1145.鍛錬篇:自分を正当に評価する
人から褒められたい。高く評価されたい。
そんな欲求があります。
実際にされると謙遜してしまうのが日本人です。
ですが謙遜してはなりません。
相手の評価をきちんと受け止めましょう。
自分を正当に評価する
人には承認欲求があります。
他人から褒められたい。高く評価されたい。そんな欲求です。
しかし実際に褒められたり高く評価されたりすると「いえ、それほどでも……」とお茶を濁して謙遜してしまいます。こういう方が日本人には多いのです。
褒められたら感謝する
「よくこんなすごい作品が書けたね」と手放しで褒められて嬉しくない方はいません。
しかしこちらも同じテンションで盛り上がってしまうと無礼者に映りはしないか。そんな自己評価を悪くするような行為を憚るのが日本人です。
でもよく考えてください。
あなたを手放しで褒めてくれた人の立場はどうなるのでしょうか。
せっかく手放しで褒めたのに、謙遜して「いえ、それほどでも……」なんて言われたら褒めた甲斐がありません。まるで自分だけが浮かれているように見えてしまうのではありませんか。
そう思い至ってしまうと、今回褒めてくれた方は、二度とあなたを褒めてくれなくなります。
それがもし「小説賞・新人賞」の大賞を授けたのに、相手に「いえ、それほどでも……」と謙遜されてしまったら。まるでこちらの審美眼が悪かったかのようです。
謙遜して「いえ、それほどでも……」と返すのは、相手を侮辱しています。相手の判断を遠回しに非難しているようなものだからです。
どんな状況であれ、あなたを褒めてくれた人に対しては「謙遜」ではなく素直に「感謝」を示しましょう。
「よくこんなすごい作品が書けたね」と手放しで褒められたら、「ありがとうございます」と答えればよいのです。褒められたらそのまま素直に受け取ってください。
「どこそこで苦労しましたが」と付け加える方もいらっしゃいますが、これも必要ありません。誰もあなたの苦労話を聞きたいわけではないのです。あなたが「すごい作品を書いた」。その事実だけでじゅうぶんです。
それを謙遜したり言い繕ったりしなくてよい。というよりするべきではないのです。
褒めてくれた人を本当に思っているのなら、素直に「ありがとうございます」と応えましょう。
高く評価されたらよりよいものを
「この作品は近年稀に見る意欲作だ」と高く評価されたらどうでしょうか。褒められたのと同じくらい嬉しいですよね。
自分の実力を高く評価してくれたので、つい天狗になって「いえ、こんな作品ではまだまだですよ」などと応えてしまったら。日本人なら誰もがそう応えてしまうところです。
でもよく考えてください。
高く評価してくれた相手の立場はどうなりますか。
あなたが「こんな作品ではまだまだですよ」と応えてしまったら、この作品を高く評価した人の批評力が足りなかったと言っているようなものです。
「この作品は近年稀に見る意欲作だ」とまで高く評価しています。その作品はあなたにとって「まだまだ」かもしれません。ですがそれを口や態度に出さないでください。
ここまでは「褒められた」ときと一緒です。
高く評価された際、素直に「ありがとうございます」と言うだけでは足りません。
その作品があなたにとってどのレベルに位置する作品だったのか。それを知らなければなりません。
もしあなた自身も「これは傑作間違いなし」と思っていたのなら、高く評価されれば「当然」だと思いますよね。
逆にあなた自身は「これは最終選考に残れるか微妙だな」と思っていたのなら、高く評価されれば「思ったより高く評価されたな」と思うでしょう。
どちらにしても「ありがとうございます」の次に来る言葉は決まっています。
「次作はさらによいものを書きたいと思います」です。
意外ですか?
「傑作」だと思っていたなら、それよりよいものを書こうとすればよい。
「微妙」だと思っていたなら、今度は実力でよりよいものを書けばよいのです。
どちらにしても「よりよいものを書く」という意思表明はしましょう。
「ありがとうございます。次作はさらによいものを書きたいと思います」と応えられれば万全です。
評価は実力を計るもの
「小説賞・新人賞」で講評が書かれたら、それは今のあなたの実力を示しています。
少なくとも講評されるだけの実力はあったのです。そのうえで、なにがよかったのか、なにが足りなかったのか。それを知らなければ「よりよい作品」は作れません。
小説投稿サイトで開催されている「小説賞・新人賞」へ応募したら、出版社レーベルの編集さんの講評以外に、小説投稿サイトの読み手から評価やコメントが寄せられもします。
その際は「自分に足りなかったものはなにか」だけを見つけようとしないでください。「自分の強みはなにか」も同時に探すのです。
「強み」はあなたを唯一無二の存在にしてくれます。
それはあなたにとって思いもかけなかったものかもしれません。
「剣と魔法のファンタジー」の激しいバトルシーンを書くのが好きだとしても、読み手から「主人公とヒロインとの距離感がよい」という評価が来るかもしれないのです。
バトルシーンよりも恋愛模様のほうが「あなた」の個性を際立てている可能性もあります。
このような「自分では思いもかけなかったもの」が「強み」となっている書き手はけっこういらっしゃるのです。
「異世界ファンタジー」しか書いていなくて、「小説賞・新人賞」へ応募するため「日常」ものを書いたら予想に反して高く評価された。そういう方もいらっしゃるでしょう。
なにごとも「自己評価」がすべて正しいとは限りません。人間は社会性の生き物です。周りの人々からどのような役割を与えられているのかについて考えてください。
あなたとしてはバトルを書きたくても、社会はあなたの書く恋愛模様が読みたいのです。つまりあなたの需要は恋愛模様の書き手として。
であればバトルと恋愛模様を同時に書けばよい。あなたが書きたいものを書きながら、読み手が読みたいものも織り込んでいくのです。そうすれば需給のバランスがとれ、あなたの作品は多くの方に読まれて評価も高まります。
ファンタジーを書いていたのに、ミステリーを書いたら大ヒットしてしまった。宮部みゆき氏はそのような書き手です。
ファンタジーを書いていたのに、時代ものを書いたら大ヒットしてしまった。冲方丁氏はそのような書き手です。
読み手を引き込む筆力の高さも相まって、両者は双方で高い人気を誇ります。
あなたが得意なものを知っているのはあなた自身ではありません。あなたを見てきた他の人です。そうでなければ、学校の先生は生徒の進路指導なんてできやしません。
あなたと地縁・血縁のない人は、あなたの得意なものを冷静に見分けられます。
ぜひ小説投稿サイトに作品を掲載して、他人の評価をもらってください。
評価から得られるものは多いのです。
最後に
今回は「自分を正当に評価する」ことについて述べました。
褒められたい。高く評価されたい。
承認欲求は誰もが持っています。しかし的確な返し方がわかっていない人が多いのです。
褒められたら感謝すればよい。高く評価されたらよりよい作品を書こうと表明すればよい。
中には悪い評価もあるでしょう。でもそれはあなたの「強み」を見抜いているのかもしれません。「強み」はあなた本人だけでは気づきにくいものです。つながりのない赤の他人が作品を読むから、「強み」がわかります。
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