1187.技術篇:小説賞・新人賞と関係ない作品を書く

 たまには「小説賞・新人賞」を狙わない作品を書くのもよいではありませんか。

 それを小説投稿サイトへ投稿してもしなくてもかまいません。

「小説賞・新人賞」だけを狙い続けると、とにかく疲れます。





小説賞・新人賞と関係ない作品を書く


「小説賞・新人賞」を狙わなければ「プロ」にはなれない。

 だからといって、毎日「小説賞・新人賞」狙いの作品を書くのは正直しんどいと思います。

 そこで「小説賞・新人賞」とは関係ない作品も書いてみませんか。




小説賞・新人賞狙いは疲れる

 正直、書く作品をすべて「小説賞・新人賞」狙いにするとかなり疲れます。

「小説賞・新人賞」はどこかの小説投稿サイトで必ず開催されているものです。

 だから「プロ」を狙い続けると、毎日神経をすり減らして書かなければなりません。

 でも、たまには筆休めの一作を書くのも「あり」ではないでしょうか。

 自分が書きたい物語を、自分が書きたいように書く。

 まったくストレスを感じずに書けますよね。

 どんな展開にしようと、どんな結末にしようと、誰からも文句を言われない。

 そんな作品を書いていた頃が懐かしい。そう思ってしまいます。

 私も本コラムを毎日書いて三年経ちましたが、たまには別のものを書いて発散する。

 まぁ今は講評・添削の依頼を順次処理していますので、別の作品を書く暇はありませんが。

 ちなみに私は連載小説のネタが五本あります。本コラムでちらちらお見せしている『秋暁の霧、地を治む』もそのひとつです。

 今では本コラムの合間にちょこちょことエピソードの組み換えを行なったりしてブラッシュアップしています。いつ本コラムの連載を終えてもよいように、準備だけは怠れません。

 まぁ本コラムのほうが実は息抜きです。

『秋暁の霧、地を治む』は「小説賞・新人賞」向けの作品なので、正直かなり神経をすり減らしています。

 書き手である自分から見ても「傑作だ」と思えるレベルまで作り込めなければ、とても「小説賞・新人賞」なんて獲れやしません。

 話の筋は大きく変えないつもりですが、見せ方や読ませ方に工夫を凝らして、いかに読み手を満足させられるか。

「小説賞・新人賞」は第一の読み手である選考さんに満足してもらえなければ、獲れるはずもないのです。

 そう考えると、とても手を抜くなんてできません。

「小説賞・新人賞」に手慰みな作品を応募して受賞するのは、奇蹟のような確率です。

 たいていの書き手の作品は、よほど作り込まなければ大衆を惹き込めない。

 だから「小説賞・新人賞」応募作は書いていて疲れるのです。




賞に関係ない作品をどうするか

「小説賞・新人賞」狙いでない、まったく自由に書いた作品は、どこかの小説投稿サイトに投稿するべきなのでしょうか。しないほうがよいのでしょうか。

 これに関しては、どちらでもかまいません。

 すべて投稿すれば、書き手であるあなたの可能性を多くの読み手に伝えられます。

 またたとえばその小説投稿サイトで開催される「小説賞・新人賞」へ応募して、他の書き手の作品と当落を争っているようなら、可能性のあるあなたに軍配をあげる選考さんもいらっしゃるでしょう。

「それほど質が高くない」と自覚しているなら、PCの中で眠らせておいてもよいと思います。

 ですが、せっかくあなたの体から外へ出たキャラクターです。そのまま眠らせるのももったいないですよね。

 そこで、将来リライトして、今連載している作品が終わったあとの「新作」候補にするのもよいでしょう。

 連載が終了間際になってから新作の構想を練るのでは、連載に空白の期間が生じてしまうのです。すると読み手があなたの存在を忘れてしまいかねません。

 連載が切れ目なく供給されていれば、読み手はあなたの新作を継続して読んでくれるかもしれないのです。

 将来の連載候補であるなら、将来の「小説賞・新人賞」応募作にもなりえます。

 書き手が思いつく長編小説の数は、よほどの売れっ子作家でもないかぎり、生涯で十作もあればよいほうです。

 であれば、自由に書いた作品も、あなたの履歴に残るだけの大作に仕上げられます。

 そのためには、本当に今連載している作品から完全に離れた、自由な発想で書いてください。今から離れていれば離れているほど価値があります。

 賀東招二氏も『フルメタル・パニック!』のあとにまったく毛色の異なる『甘城ブリリアントパーク』を書いているのです。

 今までの読み手が離れてしまうか、新たな読み手がファンに加わるか。

 こればかりは世間に発表してみなければわかりません。

 まったく自由に書いた作品は、自己満足で終わらせるのはあまりにももったいない。

 将来の連載や応募作に化けさせるよう、できるだけ振り切ってください。

 振り幅が大きければ、あなたのさまざまな可能性が開けてきます。

 軍事小説を書いているのなら、ヒューマンドラマを書いてみる。

「剣と魔法のファンタジー」を書いているのなら、「日本歴史」や「SF超大作」や「推理」に挑んでみる。

 マンガの青山剛昌氏がなぜ『名探偵コナン』をビッグヒットさせられたのか。

『YAIBA』で剣劇ものを描き、『まじっく快斗』で怪盗ものを描いてきて、まったく毛色の異なる推理ものに挑んだからではないでしょうか。

 当時は『週刊少年マガジン』で天樹征丸氏&さとうふみや氏『金田一少年の事件簿』が大当たりして、世に「推理」ブームが巻き起こっていた時期です。そのとき怪盗を描いていた青山剛昌氏に担当編集さんから短編で推理ものを書いていたことで「推理ものを描いてみないか」と口説かれた。結果として当の『金田一少年の事件簿』を超えてしまいましたよね。

『青山剛昌短編集』の中には『まじっく快斗』の雛形も収められています。つまり『まじっく快斗』も本来は短編のひとつでしかなかったのです。それが『まじっく快斗』として連載され、今もたまに単発で書かれる作品となりました。

 眠らせるのは誰にでもできます。

 将来のために有効活用できるかどうか。その見通しが求められます。

 評価の数字を追わない、あなたが完全に自由に書いた作品が、将来の糧になる。

 書かない理由がありませんよね。





最後に

 今回は「小説賞・新人賞と関係ない作品を書く」について述べました。

 私たちは「小説賞・新人賞」を獲って「プロ」になりたいから作品を書いている。

 ほとんどの書き手は「プロ」を目指すものです。

 その原稿に不備があってはなりません。だから書いていて、推敲していてとても神経をすり減らします。

 たまにはそんな疲れた頭をまったく異なるジャンルに使ってみてはいかがでしょうか。

 意外な可能性に気づけるかもしれませんよ。



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