1229.学習篇:締め切りと缶詰め

 完全に忘れていましたが、2017年4月17日から『ピクシブ文芸』で毎日連載を始めて早三年二か月が経ちました。そしていよいよ連載1234回までカウントダウンに入っています。

 そんな今回は「締め切り」効果と「缶詰め」効果についてです。

 学習にはどちらも欠かせません。





締め切りと缶詰め


 学習環境に必要なのは「時間制限」つまり「締め切り」と、誰にも邪魔されない「缶詰め」状態です。

「小説の書き方」を勉強しようとしても「締め切り」がなければ、ダラダラと時間を費やしてしまいます。外部からの情報をシャットアウトできなければ、どうしても意識が分散されて集中できません。




締め切り効果

 なぜ「締め切り」が必要なのか。

 上記したように「ダラダラと時間を費やさない」ためです。

 たとえば「毎日一時間」と決めたら、その間に収まるよう集中して勉強しなければなりません。そうなれば「一時間」という限られた時間でもじゅうぶんな学習効果が期待できます。

 本格的に小説を書こうと思ったら、最低でも「毎日一時間」は勉強しましょう。

 そして「毎日一時間」は延長せず、必ず「毎日一時間」きっかりで終わってください。

 人によっては「興に乗るまで一時間かかる」方もいらっしゃいます。

 その場合は「毎日二時間」にするか、是が非でも「毎日一時間」に限定するかしましょう。

 しかし「毎日二時間」にしても前半一時間で「興に乗るまで時間をつぶす」だけなら、やはり「毎日一時間」に限るべきです。

「興に乗るまで一時間かかる」方は、「毎日一時間」で切り上げて、お尻に火を点けてください。そうすれば、ただ「時間をつぶす」だけだったのに、最低でも五十五分で火が点くようになります。そこから五十分、四十五分とじょじょに興に乗るまでの時間を短くするように意識するだけで、自然と素早く執筆態勢が整うようになるのです。

 それでも「興に乗るまで時間をつぶす」だけなら、いっそ「毎日一時間」を「小説を読む」時間にしてください。

 毎日読書を続ければ、否応なしに小説を意識するようになります。しかも読んでいて面白いですし、新しい発見もあるでしょう。

「読んで気づいたこれについて勉強したい」と思えるようになったら、自然と「毎日一時間」勉強したくなります。「この展開は思いつかなかった」「今の流行りはこんな展開なんだ」と展開を勉強する機会になるのです。また「比喩を効果的に用いるにはどうすればよいのだろう」「伝わる描写はどうすれば身につくのだろう」といった表現を吸収しようと思います。

 これから「小説の書き方」を勉強したい方は、まず「毎日一時間」確保してください。

 その時間内でひとつのものを徹底的に学べば、知識になりやすい。

 もし「小説の書き方」の学習意欲が湧かないようなら、「毎日一時間」小説を読んでください。

 とにかく「毎日一時間」小説に身を置いて生活するのです。

 小説を読めば必ず「自分もこんな作品が書きたいな」と思いを新たにします。その決意こそ「毎日一時間」限定で「小説の書き方」を学ぶ意欲につながるのです。

 さらに集中力を高めたければ、タイマーをセットしておくとよいでしょう。「残り何分」かがわからないまま学習するので「締め切り」を焦るようになります。この焦りは学習効果をより高めます。このときいちいち時計を気にしてはなりません。あくまでも肌感覚で「まだ始めたばかり」「半分を超えたあたり」「もうじきタイムアップ」と判断してください。時間経過を肌感覚で理解できれば、「プロ」になった際「あと何時間で書きあげないと」が正確につかめるようになります。アマチュアでも「あと何分で書きあげられるから、残りの時間を推敲に当てよう」と判断できるのです。

「締め切り効果」が、あなたの学習をより高いレベルへ導いてくれます。




缶詰め効果

「小説の書き方」に限らず、なにかを学ぶ際には、雑念をすべて取り去りましょう。

 携帯電話やスマートフォンは音やヴァイブレーション機能を切って充電させるだけにします。固定電話も留守電モードにして、集中を妨げないようにする。

 家族と一緒に暮らしているなら、「ここからここまでの時間は勉強に集中したいので声をかけないでくれ」と頼みましょう。

 パソコンで執筆するのならば、Webブラウザもメールソフトも終了させるべきです。まぁ本コラムを読みながら勉強したい場合は、他のサイトを閲覧しないように注意してWebブラウザを使ってもかまいません。

 このように徹底的に外部から隔絶した状態で勉強するのです。

 まるで「文豪」がホテルや旅籠はたごに缶詰めされて作品を書いているようなので「缶詰め効果」と呼びます。

「缶詰め効果」の最もよいのは「集中が妨げられない」点です。

 どんな勉強をしていても、「集中が妨げられる」と記憶に定着しづらくなります。ありとあらゆる外部刺激を断って、学習に集中するから効果が上がるのです。

 一度集中が妨げられると、意識がそちらにとられてしまい、学習するのにまた集中し直さなければなりません。はっきり言ってこの時間がいちばんムダです。

 学習に慣れてくれば、たとえ外部刺激で意識をとられても、一瞬で集中モードに復帰できます。しかしそうなるまでに相当な時間を要するのです。「小説の書き方」を勉強しているなら、すべて憶えた頃になってようやく到達するレベル。だから学習するのなら「缶詰め効果」を活かさなければなりません。

「缶詰め」になっていれば、集中力が次第に増していきます。「毎日一時間」集中すれば、その一時間で高いパフォーマンスを得られるのです。しかも何日も連続して行なっていれば、よりレベルの高い、より長い集中力が得られます。「継続は力なり」は真実なのです。

 そもそも「文豪」の時代には電話はあってもパソコンはありませんでした。当然スマートフォンもなかったのです。「文豪」の執筆時間を妨げるものなど存在しません。だからこそ高いレベルの文章力が身についたのです。

 私たち現代人はパソコンやスマートフォンでインターネット動画を観たりSNSで誰かとつながったりしている状態をつねに欲しています。学習するのならそういう欲をすべて断ち切るべきです。

「文豪」が偉大と感じるのなら、「文豪」と同じ環境に身を置きましょう。執筆するためにパソコンを使うのはかまいません。紙と万年筆で小説を書いていた「文豪」とは時代が異なるのですから。しかしWebサーフィンしたりメール確認したりしてはなりません。動画もSNSも雑念でしかありません。そういったものをしたいのなら「毎日一時間」以外の時間に行なってください。学習すると決めた時間はアンタッチャブルです。絶対に原則を曲げてはなりません。


 高度な集中力を発揮できる「缶詰め効果」を最大限活かしたいのなら、「文豪」のような環境を用意しましょう。集中を途切れさせるようなものはすべて遠ざけておくのです。テレビもラジオもすべて切りましょう。音の刺激をなくすのです。携帯電話やスマートフォンの着信音や通知音が気になるなら、別の部屋に置くか電源を切ってください。

 将来のための勉強といっときの娯楽、どちらがたいせつか。という話です。

 私なら間違いなく「将来のための勉強」をとります。

 もし会社を経営していて、連絡を随時受けられないと大きな損害が発生するのであれば携帯電話やスマートフォンを手元に置いてもかまいません。しかしそれだけの財力があるのなら、無理に「プロ」の書き手になる必要もないと思います。おそらく会社経営のほうが「プロ」の書き手よりもよほど高額な報酬を手に入れられるからです。

 収入の安定しない私のよう方は、「プロ」を目指して「将来のための勉強」に力を注いでください。





最後に

 今回は「締め切りと缶詰め」について述べました。

 限りある時間をいかに有効活用するか。集中して時間を使い倒してください。

 もしインターネット動画を一日三十分観ているのであれば、一年で百八十時間余もムダに費やしているのです。もしそれだけの時間があれば、「小説の書き方」の勉強もできますし、長編小説の一本も書けます。

 インターネット動画を観て楽しめるかもしれませんが、それが人生を前進させるかは別の話です。

「将来のための勉強」に時間を用いれば、いくらでも状況を改善できます。

 肉体労働が難しい方でも、パソコンで文字を入力できれば、小説は書けるのです。

「小説賞・新人賞」を獲りたいのか、インターネット動画を楽しみたいのか。

 この二者択一を必ず意識してください。どれだけ将来を見通せるかが、未来の環境を左右します。



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