598.明察篇:小説を書くことは楽しいですか

 今回は「楽しんで書いていますか」ということについてです。

「小説を書く」ことが「楽しい」と思えなければ長続きしません。長編小説なんて書いていられないのです。

 まずは短編小説を何本も書いて「小説を書くのって楽しい♪」と思っていただきたい。

 長編小説、連載小説はそのあとでもよいではないですか。





小説を書くことは楽しいですか


 小説を書くのはある意味難しい。

「小説賞・新人賞」の募集要項はたいてい原稿用紙三百枚、総文字数十万字以上が求めらます。

 これだけの分量をひと月で書くには毎日十枚、平均三三三三文字書かなければなりません。

 モチベーションを保たなければすぐ挫折してしまいます。




結果より過程を楽しむ

 将棋の藤井聡太氏はずば抜けた結果を残しています。

 もし藤井聡太氏が将棋を指すときに結果だけを追い求めていたとすれば、これだけの輝かしい記録は生み出せなかったでしょう。

 結果だけを追い求めるのは「やらされている」と感じてしまうからです。

 過程を楽しんでいれば、たとえ負けたとしても前向きに検討ができます。

 また過程が楽しめれば、結果を気にせず伸び伸びと物事に取り組めるのです。かえってよい結果を生むことが多くなります。

 藤井聡太氏の快進撃も、高段者にも物怖じせず勝負を楽しんでいるからこそ。広い視野と深い読みを働かせられるのです。普通の方なら目上の人を相手にすると気後れしてしまいます。しかし真剣勝負を楽しむ余裕があれば、見えないものも見えてくる。

「剣聖」宮本武蔵氏は血気盛んな若かりし頃に多勢の吉岡一門と戦う際、先に決闘場へ到着し、松の陰で待ち構えていました。吉岡一門がやってくると不意を突いて速戦し、全員打ちのめして勝利したとされています。脚色があるにせよ、多勢を相手に物怖じしなかった宮本武蔵氏の胆力が勝利を呼び込んだのです。

 宮本武蔵氏がすぐれているのは、どんな相手でも物怖じせず、平常心を保って戦った点にあります。

 結果を重視したければ平常心を保ち続ける精神力が必要となるのです。

 小説は結果を求めるのに、毎日何枚・何千字書くと決めてありますから、平常心を保つのは簡単です。しかし毎日書き続ける努力が必要なので、できれば「やりたいこと」をやりたいですよね。そうすれば楽しんで執筆できます。




小説を書きたいですか

 あなたの「小説を書きたい」衝動はどれほどのものでしょうか。

 これから小説を初めて書き「小説賞・新人賞」を獲りたい。この程度の衝動では長編小説一本すら満足に書けないと思います。

 年単位の時間を費やして将来プロとなるために小説を書いていこう。これでは義務感ばかり強くて、楽しさがないですよね。

 そこで「小説賞・新人賞」には必ず応募することをオススメします。

 そのためには小説を書くことが楽しくなければなりません。楽しければ何本でも小説を書いていられますからね。

 新しい物語がポンポン思いつく人は「小説賞・新人賞」に応募しない作品を書いてもいいでしょう。

 多くの人は限られた物語しか書けません。そういう方は「小説賞・新人賞」にだけ応募してください。それ以外の投稿なんてあってはならないのです。

「小説賞・新人賞」は一次選考・二次選考・最終選考とだいたい三つの関門が設けられています。

 最初は一次選考を通過することを目標にしてください。一次選考を通過したら、次は二次選考通過を考えればよいのです。

 小説を書いてこなかった方、書いても評価が低かった方は、「小説賞・新人賞」で腕試ししましょう。

 周りであなたの小説を応援して読んでくれる人はいますか。

 いればその人に真っ先に読んでもらいましょう。今どのレベルにいるのかを客観的に指摘してくれる方は、あなたの財産になります。関係を大事にしてくださいね。




楽しんで書く

 なにごとも楽しまなければ長続きしません。

 小説はイラストよりも形となるまでに時間がかかります。

 それだけのモチベーションを維持し続けるには楽しむ他ないのです。

 あなたの周りには、小説を書くことを応援してくれる人はいますか。

 せっかくあなたがやる気になっても、周りがそれを理解してくれないのでは、いくら努力しても冷水を浴びせられるのがオチです。

 応援してくれる人がいるから、心底楽しんで執筆できます。

 楽しんで書くとなにが違うのでしょうか。

 読んでいる側も読んでいて楽しくなります。

 読み手に書き手の気持ちがわかるのか、と思われるかもしれませんね。

 これがある程度透けて見えるものなのです。

 楽しんで書いていると、文章のリズムがよくなります。

 つまらない気持ちや義務感で書いていると、リズムがちぐはぐして安定しません。

 読んでいて「なんかこのシーンは読みづらいな」と思うところは、書き手が楽しめていないのです。

 当然「小説賞・新人賞」の選考さんもそれを見抜きます。

 そうなれば選考にマイナスの印象を与えてしまうのです。

 だから小説は「楽しんで書い」てください。

 長編小説を十本以上書いてもまだ楽しめる方こそ、「小説賞・新人賞」が狙えると言ってよいでしょう。




楽しんで書いたものを応募しよう

「小説賞・新人賞」には、楽しんで書いた小説を応募しましょう。

 最初から計算して「小説賞・新人賞」が獲れる作品を書こうとすれば、どこか狙いすぎの印象を受けて選考さんに見透かされてしまうものです。

「あぁこの書き手は賞を狙いにきているな」ということがわかります。

 綺麗事だけで出来た、お涙頂戴の展開がどの作品にも焼印のように表れているのです。

 楽しんで書けば、五十年でも百年でも努力を継続できます。

 そして自分の書いたものに自信が持てるのです。

「小説賞・新人賞」に応募すること自体が「賞を狙いにきている」わけですが、あまりにあけすけでは選考さんの先入観が悪くなります。

 当初定めた物語を過たず書いてください。

「ここをこう書いたら評価が上がるかも」とフラフラ心が揺れ動いてしまうと、「賞狙い」が前面に出てきます。

 当初の物語を変えないようにしましょう。変えてしまえば「賞狙い」「評価狙い」の卑屈な姿勢が表れてしまいます。





最後に

 今回は「小説を書くことは楽しいですか」について述べました。

 小説は楽しんで書くものです。楽しめなければ面白い作品は生まれません。

「小説賞・新人賞」狙いだとしても、楽しんで書かなければ評価されないのです。

 楽しめているか楽しめていないかは、読む人が読むとすぐに見抜けます。

 同じことを何度も書いてしまったり、論理の飛躍が見られたり。

 そんなポイントを見ていくことで、「楽しんで書いている」かどうかはわかるのです。

「小説賞・新人賞」を狙いたいなら、ぜひ楽しんで書きましょう。

 楽しんで書ける小説が思いつかないのなら、楽しいと思えるまでお話を変えてみてください。

 きっとあなたにしか書けない面白い小説が見つかるはずですよ。



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