911.文法篇:読点の打ち方

 今回は「読点の打ち方」についてです。

 よく「読んでみて、息継ぎするタイミングで打て」と言います。

 しかしこれほど無責任なアドバイスはありません。

 読点は、文章の意味がわかるように打つべきです。





読点の打ち方


 小説の書き方、文章の書き方に関する書物には、「読点は、文を読んでみて息継ぎするところに入れましょう」と書いてあるものが多くあります。

 ですが、息継ぎするところとは具体的にどこでしょうか。

 人によって息切れするタイミングは異なります。ある人は十五文字で息が上がるでしょうし、ある人は五十字を息継ぎなしに畳みかけることもできるのです。

 またあなたにしても今は十五字で息切れしますが、年をとっていくにつれ十字で息切れしたり、八字で息切れしたりと、肺活量はどんどん少なくなっていきます。

 つまり「読点は、文を読んで息継ぎするところに入れましょう」は万人共通の理論ではないのです。

 しかも同じ書き手であろうとも共通することはありません。




読点を打つ場所

(1)時を表す後の後に打つ

「一月四日、今年の仕事初めの日である。」

「今夜、運命の一戦が繰り広げられる。」


(2)独立語の後に打つ(呼びかけ・応答・驚嘆などの言葉)

「おい、やめろよ。」「ええ、そうですわね。」「うそっ、知らなかった。」


(3)強調したい語句の後に打つ

「私たちはついに、小惑星リュウグウへ探査機を到達させるミッションを成し遂げたのです。」


(4)主体、主語となる部分が長いときに、その後ろに打つ

「森を抜けてたどり着いた街道が、ひどく焼け焦げていた。」


(5)文・節・句・語などを並列するとき、それぞれの間に打つ

「清く、正しく、美しい心の持ち主でありたい。」

「雨が降り、湧き水が豊富で、木々が生い茂っていたことで、製紙業は急拡大した。」


(6)格助詞を省略したとき、その後に打つ

「戦争、終わったんですね。」(「が」「は」を省略)

「子ども、預けてきました。」(「を」を省略)


(7)名詞や動詞に修飾語がふたつ以上付くとき、それぞれの間に打つ

「大きな子を背負い、幼子を抱っこしながら買い物かごを持つ。」

「読みやすさと、書きやすさのバランスをとった表現を心がける。」


(8)引用する助詞「と」の前に打つ

「これはドラゴンの仕業に違いない、と賢者が分析した。」

 これは引用カッコで処理することもあります。

「これはドラゴンの仕業に違いない」と賢者が分析した。

 という文からカギカッコをとるときは読点を打つ


(9)挿入句のあるとき、その前後に打つ

「この国には、ただし北海道を除くが、梅雨がある。」


(10)接続詞・逆接助詞の後に打つ

「しかし、彼女が心変わりしたのではないかと内心どぎまぎしている。」

「山は高いが、谷は深い。」「全力で走ったけれども、タイムは平凡だった。」


(11)原因・理由・条件などを表す節の後に打つ

「人類が化石燃料を燃やし続けたので、地球の平均気温は年々上昇している。」

「彼女に近づくと、甘い香水の匂いが流れてきた。」


(12)言い換えや説明のとき、その間に打つ(「つまり」「すなわち」と同義)

「マラソンランナー、長距離走の選手はスタミナ重視の指導を受ける。」


(13)倒置文の倒置箇所に打つ

「欲しがりません、勝つまでは。」


(14)読みを区切らせたいとき、区切らせるところに打つ

「えーん、えーん、子どもの泣き声が聞こえてくる。」(泣き声)

「そこのあなた、女難の相が出ておるぞ」(人への呼びかけ)

「ひとつ、ふたつ、みっつ、何度数え直してもやはりひとつ足りない」(数を表す言葉)

「拙者、親方と申すは、お立ち会いのうちに、ご存知のお方もござりましょうが、〜」(セリフや歌詞の区切り)


(15)かなが続いて読みにくいとき、分割するところに打つ

「ここで、はきものをぬいでください。」(ここで、履物を脱いでください。)

「ここでは、きものをぬいでください。」(ここでは、着物を脱いでください。)





最後に

 今回は「読点の打ち方」について述べました。

 原則は以上のとおりです。息継ぎする場所で打たれていませんよね。

 話し言葉で少し間をとるときは、それを表現するため息継ぎする場所で読点を打つこともあります。

 しかし書き言葉では、理屈に適った打ち方こそが求められるのです。

 原則を守って文を書くようにしてください。



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