三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム

1083.鍛錬篇：たまには休もう

　今回は「脳の疲れをとる」ことについてです。

　毎日連載すると、脳の疲れが溜まってきます。それをどうやってとればよいのでしょうか。

たまには休もう

　これまで「連載は定期的に次話を投稿する」ように言ってきました。

　そのうえで「たまには休もう」というご提案です。

きりきり舞いでは伸びやかな表現ができない

　毎日休みなく執筆を続けていると、どうしても表現や描写、比喩が固まってしまいます。

　なんとかして表現や描写、比喩に凝りたいときは、いっそパソコンから離れて自由な時間を作りましょう。

　瑞々しい感性が取り戻せたら、凝った表現や描写、比喩は滞りなくスラスラ書けるものです。

　頭を悩ませて時間を浪費するくらいなら、紅茶でもコーヒーでも飲んで気分転換してください。ピーナッツチョコレートがあれば、ひとかけふたかけ食べてみましょう。いずれも脳の栄養源である糖分を摂取して、意識をリフレッシュできます。

　近所を少し歩きまわってもよいですね。自室に籠もって小説を書いてもマンネリが進むだけで、伸びやかさとはほど遠い表現や描写、比喩にしかなりません。

　脳をひと休みさせるのはとても重要です。

　脳は疲れを自ら訴えません。行動や思考が鈍ってきたという状態を認識して初めて「あぁ脳が疲れているんだな」と気づきます。

　疲れに気づけないまま小説を執筆しても、よい作品にはなりません。

脳の疲れに気づくには

　ではどうやって脳の疲れに気づけばよいのでしょうか。

　最も簡単なのは「百から七を引き続ける」計算を何秒で終われるか確認する方法です。

　この方法は脳の処理速度を確かめるために脳生理学でよく用いられます。

　朝ごはんを食べ終えてリラックスしている状態のときのタイムを記録しておいてください。これが基準になります。

　小説を執筆していて、どうにも筆が進まなくなったら「百から七を引き続ける」計算を計測するのです。そしてリラックス時のタイムの何割増しなのかを確認すれば、どれだけ脳が疲れているのかが視覚化されます。

脳の疲労をとるには

　もし大幅にタイムが落ちていたら、すぐに糖分を補給して脳へ栄養を送りましょう。

　仮にタイムがほとんど落ちていなくても気分転換にはなるのです。なので筆が進むようになる可能性が高まります。

　脳へ糖分を送り届けるためには、血流をよくしましょう。そのために軽い運動をしてください。ラジオ体操でもよいですし、腕立て伏せやスクワットや腹筋運動、足首の曲げ伸ばし運動などでもかまいません。筋肉がポンプになって全身の血流がよくなります。

　日常的に運動を行なうと太りにくくなりますし、現在太っている方でも体重が落ちるのです。健康にもよいので、ぜひ日頃から軽い運動を行なうようにしてください。

　また執筆時は脳の前頭前野にある言語野が使われるので、そこ以外の脳部位を用いても脳の血流がよくなって前頭前野の疲労を回復できます。

　たとえば「アクションゲーム」をプレイする。

「パズルゲーム」「ロールプレイングゲーム」「シミュレーションゲーム」は思考を用いるためあまりオススメできません。

　任天堂『スーパーマリオブラザーズ』やＣＡＰＣＯＭ『モンスターハンター』といった、アクション（反射神経）に集中できるものが望ましいですね。

「ロールプレイングゲーム」でも、単なるレベル上げしかしないのであればプレイしてかまいません。物語を進めてしまうとストーリーを思い浮かべる前頭前野を刺激してしまうので、言語野がさらに疲れてしまいます。

　ポケモン『ポケットモンスター』は、ストーリーを進めずに野生のポケモンをゲットするだけならいくらでも行なってかまいません。

　とにかく物語を考えないで進められるゲームがオススメです。

　私が大好きな「アドベンチャーゲーム」は推理しなければならず前頭前野を駆使しますので、執筆に行き詰まったときに行なうべきではありません。

カラオケをする

「脳の前頭前野以外を用い、かつ軽い運動をする」のに向いているのがカラオケです。

　カラオケ店に行くのはコストがかさみますので、自宅で任天堂「Ｓｗｉｔｃｈ」やＳＯＮＹ「ＰｌａｙＳｔａｔｉｏｎ４」の『カラオケＪＯＹＳＯＵＮＤ』を利用するとよいでしょう。

　カラオケ店に一回行くお金で一カ月ぶんくらい歌えるのでオススメです。

　カラオケは大声を出して鬱憤を発散できるので精神衛生上もよろしい。

　それだけでなく、小説書きには大きな利点があります。

「他人の書いた歌詞」を脳に刷り込めるのです。

　前頭前野の言語野を用いるので本末転倒ですが、「他人の書いた歌詞」はあなたに新たな感性をもたらしてくれます。歌い慣れている歌曲であろうと、「他人の書いた歌詞」に触れることで「こんな言葉遣いもあるんだ」と無意識に刷り込まれるのです。

　だから英語の歌曲が好きでも、カラオケをするなら日本語の歌曲にしてください。

　カラオケでつねに人気上位にいるアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の高橋洋子氏「残酷な天使のテーゼ」はとても参考になります。またアニメ『タッチ』の岩崎良美氏「タッチ」も得るものが多いですね。比較的最近だとアニメ『ＳＴＡＮＤ　ＢＹ　ＭＥ　ドラえもん』の秦基博氏「ひまわりの約束」がよいでしょう。

　カラオケで人気があるのは、歌詞に魅力があるから。

　男性は歌詞よりもメロディーに興味を持ち、女性はメロディーよりも歌詞に興味を持ちます。だからカラオケの即効性は女性のほうが高いのです。

　男性でも無意識に歌詞が刷り込まれますから、表現力は確実に高まります。

　また、現在人気のある歌曲を憶えれば、今流行りの歌詞表現が手に入るのです。小説で流行りの文体を真似するのは難しい。でも歌曲で流行りの文体を真似するのは比較的容易です。歌い込むことで確実にあなたの血肉になります。

　あなたの十八番（おはこ）を歌えば大きな満足感を得ます。

　流行りの歌曲を憶えて歌うようにすれば、今通用する文体が手に入るのです。

　カラオケをする際、採点機能を使うかどうかはその人次第です。

　採点機能でより高い点数を出すために同じ曲を歌いまくる方もいます。同じ歌詞を繰り返せば脳に歌詞の文体が刻み込まれのです。しかし毎日毎回同じ曲だけしか歌わないのであれば、カラオケで得られる利点はほとんどありません。

　やはりさまざまな歌曲に挑戦していただきたい。できれば流行歌は必ず歌えるようになるべきです。ドラマや映画のタイアップ曲は流行りやすい。あなたがアニメをよく観るのであれば、アニソンでもまったく問題ありません。むしろライトノベル発のアニメであれば、そのアニソンを憶えれば多くの気づきを得られます。

　気をつけていただきたいのは、カラオケに夢中になりすぎないことです。

　いつでも歌える環境だと、二時間でも三時間でも歌い続けるでしょう。これでは執筆に充てる時間が少なくなってしまい、元の木阿弥です。

　あくまでも気分転換と歌詞を憶えるためにカラオケをしましょう。

最後に

　今回は「たまには休もう」について述べました。

　のめり込みすぎは、あらゆる物事で厳禁です。

　小説を書くことにのめり込みすぎてもよくありません。

　なにがしかの気分転換の方法を自分で決めておきましょう。今回はたまたま軽い運動やゲームやカラオケを取り上げましたが、誰にでも効く万能薬ではないのです。

　脳にとってガソリンとなる糖分をいかに効率よく届けるか。

　その点だけを考えてください。