910.文法篇:こそあどに頼らない

 今回は「こそあどに頼らない」ことについてです。

 指示代名詞は気をつけていないと多用してしまいます。

 しかし現代文の試験問題にもなるくらい、指示代名詞がなにを指しているのかはわかりづらくなりやすいのです。

 でしたら最初から指示代名詞を減らす努力をしましょう。





こそあどに頼らない


 指示代名詞である「こそあど」言葉は、読み手へ正確に伝わらない可能性があります。

 国語の現代文の試験で、「これ」「その」「あそこ」「どちら」がなにを指しているのか。何文字以内で答えなさい。という問題があったはずです。

 なぜこのような問題が出されるのでしょうか。

「こそあど」言葉はなにを指しているのかが不明瞭になりやすいからです。




指示代名詞に頼らない

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「四面楚歌」。これは有名な故事成語に由来しています。その成り立ちは「窮地に追い詰められた楚軍は四方を漢軍に囲まれて、いずれかの方向からも懐かしい楚の歌が聴こえてくる。大将の項羽は味方であるはずの楚の国民が漢軍に取り込まれ、もはや援軍も期待できないと敗北を悟る」です。

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 ここに書いてある「これは」と「その意味は」はなにを指しているかわかりますか。

 いきなりの現代文読解テストです。

 答えは「これは」は「四面楚歌は」であり、「その」は「故事成語の」になります。

「こそあど」があるため、一読すると少しわかりにくくなるのです。

 もし次のように書かれていたらどうでしょうか。

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「四面楚歌」は有名な故事成語に由来しています。故事成語の成り立ちは「窮地に追い詰められた楚軍は四方を漢軍に囲まれて、いずれかの方向からも懐かしい楚の歌が聴こえてくる。大将の項羽は味方であるはずの楚の国民が漢軍に取り込まれ、もはや援軍も期待できないと敗北を悟る」です。

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「こそあど」言葉がなくても書けてしまいました。

 書こうと思えば書けるのに、それでも多用してしまうのが「こそあど」言葉の怖いところです。




指示代名詞を用いたほうがよいとき

 では次のような場合はどうでしょうか。

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 必要最低限の機能を持ったパソコンがあればよい。これは小説を執筆する際に、テキストエディタ、よくてMicrosoft『Word』が使えさえすればよいのである。この条件をクリアしていれば、最安値のパソコンでもじゅうぶんだ。パソコンを奮発するくらいなら、モノクロレーザープリンタを買ったほうが役に立つ。

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 ここで出てくる「これは小説を執筆する際に」の「これは」と、「この条件をクリアしていれば」の「この」は前の文をそのまま引用する形になっています。もし「これ」「この」を省こうとすれば、

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 必要最低限の機能を持ったパソコンがあればよい。必要最低限の機能を持ったパソコンは小説を執筆する際に、テキストエディタ、よくてMicrosoft『Word』が使えさえすればよいのである。テキストエディタ、よくてMicrosoft『Word』が使えさえすれば、最安値のパソコンでもじゅうぶんだ。パソコンを奮発するくらいなら、モノクロレーザープリンタを買ったほうが役に立つ。

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 となり、くどい言い回しになってしまいます。

 文や長い文節を丸々引用するような場合は、「こそあど」を用いたほうがスマートな解決になるのです。

 本来の「文章読本」であれば、このような場合は「こそあど」を許容しています。




小説ではくどさも必要

 しかし「小説を書く」ときは、あえてくどくしてもかまいません。

「必要最低限の機能を持ったパソコン」「テキストエディタ、よくてMicrosoft『Word』が使えさえすれば」という情報を読み手に刷り込むために、「あえて」くどくするのです。

 なぜくどくしてもよいのか。

 それは、小説が長文だからです。長編小説・十万字、短編小説一万五千字は文章としてはとても長い。

 読み手がいつ読みさして、再開するのかわからないからこそ、くどくなってでも指示代名詞を削っていくべきです。

 指示代名詞を積極的に使っていると、「この指示代名詞はなにを指しているんだっけ」と、いったん読み返すことになります。

 手間がかかることを読み手は嫌うのです。

 小説を休みなく読める人は限られています。

 その他大勢は、いったん読みさして、休憩したり作業したりしたのち、空いた時間で再開するのです。

 だから、いったん数ページ戻る手間をかけさせてはなりません。


「小説賞・新人賞」を狙っているのなら、できるかぎり「こそあど」に頼らないよう文章を構築しましょう。





最後に

 今回は「こそあどに頼らない」ことについて述べました。

「こそあど」言葉、つまり指示代名詞を多用すると、確かに文字数は減らせます。しかし指示代名詞がなにを指しているのかがわかりづらくなるのです。

 どうしても指示代名詞を使うべき場面もあります。

 しかし、こと小説に関しては、たとえくどくなっても「こそあど」言葉を減らす工夫をするべきです。

 それが「小説賞・新人賞」の一次選考を通過するチェックのひとつとなっています。

「こそあど」言葉(指示代名詞)をどのように削っていくのか。考えながら執筆していきましょう。



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