1019.面白篇:流行りはいつか廃れる
今回は「流行り」についてです。
流行りはいつか廃れるものです。
いつ廃れるのかは誰にもわかりません。ですが、それは必ずやってきます。
それでもテンプレートを使い続けますか。
流行りはいつか廃れる
小説投稿サイトの作品にはある種の傾向があります。流行りと言い換えられましょう。
今は「異世界転生」ものが流行っていますが、あまりにも供給過多となっていて、いつ飽きられるか誰もわからないのです。
流行りは必ず廃れるときがやってきます。クレープもミルフィーユもパンナコッタもナタデココも、あんなに人気を誇っていたのに廃れました。タピオカだっていつ飽きられるかわかりません。ただ、今は終焉へゆっくりと向かっているため、多くの人は気づけないのです。
テンプレートはいずれ廃れる
テンプレートに則った小説もいつか必ず読み手から飽きられるでしょう。問題は、それがいつなのか。時期が定まっていないのです。
クレープが飽きられたのは、新しい人気者が登場してきたからです。
であれば、小説のテンプレートが飽きられるのは、流行りのテンプレートから外れた「新しい」作品が世に知られたときではないでしょうか。
歴史的な転換点は、意図して生み出せるものではありません。他の人と異なる作品を書き続けて、あるとき突然ブレイクするのです。
テンプレートは確かに今最もウケる雛型でしょう。だから皆がこぞってテンプレート作品を書いて掲載し、ランキングの上位を狙い続けるのです。
しかし限界は必ず訪れます。今までは「このジャンルが人気だから」という理由で持て囃されていたものが、あるときを境に「もうこのジャンルは飽きたな」という理由で見限られてしまうのです。それでもテンプレート作品を書き続けていると「まだそんな終わったテンプレートを使っているの」と嘲笑されもします。
いつ終わるかわからないテンプレートを使い続けるリスクを認識いただけましたでしょうか。
では具体的に「いつブームとなっているテンプレートが終わるのか」ですが。
クレープと同様「新しい人気者」つまり「これまでのテンプレートにはなかった面白さ」を持つ作品が現れたときです。
そんな物語にはお目にかかったことがない。そうお思いの方もいますよね。
実は小説投稿サイト最大手の『小説家になろう』では、何度かそういう作品が現れているのです。
小説家になろうは流行に敏感
『小説家になろう』は発足当時からファンタジー小説が強く、今で言う「異世界ファンタジー」が人気を集めました。
そこに「異世界転移ファンタジー」がやってきたのです。昔から「異世界転移ファンタジー」作品はありました。でも大ヒットには至らなかったのです。しかし「異世界転移ファンタジー」の支持者はじょじょに増えていきます。ランキングに載り始め、少しずつ順位を上げていったのです。
そうして「異世界転移ファンタジー」が一大勢力を誇るまでになりました。
しかし円熟した「異世界転移ファンタジー」も、あるとき異なる「大ヒット作」が現れて、多くの書き手がそのフォロワーへとまわりました。「異世界転移ファンタジー」が異なるテンプレートに人気を奪われたのです。
契機となったのは川原礫氏が自身のブログで発表していた『ソードアート・オンライン』が「紙の書籍」化されたことです。
この作品が発売されて多くのフォロワーを生み、単なる「異世界へ転移するファンタジー」から「VRMMO世界へダイブ(転移)するファンタジー」ものが立ち上がります。
つまり転換点の移行期においては、舞台が「異世界」から「VRMMO」へ変わっただけの「転移ファンタジー」だったわけです。
「VRMMOファンタジー」ものが大いに賑わって隆盛を極めていたところに、再び「異世界」を舞台にした革新的な作品が登場して、多くのフォロワーが生み出されます。それが「異世界転生ファンタジー」です。
「異世界転生」という考え方は当時とても斬新だったと思います。なにせ主人公は現実世界で「一度死ぬ」必要があり、異世界へ転生してもなぜか現実世界の記憶を持っているからです。
この仕組みを発明した方は相当賢いと思います。仏教の「輪廻転生」の理屈をファンタジー小説に持ち込んだのですから。「異世界ファンタジー」と言えば通常「中世ヨーロッパ」の世界観つまりキリスト教がほとんど。そこに仏教を持ち込んだのですから、よほど賢くなければできない発想です。
こうして近年の「異世界転生ファンタジー」ブームが花開き、大勢のフォロワーが今も新たな「異世界転生ファンタジー」作品を書き続けています。
しかしそろそろ転換点に差しかかっているはずです。
それは先頃見られるように「主人公最強」「ざまぁ」「スローライフ」といったキーワードが、ランキングの上位を独占していることからも明らかでしょう。
単なる「異世界転移ファンタジー」「異世界転生ファンタジー」はランキングであまり上位には入らなくなりました。巡り巡って「異世界ファンタジー」の世界観で、「主人公最強」「チート」「無双」もの、「追放」「ざまぁ」もの、「スローライフ」ものと、だいたい三つの派生が生まれているのです。
現在「スローライフ」がランキングを落とし始めているので、次世代候補から外れつつあります。「ざまぁ」も少しずつポジションを下げているところを見ると、まだ上位を保っている「主人公最強」の「異世界ファンタジー」が今時点での転換点候補です。
あくまでも「候補」なのにはわけがあります。いまだに「主人公最強」の「異世界ファンタジー」で流行りを転換するほど大ヒットした「紙の書籍」が存在しないからです。
「主人公最強」の「現代ファンタジー」なら鎌池和馬氏『とある魔術の禁書目録』という明確な大ヒット作が存在しています。
おそらく今の「主人公最強」の「異世界ファンタジー」は、『とある魔術の禁書目録』のフォロワーが「異世界ファンタジー」に取り込んだものでしょう。
「現代ファンタジー」を書くだけの知識はないけど『とある魔術の禁書目録』のような「主人公最強」の物語が書きたい。そういう理由で「異世界ファンタジー」に「主人公最強」が多投されているのかもしれません。
最後に
今回は「流行りはいつか廃れる」ことについて述べました。
今流行りのテンプレートを使って書いても、いつかは時代後れになります。
テンプレートを自分で作るような意欲で作品を書かれてはいかがでしょうか。
それが難しいのであれば、テンプレートにプラスαの要素を加えてみてください。
あなた独特のアレンジ力をアピールするのです。
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