1185.技術篇:書くと決めたルールは徹底的に守り通す

 今回は「ルーチン化」についてです。

 今の人には「ルーティーン」と言ったほうが伝わるのかな。

 ひとつの決まりごとを繰り返し行なうプログラミング用語です。





書くと決めたルールは徹底的に守り通す


 小説を書くと決めたのに「書く時間がない」と言って書かないのでは意味がありません。

 まず「書く時間」をルール化しましょう。そして一度「この時間帯は執筆に充てる」と決めたら、それを徹底的に守り通してください。例外を作らないようにするのです。




執筆をルーチン化する

 今の人には「ルーティーン」と言ったほうがわかると思いますが、私は大昔のゲームプログラマーだったので、「ルーチン」と呼んでいます。意味は同じなので、わからない方は「ルーティーン」に置き換えてくださいね。

 まず「小説を書く」と決めたら、必ず「執筆時間」を確保してください。

 たとえば夕食後風呂上がりから寝るまでの一時間は小説を書くと決めておく、つまり「ルーチン」にするのです。

 それを毎日繰り返してください。

 毎日の執筆が仕事や勉強に差し支えるのであれば、隔日でもいいですし曜日を決めて週三回でもかまいません。土日しか時間がないのであれば、土日は必ず書くようにしましょう。

 とにかく一度「小説を書く」と決めた時間帯は、必ず「小説を書く」べきです。

 一度例外を作ると、ズルズルと例外の連鎖が起こり、いずれ崩壊します。

 私が毎日コラムを書いて投稿しているのも、それが「ルーチン」化しているからです。

 そのため、とりとめのない話だったり、同じ話を何度もしたりしますが。

 少なくとも「コラムを書く」と決めてからは同じ時間帯に書くようにしています。




不測の事態に備えて

 しかしどうしてもその日にコラムが書けない日もあるのです。

 体調を崩したり、イベントに参加したり。

 そんなときのためにストックを用意してあるのです。ストックがあればゆとりが持てますからね。

 今は二日ぶんのストックがありますので、緊急事態宣言中でイベントはなく、ほぼ体調不良の備えになっています。

 小説も似たようなものです。

「ルーチン」どおりに書かなければと焦ってミスを犯すより、書けるときにストックを溜めるつもりで書いておけば、後日なにかと役に立ちます。

 とくに「毎日連載する」と決めて小説投稿サイトへ掲載しているのなら、一日も連載は切らせられません。書けなくなりそうな状況や状態が近づいているのなら、とくにストックが重要となります。

「今日は筆が乗るから、書けるだけ書いちゃえ」は、無節操で野放図となりやすい。ですが、こと「毎日連載」する一点で言えば、このくらいのノリのほうが達成し続けられるのも事実です。

 日課として「小説を書く」のが「ルーチン」化されていれば、たまに休もうが日に二本書こうがかまわないのです。

 トータルで「毎日連載」が継続されている点だけを重視してください。

 過程よりも結果がたいせつです。




過程より結果がたいせつ

 これは「小説賞・新人賞」にも言えます。

 どんなに過程へ注力しても、結果が伴わなければ意味がない。

 無職で毎日十時間小説を書いている方と、趣味で日曜に三時間書いている方。

 過程だけで言えば無職のほうが濃密で有利です。しかし結果はたいてい趣味で書いているほうが成功します。

 これは「毎日十時間小説を書いている」という過程だけを重視して、結果に目を向けていない人に起こりがちです。

「毎日十時間」書くのは「ルーチン」では正しい。しかし成果を伴わないのなら「無意味」でしかありません。

 これでは「毎日素振り千本」と大差ないのです。

 素振りとは、相手投手が投げてくるボールの変化を想定しながらやるから効果があるのです。なにも考えずにただ毎日千本振ればよい、というものではありません。

 小説も、なにも考えずにただ毎日十時間書けばよい、というものでもないのです。

 毎日十時間小説を書いたら、おそらく中編小説くらいは書けているでしょう。

 それなら、毎日中編小説を小説投稿サイトへ掲載しませんか。

 そこで毎日反響を見て、この書き方はよい悪い、この内容はよい悪い、この展開はよい悪い、を見極めていくのです。

 結果に応じて日々執筆スタイルを変えられるか。それが毎日十時間小説を書いて大成する方の特徴です。

 そもそもただ書いているだけで誰にも読まれないものを「小説」とは呼びません。

「小説」は他人に読まれて初めて物語が動き始めるのです。

 あなたのPCにWord文書、一太郎文書、テキストファイルがいくら溜まっても、誰の目にも触れられなければ書いていないのと一緒。

 いくら過程をあれこれ考えたところで、結果がわからないものの良否は誰にもわからないのです。書いているあなた自身にもわかりません。作品の良否がわかるのは読み手だけです。

 なぜ「小説賞・新人賞」で一次選考、二次選考、三次選考、最終選考がきちんと決められていくのか。選考さんという読み手がいるからです。

 それぞれの選考さんが十作ほどを担当し、そのうち一、二本の良作を見つけ出します。それが選考さんの役割です。

 ではどのようにして良作を見つけ出すのか。

 昔は「紙の原稿」でしたので、封筒に入った原稿を投げて、より遠くへ飛んだものを良作にした、という都市伝説があります。そんな方がいたのでは、というくらい応募作が多かった時期もあるのです。

 しかし現在は小説投稿サイトに掲載されている作品を選考するので、「遠くへ飛んだ」ものが選ばれるはずはありません。「小説賞・新人賞」が開催されている小説投稿サイトでは、選考さんだけでなく一般の読み手も応募作を読んでいます。つまりあの作品が通って、この作品が落ちるなんてありえない、と多くの読み手たちには判断できるのです。

 もはや選考さんが「気分で」選ぶ時代は終焉を迎えています。

 すべての応募原稿が広く一般に公開されている。その中から誰が見ても明らかな良作を選んでいかなければ、「小説賞・新人賞」の沽券に関わるのです。

 何度も書きますが「ポプラ社小説大賞」は賞金一千万円という触れ込みで、過去五回受賞作なしでした。そうしてようやく生まれた大賞が齋藤智裕氏『KAGEROU』なのです。

 あれがもし小説投稿サイトの「小説賞・新人賞」のように、一般に広く読まれていたら、とても大賞が獲れたレベルではありません。それこそ中二病を患った「痛い」書き手の妄想録でしかないのです。

 内容めちゃくちゃ。文章めちゃくちゃ。日本語めちゃくちゃ。

 とても読めたものではありません。

 結局書き手の齋藤智裕氏(水嶋ヒロ氏)は賞金を辞退しています。

 これはマンガの大場つぐみ氏&小畑健氏『バクマン。』に出てくるマンガ家志望のロック歌手「KOOGY」となんら変わりません。ネームバリューだけで大賞が獲れると思い込み、実際にネームバリューで獲れてしまった。マンガよりもたちが悪い現実です。





最後に

 今回は「書くと決めたルールは徹底的に守り通す」について述べました。

「毎日投稿」すると決めたら、毎日小説を書いてください。

 それでも不測の事態は発生します。余力のある日に二本でも三本でもストックを積み上げていくのです。

 そして書いたものはすべて誰かに読んでもらいましょう。

 読まれない小説は「存在しない」のと同じです。

 書き手がいくらひとり悦に入っても、誰にも読まれなければ駄作と言ってよい。

 小説は「読まれてナンボ」。読み手でなければ作品の良否はわかりません。

 将来「プロ」になりたいのであれば、「作品が他人に読まれる」のにも慣れてください。

 書き手がどんなにつまらないと思っている物語でも、読ませてみたら意外と面白かったらしい、なんてことも起こりえます。

 過程をたいせつにするのもよいですが、それ以上に結果を重視してください。



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