1020.面白篇:面白さは日常に
今回は「日常にある面白さ」についてです。
面白い小説はなにが面白いのでしょうか。
それは日常を異なる視点から眺めると見えてくるかもしれません。
面白さは日常に
「面白い」小説を書きたいのなら、まず意識を改めてください。
「面白い」小説はなにが「面白い」のか。
世界観・設定が「面白い」、登場人物が「面白い」、人間関係が「面白い」、展開が「面白い」、語り口調が「面白い」、佳境・最終決戦が「面白い」、結末・オチが「面白い」など、さまざまな「面白い」があるはずです。
もちろん「すべてが面白い」作品が最も人気を集めます。ですが、書き始めの時期ではどれかひとつだけ「面白い」物語を作ってください。
面白さは日常に転がっている
小説の「面白さ」のタネは、あなたの日常に転がっています。ただそれに気づけていないだけです。
ではどんな状態で転がっているのでしょうか。
あなたは日頃暮らしているときに、ちょっとした疑問が持ち上がりませんか。私は「些細な違和感」のような、わずかな引っかかりを感じます。
それこそが「面白さ」のタネです。
たとえばカップ麺を作るには必ず熱湯を入れますよね。そこで「これ、冷水を入れたらどうなるんだろう」と「些細な違和感」を感じるのです。
すると小説の主人公が「カップ麺に水道水をそのまま入れる」エピソードを作れます。
もちろんカップ麺がどうなるかは、想像だけでは書けません。あなた自身が一度経験する必要がありますが、少なくともタネは出来ましたね。
ちなみに熱湯三分で完成する「カップ麺に水道水をそのまま入れる」と三分では硬いままです。十五分くらい経つと硬さはあるものの麺はほぐれて、なんとか食べられます。もちろんスープの素は水ではほとんど溶けませんから、麺自体に味のついている『チキンラーメン』のようなものが好ましいでしょう。
また「水道水で盛りそばが作れるカップ麺」を開発してもよいと思います。シマダヤ「流水麺」なら水道水だけで作れますが、保存がききません。乾麺として「水道水で作れる」というところがポイントです。
「水で戻すカップ麺」はおそらく存在するでしょう。しかし一般的ではありません。
この「存在するだろうけど、一般的でない」タネは、小説ではひじょうに使いやすいのです。
「いかにもありそうなエピソードだけど、今まで読んだことがないかも」と思わせられれば「意外性」のある「面白い」エピソードに仕上がります。
常識を疑う
いつもルーチンワークでやっている作業に、ちょっとした引っかかりを感じてください。常識を疑うのです。
「なぜこれでなければ駄目なのだろうか」と自らに問います。そこで試行錯誤すると、「これでなければならない理由」に行き着くはずです。
カップ麺の話題が続きますが、カップ焼きそばにラー油を入れたらどんな味になると思いますか。少量入れる程度でしたら、案外おいしくいただけるのです。それまでカップ焼きそばにラー油を入れる発想はなかったはずですが、「なにを入れたらよりおいしくなるのだろう」と考え始めます。
カップ麺に野菜炒めを入れて食べてもおいしいですよね。手軽に作れるカップ麺に、あえてひと手間かけて野菜炒めを作る。こんなことでも劇的においしくなるのです。
さらなるツワモノは、カップ麺の「スープの素」は使わず、オリジナルのスープを作ります。カップ麺に付属している「スープの素」を疑ったわけです。これによりカップ麺であってもよりおいしいものに変わります。
常識を疑うことで「面白く」なりそうですよね。
他にも「洗濯物はどうして吊り下げて干さなければならないのだろう」と発想できます。では吊り下げないで干す方法はないものでしょうか。頭をひねってみましょう。
「干す」といえば天日干しです。つまり網を広げてその上に洗濯物を敷きます。これなら吊り下げていたときよりも早く乾くはずです。
これが新たな「面白さ」を生み出す土壌となります。
どうですか。日常に「面白さ」のタネはいくらでも転がっています。
それに気づけるかどうかは、つねに常識を疑っているかにかかっているのです。
今まで意識されなかった方も、今この瞬間から「常識を疑っ」てみましょう。
テンプレートを疑う
これまで「テンプレートをそのまま使っていた」けど、この展開って本当に需要があるのだろうか。こんな展開に変えてみたらどんな物語になるのだろうか。
「テンプレート」はあくまでも作品の雛型です。それが絶対ではありません。大枠は維持したまま、自由に展開させましょう。
もし展開まで「テンプレート」に従ってしまったら、それはもうあなたの作品ではないのです。他の誰かにも書ける小説になってしまいます。
とくに「小説賞・新人賞」へ応募するなら、あなただから書ける作品で勝負しないかぎり、正しく評価されません。
「テンプレート」に従えば安定した「面白さ」を確保できるし、ランキングの上位にも立てると目算したいところでしょう。しかし実際にトップランカーの作品を読めば、「テンプレート」の大枠は使っているものの独自の展開を見せて読み手を惹き込んでいるとわかるはずです。わからなければ、現時点であなたに小説を書くだけの感性と
小説はキャラの立て方と物語の展開が重要です。キャラを立てるには、キャラ立てのエピソードを読ませなければなりません。となれば「物語の展開」に含めても大きく外れていないはずです。
そもそも登場人物はすべての作品で同じではありません。作品ごとに異なっています。もし登場人物すらも「テンプレート」をそのまま使ってしまったら、もはやあなたの小説とは見なせません。
「テンプレート」は物語開始時の世界観・設定を決める程度だけ用いるようにしましょう。つまり「異世界転生ファンタジー」「異世界転移ファンタジー」は「異世界に行く手順」と主人公が活躍する異世界の世界観・設定を使うにとどめるのです。
あくまでもスタート地点だけ「テンプレート」を用いましょう。
その後の展開まで「テンプレート」では独自性は出せず、「小説賞・新人賞」にかすりもしません。そんな小説を書いていられるほど、人生は長くないのです。
あなたが今後五十年生きるとすれば、一万八二六二日しかありません。
「小説賞・新人賞」を獲得できない「テンプレート」展開の小説を百日連載していたら、人生の〇.五四%の日数だけムダに費やしてしまうのです。
今後の人生のためには、「小説賞・新人賞」を授かって「紙の書籍」化するしかありません。
それでもあなたは「テンプレート」展開を用いますか。
最後に
今回は「面白さは日常に」ということについて述べました。
日常のふとした瞬間に「面白さ」のタネが転がっています。問題はそれに気づけるかどうかです。
「テンプレート」の存在を否定しませんが、そこに「面白さ」はありますか。
世界観・設定を「テンプレート」にするのは「あり」です。多くの「小説賞・新人賞」受賞作は「テンプレート」の世界観・設定を用いています。同じ「テンプレート」を使っていながら、あなたの作品と受賞作はなにが異なっていたのでしょうか。
受賞作は物語の「入り口」しか「テンプレート」を使っていません。あなたは「展開」まで「テンプレート」に従っていませんか。
もし従っていたのなら、受賞できなくて当たり前です。
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