1216.技術篇:学べば選択肢が増える
今回は「選択肢を増やす」ことについてです。
人生の選択肢はたくさんあったほうが断然面白くなります。
最初から「小説家」を目指すよりも、他にも趣味を見つけて選択肢を増やしましょう。
スポーツでもゲームでも資格でも勉強でもかまいません。
学べば選択肢が増える
学ぶ意義を見出だすなら「選択肢が増える」点に注目しましょう。
野球のバッティングを学べば、野球選手になる選択肢も現れる。
テニスのラリーを学べば、テニスプレイヤーになる選択肢もある。
将来なにになりたいかは、すべて今まで学んできたものの中にしかありません。
小説の書き方を学ぶ前に文章の書き方を身につけよう
「小説の書き方」コラムとしてはなかなか言いにくいのですが、はっきり言いましょう。
「小説の書き方」を学ぶ前に「文章の書き方」を身につけたほうが才能は一気に伸びます。
「文章の書き方」は小説という物語を、読み手へ誤解なく伝えるために必要不可欠だからです。
そもそも「文章の書き方」を知れば、さまざまな波及効果があり、あなたの選択肢は一気に増えます。
たとえば大学の論文がすらすら書ける。就職活動の履歴書・職務経歴書や会社の業務日誌も企画書も書ける。
社会人になれば「文章の書き方」を知っているアドバンテージはさらに大きくなります。
それこそ「プロ」の小説家を目指すもよし、ビジネス書を書くもよし、コピーライターになるもよし。文章力が求められる職業はまだまだあります。
文章力が身につけば、あなたの将来はきっと明るくなる。なぜなら「他の人は文章の書き方を知らない」からです。
何回もお話ししていますが、日本の教育では「文章の書き方」を教えていません。だから「文章の書き方を知らない」人が相対的に多くなります。
「プロ」の書き手を目指しているのに、肝心の文章力がない。これでは餌も針もつけずに釣りを楽しむようなものです。
小説家を目指すのなら、最低限「文章の書き方」を身につけましょう。
文章力のない作品は、せっかくよい題材でも駄作にしなりません。
よい題材を正しい「文章の書き方」に従って記すから、正当に評価されるのです。
文章力のない方は、この機会に正しい「文章の書き方」を身につけてください。
趣味が選択肢を増やす
小説を書くとき、あなたの趣味が主人公へ多くの選択肢を与えてくれます。
私ならコンピュータが第一ですが、現実世界を舞台に幻のコンピュータを開発した人物を題材にした小説も書けるでしょう。異世界にコンピュータを持ち込んでも面白いかもしれません。魔法で動くコンピュータがあっても不思議はありませんからね。
以前「異世界にスマートフォンを持ち込む」是非について論じました。これなども、あなたが趣味のようにスマートフォンを触っているのなら、それを題材にした小説はすぐに思いつくはずです。「異世界にスマートフォン」があってはならない法律はありません。不文律や同調圧力などで「異世界にスマートフォンはないな」と見られているだけです。
サッカーが趣味なら、作品内にサッカー選手やサッカーの練習・試合などが書けます。
筋肉トレーニングが趣味なら、作品内で主人公は絶えず筋トレしているかもしれません。
ここでコンピュータ、スマートフォン、サッカー、筋トレと四つ出てきました。作品に書ける選択肢が四つあるのです。どれをどの順番に使うか、または省くか。
書き手の趣味が物語の選択肢を増やします。
たとえば私は
たいていの「剣と魔法のファンタジー」TRPGでは戦士、盗賊、魔法使いが登場します。ちょっと広げると騎士、神官も含まれるでしょう。また種族としてドワーフやエルフが登場するものがほとんどです。
ですが、さまざまなTRPGをプレイしていると、剣士だったり剣闘士だったり賢者だったり修道士だったりとさまざまな職業があるとわかります。
もし『DUNGEONS&DRAGONS』しか知らなかったら、職業として思い浮かばないものもたくさんあります。『カクヨム』では『ソード・ワールド』のリプレイが多いですが、こちらも基本的に『ソード・ワールド』以外の職業はなかなか出せません。
『DUNGEONS&DRAGONS』にしろ『ソード・ワールド』にしろ、ひとつのゲームしか知らなければ、その中からでしか選択肢は見つけられないのです。
ここまで職業を書きましたが、魔法の種類や威力といったものも、元のゲームからでしか生み出せません。
魔法なんて魔術師魔法、神官魔法、精霊魔法とありますが、手品だって超能力だって魔法のようなものでしょう。
一般的な書き手はそれぞれに精通するのは難しくても、趣味にしている書き手ならいくらでも憶えるし作品で使えます。
ライトノベルだけでは選択肢が少ない
「剣と魔法のファンタジー」に代表されるライトノベルですが、それしか書かないからこれしか読まないのもよくありません。
あなたの将来性を自ら潰しているようなものだからです。
たとえば「主人公最強」の「異世界転生ファンタジー」だと、皆似通った作品を書いていますよね。
それが大好きでそればかり読んでいる。そういう方が多いのです。
ひとつを極めたいのならそれでもよいのですが、仮にその作品が「小説賞・新人賞」を獲れたとして、「他の作品との差別化」が図れますか。
「紙の書籍」は中身が他の作品と一緒ではまず売れません。たまさか売れたとしても二巻目の需要はないでしょう。そうなれば第三巻で連載終了となります。
「主人公最強」の「異世界転生ファンタジー」が今流行しているから、自分もそれを書けばデビューできる。そう皮算用しがちです。ですがデビュー後まで考えていますか。
アマチュアのうちは「紙の書籍」化されて「プロ」になるのが目標でした。しかし「プロ」はデビュー後こそがたいせつ。「紙の書籍」の連載が五巻も十巻も続くのは、ただ流行りを押さえているだけでなく、「他の作品との差別化」されているかどうかが問題になります。
アマチュアのうちから「主人公最強」の「異世界転生ファンタジー」ばかり読んでいると「他の作品との差別化」が図れません。「この内容なら小説投稿サイトで読めばじゅうぶんだ」と思われてしまえば、第一巻すら売れないかもしれないのです。
物語の展開として、さまざまな選択肢を持ちましょう。
鉄板の展開で押し通せるのは初めのうちだけ。続きに求められるのは独自性、つまり「他の作品との差別化」です。差別化は第一巻から図られているべきですが、第二巻までは読み手も待ってくれます。
だから「主人公最強」の「異世界転生ファンタジー」ばかり読んでいては、差別化なんて図れません。他のテーマやキーワードやジャンルにも親しんで、選択肢をたくさん持ってください。差別化を図った作品こそ「小説賞・新人賞」にふさわしいと思いませんか。
幅広く学ぼう
小説に差別化をもたらす選択肢。増やすなら幅広く学びましょう。
数多くの知識を学べば、それだけ選択肢が増えます。
選択肢が多ければ、ありきたりなパターンを踏まえた作品にはなりません。
たとえば「戦士」しかいなかった世界に「騎士」がいる。これは当たり前ですね。では「騎士」の中には「聖騎士」もいれば「暗黒騎士」もいる。これもちょっと「剣と魔法のファンタジー」を知っていればわかるはずです。では「竜騎士」や「ペガサスナイト」「グリフィンナイト」だっているはずですよね。なにも騎士が跨るのは馬である必然性がないのですから。
また「戦士」を細分化して「剣士」「斧使い」「槍使い」と分けたり、「闘士」「剣闘士」のような戦う場所を限ったり。
あなたは「戦士」からここまでのバリエーションを考えつくでしょうか。これだけでも選択肢を増やすために学ぶ必要性がわかりませんか。
たかが「剣と魔法のファンタジー」ですが、極めようとすればかなりの知識が要求されます。もちろんあなたが創作する「剣と魔法のファンタジー」はあなたの自由に決めてかまいません。ただし、ありきたりな職業を出して「騎士」「戦士」「盗賊」「神官」「魔法使い」「精霊使い」がいればパーティーが出来あがる、というほど単純な決め方はやめましょう。
それぞれの職業にも細かな選択肢は存在します。その中のどれを選ぶかで戦い方がそもそも異なってきます。「槍使い」を狭いダンジョン内で活躍させるのは難しい。ですが広い野外に出て馬に跨がれば「槍使い」の独壇場です。
通常「騎士」は馬に跨った「槍使い」として書かれます。吉川英治氏『三国志』の関羽と張飛も馬に跨った「槍使い」です。最強の武将・呂布も赤兎馬に跨った「槍使い」として描かれています。三名とも「一騎当千」の猛将として名高い存在です。
『三国志』にはさまざまな武器を持った武将が出てきます。ただ文字でその違いを認識するのは難しい。そこでゲームのコーエーテクモ『真三國無双』シリーズを参考にしてみましょう。呂布の方天画戟、関羽の青龍偃月刀、張飛の蛇矛の形や振り回し方を動きとして見られる格好の素材です。他にも大きな鉄球を持っていたり、双剣で立ち振る舞ったり、強弩を用いる武将までいます。『真三國無双』シリーズは、「剣と魔法のファンタジー」の書き手なら一度はプレイしてください。戦闘シーンのイメージがほぼ忠実に再現されていますよ。
最後に
今回は「学べば選択肢が増える」について述べました。
あなたが好きなのは「主人公最強」の「異世界転生ファンタジー」かもしれません。
しかしそれしか読まなければ、他の作品との差別化が図れないのです。
差別化できないものが、他の作品よりも目立つなどありえない。
差別化を図るために「選択肢を増やす」のです。
ただの「戦士」にもさまざまな戦い方があります。扱う武器自体も異なるのです。そもそも作品に出てくる戦士が全員ノーマルソードを使っていたら、誰が主人公かわかりませんよね。
そのためにも「差別化を図っ」てください。
「差別化を図る」には「選択肢を増やす」しかないのです。
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