むための武器」についてです。

 どのような「武器」が「小説賞・新人賞」を手繰り寄せるのでしょうか。

 どんな「武器」も鍛え、研がなければ使いものになりません。





武器は最初から持っている


 小説が書けたら開けてくる人生とはどのようなものでしょうか。

 もちろん「プロ」の書き手「小説家」になる道が開けてきます。

 しかし同じ思いを致している人はなにもあなただけではありません。

 国立私立の別を問わず、大学の国文科を卒業する人は毎年数万人はいるでしょう。

 そんな「プロ」の予備軍を相手に、あなたの書いた小説は武器足りうるのでしょうか。




どのような武器を持つのか

 小説が書けると「プロ」の書き手への第一歩を踏み出せます。

 小説も書けないのに「小説家」を目指せるほど、世の中は甘くありません。

 しかし人生の武器にできるほど質の高い小説が書けるのはごくわずかな人たちです。

 その証拠に大学の国文科を卒業する毎年数万人の中で、「小説賞・新人賞」を獲れるのは主だったものでも百名程度。地方紙や地方自治体が開催する「小説賞・新人賞」を含めても千人いればよいほうでしょう。ということは、国文科卒でも一パーセントほどの人しか「小説賞・新人賞」は獲れないのです。

 より卑近な例では小説セミナーや小説講座に参加して、講師から添削を受けながら賞レースに挑む方々もいらっしゃいます。講師次第ですが地方紙や地方自治体が開催する「小説賞・新人賞」なら国文科卒とも対等に渡り合えるでしょう。

 翻って私たちは国文科を出ていないし小説セミナー・小説講座を受けていない方のほうが多いはず。

 となれば、小説を専門にしてきた国文科卒、小説セミナー・小説講座受講者よりもよほど頑張らなければ対等に戦えません。

 本コラムは、元手をかけずに彼ら彼女らと戦うためにあなたが持っている武器を鍛え研ぐためにあります。

 そうなのです。武器はそもそも皆様が最初から持っています。ただ鍛えられていない、研がれていない「なまくら」というだけです。

 人によっては両手剣でしょうし、人によってはハンマーかもしれません、拳銃だってありえますよね。

 どんな武器を選択するかはあなたの自由です。

 このあたりはゲームのCAPCOM『MONSTER HUNTER』シリーズを見ていただければわかると思います。

 それぞれの武器種が存在し、その中でもさまざまな最終進化形が存在するのです。

 どのような最終進化形の武器を手にするかは、あなたの選択ひとつで決まります。

 最終進化形の武器を決めたら、必要な素材を集めなければなりません。必要そうな素材は、本コラムのあちこちに散りばめてあります。ゲーム感覚で探り出してみるのも悪くないでしょう。

 短剣で戦う盗賊を目指すのか、ロングソードを振るう騎士を目指すのか、ウォーハンマーで戦う神官を目指すのか、弓で戦う狩人を目指すのか。

 とりあえずそこからはっきりさせていきましょう。

 あなたが最初から持っている武器を最終進化形まで鍛えあげる。

 または違った武器種に持ち替えてみる。

 小説における「武器種」とは端的に言えば「ジャンル」です。

 あなたが「異世界ファンタジー」という武器種を最初から持っているのであれば、「異世界ファンタジー」を鍛えあげてもよい。似たような武器種に持ち替えて「現実世界ファンタジー」を物色してもよいですし、使い方を変えて「MMORPG」に挑戦したってかまいません。

 私は最初に触れた物語が『アーサー王伝説』という「剣と魔法のファンタジー」でした。ですので最初から持っている武器は「剣と魔法のファンタジー」です。これは確定していますので、私は迷わずこのジャンルを突き進むつもりです。

 構想している長編四部作には現代劇もあるので、そちらのために新たな「武器種」も憶えなければなりません。そのために株式トレードに手を出したのですからね。取材でもないのに資金をつぎ込めるほど裕福な暮らしではありませんので。

 皆様の原体験はなんでしょうか。

 そこにあなたが最初から持っている武器はあります。




違う武器種で戦いたいなら取材するしかない

 あなたが最初から持っている武器は、あなたが書きたいと思っているジャンルであることが多い。ですが、必ず「書きたい」イコール「最初から持っている武器」とはかぎりません。

 原体験でモーリス・ルブラン氏『怪盗ルパン』シリーズを読み漁っていた方が、「異世界ファンタジー」を書きたいと思っていても不思議はないのです。

 しかし『怪盗ルパン』の産業革命期の知識は「異世界ファンタジー」には合いません。

 違う武器種で戦いたいのなら、書けるようになるまで突き詰めて「取材」しましょう。

 ゲームでも、武器を持ち替えたら使いこなせるまで雑魚相手にコンビネーションの研究をしますよね。

「異世界ファンタジー」を専門に書く人が「現実世界ファンタジー」を書きたいのなら、それほど困難はありません。しかし「現実世界恋愛」や「日常」ものを書こうとしたら勝手が異なります。今まで大剣を使っていたのを飛び道具にするようなものです。慣れるまではとにかく雑魚相手に練習あるのみ。

 小説で雑魚相手に練習するなんてできるのか。

 できますよ。一話限りの短編小説を書けばよいのです。

 短編小説で勝手がつかめてくれば、次第に長くしていって中編小説、長編小説、連載小説へとステップアップしていきましょう。

 そのためにも、まずは「取材」です。

 そのジャンルの既存作を読み、傾向や性向などを「取材」して、構成要素を見極めていきましょう。

「これを書くのならこれは知っていないといけない。だからわかるようになるまで取材しないと」と思えるようになれば、自然とよい小説が書けます。

 私は現代劇にデイトレーダーを出そうと構想していたのですが、そもそも「デイトレーダーとはなんぞや」というそもそも論からスタートしたのです。そこでまず証券口座を開設して株式トレードを始めました。これでデイトレーダーの気持ちがすべてわかるかというとなかなか難しい。もちろん株式トレードをしたことがない人よりも有利なのは間違いないのです。しかし私がやれたのはスイングトレードという二日から二週間程度で手仕舞いするもので、一日のうちに何度もトレードを重ねて利益を積み増していくデイトレーダーの気持ちまではわかりません。そこで近いうちに信用口座を開設して信用売買ができるようになれたらいいなと考えています。そこで利益を得るのが目的ではありません。もちろんスキルが上がればデイトレードだけでもお金は稼げます。でも私の狙いはあくまでも「小説賞・新人賞」を獲って「プロ」デビューしたい、であって、デイトレーダーではないのです。

 私は知らないものを知らないままにして、表面だけをなぞった作品を書きたくなかった。だから体験できるものは最大限体験してみたい。それをする人の気持ちを知らなければ、深いところまで書き綴れないと思っています。

 皆様にここまでの覚悟は求めていません。

 表面をなぞるだけでもよいので、小説に書きたいのに知らない物事があったら「取材」を欠かさないでください。

 私は実体験しないと納得できないほど「不器用」なのです。

 器用な皆様なら、書籍や文献にあたるなどして「取材」を重ねればじゅうぶんに理解できるのではないでしょうか。

 それで理解できないようなら、私のように実体験というこの上ない「取材」をするしかありません。





最後に

 今回は「武器は最初から持っている」について述べました。

 感情の形は、最初に親しんだ物語に起因するものです。

『アーサー王伝説』に親しんだ私は「騎士道」の精神を持っています。弱きを助け強きを挫く。いじめられっ子の味方となり、いじめっ子を許さない。これが私の基本理念です。

 皆様にも最初に親しんだ物語が必ずあるはずです。

 その物語こそ、あなたが「最初から持っている武器」なのです。

 もし書きたい物語と「最初から持っている武器」が異なるのなら、まずは「取材」に励みましょう。「リサーチ」と言い換えてもよいですね。

 なにが必要となるかを見つけ出してください。それに詳しい書籍や文献をあたり納得できたら、じゅうぶんな「取材」ができたと考えましょう。



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