1061.鍛錬篇:あなたのルーツを見つけ出す
今回は「ルーツ」を認識することについてです。
あなたが本当に書きたいものは「ルーツ」に詰まっています。
本格的に小説を書き始める前に、自分の「ルーツ」を見つめ直してみましょう。
あなたのルーツを見つけ出す
「あなたの素の思考」を突き詰めていくと「ルーツ」にたどり着くことが多いのです。
小説を書きたい、物語を作りたいと思った「ルーツ」が見つかります。
「ルーツ」を見つければ迷うことなく、そのジャンルや属性などを書けばよいのです。
ルーツを探す
人には必ず「ルーツ」があります。あなたの精神や魂を構成する「根源」です。
「あなたの素の思考」を紙のノートに書き出し続けると、意図せず「ルーツ」へ通じる道が開かれます。
そのとき、けっして怯んではいけません。
「ルーツ」を探し出そうと、積極的に飛び込んでください。
「ルーツ」は、あなたがいったいどういう人物なのかを教えてくれます。
しかしいきなり生まれた直後のことを考えてはなりません。
最初は今のコミュニティーに加わったときを思い出しましょう。こちらなら苦もなく思い出せるはずです。社会人なら今の会社に入ったときのことを思い出すのです。そこから大学のこと、高校のこと、中学のこととどんどん遡っていきます。そうすると記憶がどんどん遡行できるので、いきなり生まれた直後のことを思い出そうとするよりも簡単に「ルーツ」へたどり着けるのです。
あなたは何歳の頃まで憶えていますか。
筆者のルーツ
私は薄ぼんやりとしていますが、どうやら二歳頃のひとつの記憶にたどり着くようです。
「母の漕ぐ自転車の後部で足を後輪に巻き込まれた」という事故だけが思い出せます。この事故以前の記憶はないため、私の「ルーツ」は間違いなくこの事故です。
その後兄弟とともに養護施設へ預けられ、そこでわんぱくに育ちました。体を動かすことが好きだったのです。養護施設内の保育園でお昼寝の時間に部屋を抜け出しては、施設外へと出歩いたり宙返りの独習をしたり。その性分は高校まで変わりませんでしたね。
私が小学校へ上がるタイミングで兄弟とともに母親に引き取られて東京へ出てきました。その小学校でも掃除中にほうきを振り回して戦っては蛍光灯を割るなど、まさに「悪ガキ」です。小学三年の三学期に転校し、そこで初めていじめに遭いました。ですが元々わんぱくな性分なので、腕力で立ち向かうような少年でしたね。誰も味方をしてくれなくても、涙を流しながら抑えようとする大人三人を引きずってでも拳を振り上げて追いかける。同級生が上級生にいじめられていたら、自分が標的になってでも前面に立ち、「義」を尊んでいじめっ子と戦っていました。
こういう性分なので「剣と魔法のファンタジー」はまさにうってつけでした。養護施設にいた頃読んだ『アーサー王伝説』の書籍に大きな影響を受けていたのでしょう。
「義」のために戦うという点から吉川英治氏『三国志』を読み、こんな小説を書きたいなぁと思って、自分に足りないものを考えました。最も足りていないのは「軍略」の知識です。それを孫武氏『孫子』に見出だして以後座右の書となります。
『アーサー王伝説』には魔術師マーリンが出てきますし、『三国志』には天才軍師・諸葛亮孔明が出てきます。それぞれ主君を助ける魔術のようなものを用いたのです。
私が多感な時期にユリ・ゲラー氏がテレビで「超能力」を流行らせて話題になっていましたね。その影響でマンガのまつもと泉氏『きまぐれオレンジ☆ロード』が好きになったのです。だから「三角関係のラブコメ」も書こうと思えば書けるはず。
このように私の「ルーツ」を探っていくと、「剣と魔法のファンタジー」にうってつけなのです。
でも最初に書いた小説はなぜか「東洋ファンタジー恋愛小説」なんですよね。
以下が処女作のおおまかな筋書きになります。
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憎み合っていた龍族の住む村と鳳族の住む村の間にある、禁断の高山でたまたま出会ったそれぞれの種族の男と女。互いが憎み合う種族だと気づかず恋に落ち、何度も山の頂で出会うことで、種族の対立と自分たちの気持ちとの間でせめぎ合うふたりの心の移ろいを書いていました。
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この小説。実はウィリアム・シェイクスピア氏『ロミオとジュリエット』を知らずに書いたんですよね。今でこそ『ロミオとジュリエット』そっくりだなと思いますが、知らなかったからこそ、このような小説が書けたのでしょう。
無知って怖いですね。
でも似たような小説って世の中にごまんとありますよね。
このような小説が処女作なのですが、私は異性を異星人のように感じています。これは幼少期を養護施設で過ごしていたせいです。
養護施設では男女がまったく別の区画で暮らしていて、めったに見られる存在ではなかった。だから身近にいるのはすべて同性であり、異性は異星人のようなまったく異なる生き物なのだろうと感じていたのです。
この認識は社会人になってもとうぶん続きましたね。ある程度性差を認識して男女の別がつくようになったのはかなり後の話です。
そんな「ルーツ」を持つ私が最初に書いたのが「東洋ファンタジー恋愛小説」。自分でも頭の構造がよくわかりません。
おそらく中国の聖獣である青龍と朱雀が元ネタで、そこに『竹取物語』のような恋愛要素のある昔話が組み合わさって原形が作られたのだと思います。『アーサー王と円卓の騎士』や『きまぐれオレンジ☆ロード』の影響もあるでしょう。騎士ランスロット卿と王妃グィネヴィアとの禁断の恋とか、春日恭介と鮎川まどかの素直になれないもどかしさとか。そういった要素が処女作に反映されていたのかもしれません。
どうですか。自分の「ルーツ」を見つけ出すと「書くべきもの」が見えてくるとは思いませんか。
あなたの「ルーツ」はどんなものでしょう。
私が本コラムを通じて引き出すなんてまねはできません。私は心理カウンセラーでも心療内科医でも催眠術師でもないからです。相手の記憶が読めるような超能力者でもありません。
あなたの「ルーツ」は、あなた自身が見つけ出さなければならないのです。
その結果「自分の書きたいもの」も見つかります。
「私にはとくに書きたい物語はない」と思い込んでおられる方こそ、自分の「ルーツ」を遡ってみましょう。
必ず「書きたいもの」が見つかりますよ。
もし「ルーツ」をたどったのに「書きたいもの」が「まったく見当たらない」のなら、「あなたはなぜ生きているのか」という疑問が湧いてくるのです。
「人が生きている」理由は「ルーツ」に根ざしています。
私は異性を好きになれない「ルーツ」を持っていますから、処女作の「東洋ファンタジー恋愛小説」も恋愛感情で書かれたものではありません。恋愛感情が欠落している私だからこそ書ける「恋愛小説」というものもあるのです。
「書きたいもの」が「まったく見当たらない」方は、そういう立場からさまざまなジャンルの小説にチャレンジしてみてください。
欠落しているからこそ生み出せる物語が必ずありますよ。
最後に
今回は「あなたのルーツを見つけ出す」ことについて述べました。
皆様も、一度自らの「ルーツ」を探ってみるべきです。
「あなたの素の思考」を掘り下げていくと、いつかは自らの「ルーツ」に触れるところまで到達するでしょう。
「書きたいもの」が「まったく見当たらない」方は、一度「ルーツ」について深く掘り下げていくのです。あなた自身気づいていないだけで、心の中にある「
「ルーツ」が見つかれば、あとはそれをどう料理するか。恋愛小説に挑むもよしファンタジー小説に挑むもよし。あなただからこそ書ける小説が生み出せるはずです。
この筆者だからこそ書けた作品だ。
「小説賞・新人賞」の評価でもこれは表れます。
「ルーツ」は「あなたらしさ」の根源なのです。
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