1218.技術篇:生徒の成績は教師に左右される

 今回は「憶え方」についてです。

 教える側がうまければ教わる側の記憶にしっかりと残ります。

 記憶に残らないのは教え方がヘタだからです。





生徒の成績は教師に左右される


 学校で授業を受けていると、得意な科目と不得意な科目が出てきます。

 なぜその科目が得意になったり不得意になったりするのでしょうか。

 教えている人に問題があったのです。




苦手な科目は教え方がヘタ

 これは私にとっても耳の痛い話です。

 もし本コラムをここまで読んできて、それでも長編小説が一本も書けないのであれば、それは教えている私の力不足でしかありません。

 教わっている皆様が悪いわけではないのです。

 そもそも学習は、教えている人と教わっている人がおり、教わっている側が理解できないのであれば「教え方が悪い」と結論づけられます。

 もちろんモチベーションが上がらないからという理由で一本も書かない方もいらっしゃるのは事実です。それを教える側があれこれできません。

 ではなぜ一本も書けないのか。

「小説を一本書けば、魅力的な出来事が起こりますよ」と提案してモチベーションを高めようとする教え手もいらっしゃいます。

 私は「小説賞・新人賞」が獲れますよ、とはあまり言っていませんね。ほとんどが小説投稿サイトへ掲載すれば、多くの方に閲覧され、ブックマークされ、評価されますよくらいでしょうか。

「将来確実に「小説賞・新人賞」を獲って「プロ」デビューできますよ」と書いていませんから、学習意欲は低まるのかもしれません。

 私としても大々的に「こうすれば「小説賞・新人賞」を獲れる」と主張したいのですが、当の本人が「小説賞・新人賞」を獲ったわけではありません。獲った方のインタビューや著書を読んで、「小説賞・新人賞」を獲った人はこんなことをしています、こんなことに注意しています、と紹介しているにすぎません。

 ですが私も元書店店長として小説に一家言持っているのも事実です。

 それが本コラムの柱となっています。ですがこの一家言で確実に「小説賞・新人賞」が獲れるともかぎらない。

 そもそも本コラムをお読みの方が千人いたら、それだけで「小説賞・新人賞」への応募作品が千件増えます。その人たちだけでも千分の一しか実際に受賞できないのです。

 競争が激しくなれば、より質の高い作品が受賞するのが常で、それは絶対値ではなく相対値での比較になります。

 つまり一〇〇点の質を持っているから確実に受賞するわけではなく、もしそれを超える作品が応募されていたらそちらが受賞するのです。

 書き手にできることは、いかに相対値を高めるか。百より千、千より万のほうが質は高いですよね。

 教え手である私ができるのは、皆様に気づきを与えて、一を十にする、十を百にする、百を千にする、千を万にするだけ。あとは皆様がいかに気づけるかどうか。気づいてもらえるよう千二百以上のコラムを書いてきました。

 ここまで長い「小説の書き方」の書籍はこの世にないはずです。

 なにせ文字数だけでも『小説家になろう』で四二五万字を超えています。長編小説一本十万字とすれば、すでに四十二冊ぶんも書いているのですから。

 一番から最新話まですべてに目を通している方も、気になるトピックだけを読んでいる方もいらっしゃいます。

 いずれにせよ、本コラムを読んでもまだ長編小説が書けないようなら、教えている私に問題があるという認識です。

 もっとお手軽に長編小説が書けるコラムを目指して精進するつもりでいます。

 とくに「物語」を作る力「ストーリーテリング」を鍛える篇を考えておりますので、あまり期待せずにお待ちくださいませ。まだ構想だけで、組み立てまで進んでおりませんので。




教わる側もただ聞くだけでなく頭を働かせよう

 どんなに教え方がうまい教師でも、意欲のない生徒には満足に伝授できません。

 教わる側は、ただ謙虚に、言われるがまま鵜呑みにすればよいわけでもないのです。

 教える側がなぜこれを教えようとしているのか。これがわかると、なにができるようになるのか。そういう利益関係を把握してください。

 そうすれば、学習内容の重要性がわかります。

 しかし重要性がわかるだけでは身につきません。頭を働かせるのです。

 たとえば「比喩」について学んだとします。

 このとき「比喩」には主に「直喩(明喩)」と「隠喩(暗喩)」があるということだけを憶えてしまいがちです。

 そうではなく「直喩」とは「その女性はまるで太陽のような存在だ。」のような形をしている。他にどんな「直喩」が考えられるかな。たとえば「月はまるで臼と杵で餅をついているウサギのような模様をしている。」も「直喩」になるのかな。まだまだ思いつけるかな。……。

 そうやって教わる側も積極的に頭を働かせて、知識を脳に刻み込んでください。

 教師は知識を授けるだけで、記憶に定着させるのは生徒の問題です。

 もちろん先ほど申しあげたとおり、成績がよくならないのは教える側がヘタだから。

 ですが、教わる側がただ受け身で与えられた知識を詰め込むだけでは、「生きた知識」にはなりません。

 皆様は平方根の暗記を語呂合わせで憶えていませんか。

「一夜一夜に人見頃」「人並みにおごれや」「富士山麓オウム鳴く」これは√2、√3、√5の語呂合わせです。それぞれ「1.41421356」「1.7320508」「2.2360679」にあたります。

「産医師異国に向こう、産後厄無く、産婦御社に、虫サンサン闇に鳴く」これは円周率の語呂合わせです。これは「3.14159265358979323846264338327950288419716939937510……」の「3.14〜83279」までにあたります。

 語呂合わせはとても頭に入りやすい。映像イメージ化して憶えられるからです。

「小説の書き方」コラムをお読みの際も、できるだけ映像イメージ化して読んでみてください。そうして初めて身につく知恵もあります。

 知識だけはいくらでも詰め込めますが、それを知恵として引き出せるかどうかは語呂合わせ同様映像イメージ化の力が大きく作用するのです。





最後に

 今回は「生徒の成績は教師に左右される」について述べました。

 先生がどんなに立派な事柄を話しても、生徒が間違えずに憶えられるかは判断できません。生徒が正しく憶えられたら先生の教え方がうまかった。憶えられなかったり間違えて憶えたりしていたら先生の教え方がヘタだった。ただそれだけです。

 教え方のうまい先生は「映像イメージ化」を巧みに誘導しています。

 その点では私もまだまだのようですね。日々精進したいと思います。



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