1122.鍛錬篇:本当に運がよかったのか

 今回は「運がよかった」についてです。

「小説賞・新人賞」の受賞者コメントでよく「とても運がよかったです。」と語っています。

 受賞するには「運」がよくなければならないのでしょうか。





本当に運がよかったのか


「小説賞・新人賞」で大賞や各賞を授かった方のコメントに「とても運がよかったです。」というものをちらほらと見かけます。

 本当に「とても運がよかった」から受賞したのでしょうか。




あなたにはわからない努力をしている

 受賞した方の「とても運がよかったです。」は、本当に「運」だけで獲ったのではない、という事実を前提にしてください。

 もし「運」だけで獲れるようなものなら、投稿していればあなたにだって確率はあったはずです。

 でもあなたは「運悪く」受賞を逃してしまった。

 なぜあなたに「運」がまわってこなかったのでしょうか。

「運」以外の要素が、受賞者に及ばなかったからです。

 受賞者は少なくとも、あなた以上の作品を書いて応募してきた。受賞者以外が、彼・彼女を超える作品を応募しなかったことが「運」と呼べるかもしれません。

 平年の受賞作と比べれば作品の質は劣っていたのに受賞できてしまった。これも「運」と呼べるでしょう。

 しかし「小説賞・新人賞」において、受賞した人と受賞できなかった人との間には、高くて険しい崖があります。

 それは「日頃の努力」です。

 受賞者は少なくとも、誰よりも「日頃から努力を重ねてきた」と考えられます。

 もしあなたが人一倍「努力」を重ねてきたのであれば。あなたの作品の質は他を圧倒していたはずです。しかし受賞できなかった。受賞者よりも「日頃の努力」が足りなかったからです。

「努力」で表していますが、それは「意識」のようなもの。

 つねに他人よりも上に行く「意識」を持って「努力」する。

 だから他の人よりもよい作品が書けるのです。

 他人の「努力」はあなたからはけっして見えません。見えないところでライバルは誰よりも高みへ到達するために「努力」しています。

 あなたはどれほど「努力」しているのでしょうか。誰よりも上を行く「意識」を持って、見えないところで「努力」していますか。

 おそらくしていません。

 人は誰にも見られないところでは、自堕落な生活を送りがちだからです。

 受賞者は独り黙々と「努力」を続けたのか、身近に切磋琢磨する仲間がいたのか、定かではありません。

 あなたには切磋琢磨する仲間が身近にいるでしょうか。いるのでしたら、その人よりも上の作品を書く「努力」をしてください。いないのでしたら自らを律し、見えないその他大勢の誰かよりもストイックでなければなりません。

 誰よりも高みへたどり着くために、誰よりも「努力」するのです。

 そうして受賞できた暁には、改めて「運がよかったです。」と言ってやればよい。

 誰もが「努力」する重要さに気づいていなかった。自分だけが「努力」に真の価値を置いていた。だから誰よりもすぐれた作品が生まれたのだ。

 それは「運がよかった」と言えるレベルです。




ボーッとしている暇があるなら考えろ

 受賞できる人と受賞できない人との差は「日頃の努力」だとわかりました。

 しかし実践するとなると話が異なります。

「やれ」と言われてやる人はまずいません。

「これをやらないと絶対に受賞できない」と自ら気づかないかぎり、「努力」する必要性を感じないからです。

「努力」は維持するのがとても難しい。なにせ「意識」が正体だからです。

 最近ダイエットの話をしているので、ダイエットで考えてみましょう。


 ダイエットするためには「日頃の努力」が必要です。これは小説を書くのと同じ。

 ではダイエットに必要な「日頃の努力」とはなんでしょうか。

 食餌制限と適度な運動を毎日続けることです。

 このふたつがわかっているのに、毎日続けるのは難しい。

 ですが「十キロほどダイエットしないと半年で死にますよ」と医師から宣告されたらどうでしょうか。必死になって努力すると思いませんか。

 そうです。「努力」するには「動機」が必要なのです。


「毎日短編小説を一本書き続けなければプロにはなれないよ」と偉い方から言われたら、あなたは毎日短編小説を書くでしょうか。どのくらい偉い方から言われるかにもよると思います。ただ偉いだけでなく、あなたが尊敬する人の言葉でなければなかなか心は動かないでしょう。

「毎日小説を書く」と決めたのにボーッとしているようでは、いつまで経っても受賞できるはずがないのです。そんな暇があるのなら頭を働かせて物語を考えてください。

 いつも物語ばかり考えすぎて頭がオーバーヒートしそうなら、たまにはボーッとするのもよいでしょう。しかし、日頃からボーッとしているようでは駄目です。

 もし私の言葉に重みを見出だしていただけるのでしたら、「毎日小説を二千字書きましょう」。

 なに、四百字詰め原稿用紙五枚程度です。この程度なら一時間もあればさらっと書けてしまいます。書けない方は、物語を練っていないのです。日頃の勉学や仕事の隙間時間に物語を練りあげて、帰宅してから一時間集中して物語を文章にしていく。

 この「努力」ができれば、筆力は必ずつきます。

 ボーッとしている暇があるなら物語を練りあげてください。物語が練られていないと、文章に起こすだけの明確なイメージは固まりません。




誰がどれほど努力しているかわからない

「努力」する「動機」として皆様に意識してもらいたいのが「誰かがどれほどの努力をしているのか、あなたにはけっしてわからない」という点です。

 とくにダイエットと異なり「小説賞・新人賞」を獲るため、「どこまで努力すれば他人を出し抜けるのか」の基準がわかりません。

 だからどれだけストイックになっても「やりすぎ」とは思わない。ひたすらストイックに自らを律せるかどうか。それが求められます。

「小説賞・新人賞」の応募者はすべからく「やりすぎなまでにストイック」だと思ってください。

 そんな人たちを出し抜いて受賞するためには、徹底的にストイックであるべきです。

「努力」を惜しんでいる暇などありません。誰よりも努力して「文章」と「物語」に磨きをかけるのです。

 たとえ全員が同じ「異世界転生」ものを書いて応募したとしても、「文章力」「物語力」で出し抜ければじゅうぶんに大賞を授かる余地はあります。

「誰がどれほどの努力をしているのか」がわからない以上、やりすぎなんてありません。あなたの想像以上に「努力」を重ねている方はいるのです。

「小説賞・新人賞」の大賞を授かりたいのなら、誰よりもストイックになりましょう。





最後に

 今回は「本当に運がよかったのか」について述べました。

「小説賞・新人賞」の「受賞者コメント」に書いてある「運がよかったです。」は、ただの照れ隠しです。

 本当はとんでもなく「努力」を重ねてきた方ばかり。でも「これだけ努力しました」と素直に言えないのが日本人です。

 だから「運がよかった」なんてことは起こりえないと考えて、日頃から徹底的に「努力」してください。

「努力」を積み重ねたのち受賞できたら、あなたもまた「運がよかったです。」と言ってやればよいのです。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る