768.回帰篇:小説投稿サイト発、紙の書籍行

 今回は「紙の書籍化」についてです。

 ゲームをするより小説を書いてみませんか。

 小説は仮に「紙の書籍化」されても、つねに「打ち切り」との戦いとなります。

「打ち切り」せずに円満に完結できたら、次作の連載が見えてきます。

「打ち切り」になったら、また「小説賞」に応募するほかなくなるのです。





小説投稿サイト発、紙の書籍行


小説投稿サイトの可能性

 小説投稿サイトでは、今日も「小説賞・新人賞」が開催されています。短編賞なども合わせれば、「小説賞・新人賞」が開催されていない時期はないほどです。

 そんな中で「小説賞・新人賞」を授かって「紙の書籍化」される書き手が現れます。

 昔は出版社レーベルへ原稿を持ち込んで編集さんに読んでもらって「紙の書籍化」という流れもあったのです。しかし現在原稿持ち込みを許可している出版社レーベルはありません。すでに契約している「実力があり発言力もあるプロの書き手」から「この作品面白いですよ」と担当編集さんに紹介して「紙の書籍化」された作品ならあります。近場では住野よる氏『君の膵臓をたべたい』がこのパターンです。

 現在「ライトノベル」「エンターテインメント小説(大衆娯楽小説)」から「紙の書籍化」を目指すなら、小説雑誌の出版社が企画している「小説賞・新人賞」に紙の原稿を送る方法と、小説投稿サイトで企画されている「小説賞・新人賞」に応募する方法、この二通りしかありません。

 そしてどちらが手軽に応募できるかといえば「小説投稿サイト発」の「小説賞・新人賞」に軍配が上がります。

 なにせ印刷プリントアウトせずに、インターネットの小説投稿サイトに作品を投稿して、特定の「キーワード」「タグ」を付けるだけで応募が完了するからです。

 もちろん投稿する作品の推敲は、縦書きで印刷することをオススメします。ディスプレイパネルで横書きの原稿をいくら読んでも気づかなかった致命的なまた軽微なミスが、PPC用紙に縦書き印刷するだけで一瞬にして判明するからです。




紙の書籍化が決定したら

「紙の書籍化」が決定したからといって、今の定職をすぐ辞めないでください。

 あなたの小説が一冊の「紙の書籍」になったとして、二冊目、三冊目が出版される保証はないのです。一冊目の売れ行きが芳しくなくて、それきり出版依頼が来なくなるなど日常茶飯事、くらいの心持ちでいましょう。

 だから「紙の書籍化」が決まっただけで定職を辞めてしまうとあなたは無職になってしまい、条件の厳しい就職活動を長期間続けることになります。もう小説を書いている暇がなくなるのです。

 安易に定職を捨てず、苦しいでしょうが定職と執筆を両立させて作品を完成させ、定期的に出版してもらえるくらいの実力を手に入れてください。

「紙の書籍化」されたのちある程度実績を残せた作者には、講演会の依頼が舞い込んできます。そうなると、執筆を続けながら講演会で述べなければならない原稿も書く必要がありますし、開催場所へ移動して実際に講演する必要が出てきます。もちろん講演料は手に入りますが、そのぶん連載小説の執筆時間が削られてしまうのです。

 どのくらい削られるのか。あなたが今就業している定職と同じくらい削られます。

 つまり現在の定職と執筆のダブルワークは、将来の講演と執筆のダブルワークの練習なのです。




紙の書籍を目指して

 小説投稿サイトで「紙の書籍化」を目指しているとき、考えなければならないのが「投稿間隔」です。連載投稿を続けていくためには、「執筆間隔」も重要になります。

 一週間のうち原稿を執筆できるのは何日か、一日何時間か、一日何千字・何万字か。まずこれを把握する必要があります。もちろん書き慣れてくれば執筆時間は同じでも、長い文章を書けるようになる。そういう好循環を生み出すまではたいへんな苦労を強いられます。毎日空き時間を見つけてはこの苦労を続けていくのです。

 一日に何時間執筆にあてられるかもできるかぎり拡大させていきましょう。最初は通勤通学の電車内でスマートフォンや携帯電話などに執筆するくらいでもかまいません。しかし「紙の書籍化」を目指すのなら、余暇の楽しみを潰してでも執筆時間にあててください。コンピュータゲームやソーシャルゲームに時間とお金を費やしている場合ではないのです。「紙の書籍化」を目指すには、余暇をすべて小説の執筆にあてるほどの覚悟がなければいけません。

 実際問題、小説の執筆に没頭していると、他の娯楽はまったく手がつかなくなります。小説の執筆はあっという間に一時間、二時間を費やすのです。今までならその間にスマートフォンや家庭用・携帯用ゲーム機のゲームが遊べていたはずです。でも執筆に没頭すればゲームをプレイしている暇なんていっさいなくなります。現に私は本「小説の書き方」コラムを執筆し続けている間にゲームをしたのは五時間もあればいいほうでしょう。大好きなカラオケにも行けません。そのくらい、文章を書くという行為はあっというまに時間が過ぎます。


 もしあなたがスマホゲームの重篤な課金者であったなら、更生のために小説を書いてください、と提案したいほどです。小説を書くというのは、それほどまでに時間と思考を支配します。

 仮にスマホゲームで最強の存在になれたとして、あなたの人生にどれほどの成功をもたらすのでしょうか。スマートフォンのゲームデータにおけるビットのオン/オフを切り替えるために何十万円も投入して、あなたは幸せになれましたか。ほとんどの方は最強の存在になれないのに課金を繰り返しています。

 しかし小説を書けば、課金してまでゲームをするという悪循環を断ち切れるのです。小説は膨大な時間と脳力を費やします。スマホゲームをやっている余裕はありません。

 高度な知的生産者ほどゲームから足が遠のいていくのが世の真実です。

 だからこそ毎日小説を書いてみましょう。最初は一時間で三百字書くだけで精いっぱいかもしれません。しかし毎日書いていれば必ずより多くの分量が書けるようになります。すると執筆が面白くなってきて、今日は昨日よりもたくさん書きたいという意欲も湧いてくるのです。

 知的生産における成功の幸福感は、ゲームのイベント達成の比ではありません。小説投稿サイトへ継続して投稿し、閲覧者(PV)が一人増えた、ブックマークがひとつ増えた、一人から評価が付いた。はたから見ればたったそれだけのことかもしれませんが、時間と脳力を費やした書き手は大きな達成感に満たされ、幸福感を味わえるのです。単に確率と課金だけで強くなれるスマホゲームでは到底味わうことができません。比べ物にならないほどレベルの高い達成感、幸福感なのです。

 しかも初期費用はコンピュータとプリンターと縦書き印刷が可能なソフトくらいなものです。経済効率から見ても明らかに割りのよい話でしょう。




紙の書籍が不評なら

「紙の書籍」が好評を博して「アニメ化」「マンガ化」されれば読み手が爆発的に増えます。あとは「紙の書籍」の質を落とさず、読み手を拡大しながら連載終了まで読み手を惹きつけられれば、もはや押しも押されぬ「一人前の書き手」です。

「アニメ化」「マンガ化」されたのに「連載打ち切り」を告げられる書き手は「二線級の書き手」になります。一度でも「連載打ち切り」となれば、出版社レーベルから再度新作連載を出版してもらいにくくなるのです。

 だから「連載打ち切り」になったら、また小説投稿サイトの「小説賞」に応募して「紙の書籍化」を狙うほかありません。

 小説界はそれほどシビアな世界でもあります。芥川龍之介賞を受賞したのに二冊目が出せずに消えていく書き手は多いのです。シビアさは「ライトノベル」や「文学小説」に限らず、小説界全般に見られる傾向と見てよいでしょう。





最後に

 今回は「小説投稿サイト発、紙の書籍行」について述べてみました。

 皆様の最終目標は「紙の書籍化」でしょうか。

 そうであれば難しいことではありません。

 しかし「打ち切り」にならずに連載を続けられて当初の予定どおりに終了を迎えられないと、次作の新規連載の話はやってきません。また小説投稿サイトの「小説賞・新人賞」からやり直す羽目になります。

 ゆえに最終目標は「打ち切りにならずに予定どおり連載を終了させること」を想定すべきです。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る